2013年1月31日木曜日

山を動かす(2)まだ見えぬ職業、不遇の世代、好機はそこに



 コンサルティング会社アクセンチュアの工藤卓哉(38)は16日、福島県の会津大にいた。コンピューターサイエンスを学ぶ170人に自分の仕事について特別講義するためだ。肩書はデータサイエンティスト。米誌ハーバード・ビジネス・レビューは「21世紀で最もセクシーな職業」と呼ぶ。
データ読み解く
 交流サイト(SNS)、車や家電のセンサー、ICカード……。増殖するデータの塊を解きほぐし経営に役立つ法則や仮説を導き出す。製品寿命はいつ尽きる? クレーム発生の兆しは? 統計学とデータ処理を絡め、未来を読む。
 データ分析で医療改革を進めるニューヨーク市長、マイケル・ブルームバーグ(70)のもとで腕を磨いた。「力を生かしたい」。そう考え東日本大震災後、アクセンチュア日本法人に入社した。
 世界に存在するデータのうち、人類が活用できているのは0・5%。特に日本はデータサイエンティストが不足し、推定で千人もいない。
 「膨大なデータから何を見つけるかが醍醐味。経済が縮小し、内向きの思考に陥りがちな日本を変えよう」。若者への講義に熱がこもる。
 米デューク大教授のキャシー・デビッドソン(63)によると、いま、小学校に入る子供の65%は現在まだない職業に就くという。未来に向け助走を始めたデジタル世代は、日本にも多い。
 東大病院の研修医、瀬尾拡史(27)にはもうひとつの顔がある。CG(コンピューターグラフィックス)の制作者だ。診断や教育にも使えるリアルさで、臓器や細胞などを3次元で描く。
 子供の時、体内を映像化した番組に衝撃を受けた。「いつか自分もつくる。だが日本に専門教育機関はない。ならば自力で身につけよう」。まず2005年東大医学部に入り、翌年にはIT(情報技術)を教えるデジタルハリウッドに通った。
 2年間の研修医生活を終え、4月からはCG事業のため設けた会社サイアメントの社長業に専念する。「難解な科学の世界を誰にでもわかるようにする。20~30年後に産業になれば」。世界中の医師が画像をネットで共有し、知識を高め合う未来も見すえる。
 16歳で渡米、ネット関連の会社をいくつも設立した経験がある伊地知天(29)。11年夏に震災後の東北へボランティアに出かけた。目前に広がる被災の風景。再び起業家精神に火が付いた。
 12年に立ち上げたのがcreww(クルー)だ。起業家が事業のアイデアを公開し、資金を出す投資家、助言役となる経営者などを結びつけるサイトを運営する。
ビジネスふ化器
 「イノベーションであふれる社会をつくりたい」。年代や経歴もばらばらな人がネットで交わるコラボのしくみが新ビジネスのふ化器になる。
 米シスコシステムズが18カ国の18~30歳1800人を調べたところ、5人に2人はスマートフォンがつながらないと「不安」と答えた。家族や友人との食事中も使い続けるとの回答も46%に達した。単なる「ネット依存」ではない。彼らは事業計画づくりも資金調達もネットで可能な時代の先頭に立っている。
 世界では7500万人の若者が失業中とされる。不遇の世代と悲観しても始まらない。デジタル世代の柔軟な発想で、新たな雇用を生み出していく時代だ。

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