東京都老人総合研への赴任が転機に
最大寿命150歳になれば、認知症も「解決」
短期留学で「長寿遺伝子」発見者と親交
アンチエイジング(抗加齢)医学は最近流行の学問といえるかもしれない。日本でその最先端にいるのが順天堂大学大学院教授の白澤卓二さん(53)。「サクセスフルエイジング」(若々しく幸せに年を重ねること)をテーマに『100歳までボケない101の方法』(文春新書)などの著書で注目されている。
僕は内科(呼吸器科)から出発したんです。千葉大の大学院に行く時に、免疫学を専攻しました。手法的には遺伝子分子生物学の研究なんです。免疫で学位を取ったあと、東京都老人総合研究所(現・東京都健康長寿医療センター)に病理ポストがあって「自由に何でも研究していいよ」と言われたのですが、老人研究所だから、老化の研究をしなくちゃいけないかと研究テーマを変更しました。
それがアルツハイマー(認知症)の研究でした。違う分野ですが、分子生物学の同じ方法論が使えるということでアルツハイマーの原因遺伝子の研究者になった。それは1990年のことでした。
アルツハイマー病の最大の要因は年をとることだから、基本的に若い人にはない。言い方を変えると、年をとらなければアルツハイマーにならない。普通、研究者というのは年をとらないことは想定しないし、ありえないと思う。年をとればアルツハイマーのリスクは必ず来ると考える。
7年後に転機を迎える。僕が注目したのは、年をとらない「虫」だった。遺伝子構造が人間と75%同じ線虫の寿命が遺伝子操作をすることによって実験で寿命が2倍にもなるということを証明した。虫の世界とかモデル動物の世界ではありうるわけです。
人間は平均寿命が80歳で、最大寿命が120歳という動物です。しかし、寿命をコントロールしている遺伝子があって、それに変異があったり遺伝子操作をしたりすれば、もしかしたら150歳まで生きられるかもしれないのです。
仮定の話ですが、最大寿命120歳の人生で70歳くらいで発症してくる病気が、最大寿命が150歳になったら100歳とか110歳で発症することになる。もしそうなればほとんどアルツハイマーは問題にならなくなる。というのはアルツハイマーの発症時期が遅くなり、それ以前に他の病気で亡くなる可能性が高い、と考えられるからです。
要するにアルツハイマーは治療するのではなくて予防するということが明確にできれば、治療法が解明されなくても解決すると考えました。それで「寿命の研究」に突入することになる。ちょうど遺伝子操作をして動物の寿命が延ばせるかもしれないという課題が出てきた時でした。
2003年夏に米国の海洋研究所のセミナーに短期留学すると、そこにSir2(サーツー)遺伝子(寿命を制御する長寿遺伝子)の世界的発見で有名なレオナルド・ガレンテ教授(マサチューセッツ工科大)がいた。1カ月間、一緒に実験し親交を深めた。
彼は遺伝子の研究でビールやパンでも使う酵母菌を使っていました。この単細胞の酵母菌は何回か分裂すると分裂できなくなる。それを彼は寿命と定義した。一方、何回分裂しても子供をつくれる株がいて、非常に長生きの株を彼は発見した。00年から01年の間だと思う。長生きの秘密は何だと調べていくとサーツー遺伝子という長寿の遺伝子だった。
最初はその酵母だけの特別な話だと考えていたが、線虫というミミズみたいな虫にもサーツー遺伝子があって、この遺伝子を余計に入れてあげると、その線虫の寿命が1・5倍になった。とすれば他の動物でもありうることなのではないか。研究をさらに進めていくと我々哺乳動物にも同じような遺伝子があり、それを「サーチュイン」と名前をつけた。これが世界を騒然とさせる発見となる。
ガレンテ教授と僕とは全くかけ離れたことをしているように見えます。でも、彼が実験室で長寿遺伝子の探索をしている時に、僕は長寿に至る予防医学の世界に深く足を踏み入れていた。それは互いの共通点を両サイドから深めていくことになるのです。
2011年7月19日火曜日
専業主婦子育ての重圧(上)母子2人、孤立しやすく、支援活動広がる
自治体・NPO 支援活動広がる
少子化や家族形態の変化は専業主婦の子育てにも影響を及ぼした。多忙な夫の助けはなかなか得られず、近所付き合いも希薄になっている中で孤軍奮闘を迫られる。専業主婦だからできて当たり前――。夫や周囲のそんな先入観がさらに追い打ちを掛ける。専業主婦の目線から少子化社会の実情を検証してみる。
「子どもがなぜ泣くのか分からない。あやしても怒鳴っても泣きやまない。何度も子どもに手を上げそうになった」。埼玉県の主婦A子さん(35)は2歳の一人息子が生まれて間もないころの生活をこう振り返る。「出産前はわが子を虐待する親がいるなんて信じられなかった。でも今は分かる。孤立感が深まると精神的に参ってしまうんです」
常勤者より悩む
百貨店に勤めていたが結婚して退社。間もなく妊娠し、東京から埼玉へ引っ越した。両親も友人もいない初めての土地で慣れない育児。残業がちの夫の帰宅は夜10時。外出もせず、母子2人きりで夫の帰りを待った。「子育てがここまで孤独だとは想像もしていなかった」と打ち明ける。
子育ての悩みは専業主婦より働く母親の方が深そうだが、実は逆だ。ベネッセ次世代育成研究所の幼児の生活アンケート(2010年3月調査、回答=乳幼児を持つ3522人)によると、子育てに否定的な感情を持つ母親の比率はほとんどの項目で専業主婦が常勤者を上回る。1995年以降5年ごとに調査を繰り返しているが、この傾向は変わらない。
親との同居が減り、近所付き合いも希薄になった。まして少子化で出生数が減少傾向で、月齢が近い母子と近所の公園などで出会う機会も減っている。主任研究員の高岡純子さんは「ワーキングマザーは時間のやりくりは大変だが、子育てが生活のすべてではなく、精神的なバランスが取れる。専業主婦は子育てが主。孤立しやすくストレスをより強く感じる」と説明する。
支援の手を差し伸べる動きもある。東京都江東区が5月に始めたマイ保育園登録制度もその一つだ。希望の区立保育園に事前登録すると、身体測定や育児相談など定期イベントに参加できるほか、困ったときはいつ園を訪ねてもよく、保育士などが相談に乗る。保育園を専業主婦にも開放し、子育て不安を解消する狙いだ。6月時点の登録は657人に上る。
亀戸第三保育園が12日に開いた身体測定には19組の母子が集まった。生後7カ月の長男を伴って参加した主婦(35)は関西出身で1年前に夫の転勤で引っ越してきた。「離乳食の作り方が分からず相談したら、丁寧に教えてもらえた。身近に頼れる存在ができてとても助かる」と話す。
特定非営利活動法人(NPO法人)ホームスタート・ジャパン(東京都新宿区)はボランティアが自宅に直接出向き、相談に乗ったり話し相手になったりする「家庭訪問型子育て支援」を全国に広めている。専業主婦らの孤独感や孤立の解消を目的に70年代に英国で始まった活動で日本に06年に導入され、趣旨に賛同し、研修を修了した市民団体やNPO法人などが全国24市区町で活動している。
熊本市では市民団体「親育ち支援の会ポトフ」が08年から活動している。1回の訪問は約2時間。それを週1回、6週続ける。公益団体などから資金援助も受けており、利用者の個人負担は無料だ。
主婦B子さん(38)は09年12月から翌年まで訪問支援を受けた。一人息子の6カ月健診を受けたとき、育児ストレスが高いと判断した保健師が利用を勧めた。赤ちゃんと接するのは初めて。泣き出すとただおろおろするばかりで、怖くて風呂にも入れられない状態だったという。
訪問したボランティアは子育て中の3児の母(35)。初回、子育てに手いっぱいで家事に手が回らないと落ち込むB子さんに「1人目はそんなもの。最初から家事も育児も完璧にこなさなくても大丈夫」と声を掛けた。「親身になって話を聞いてくれ、こちらのつらさを受け止めてくれるので救われた」と振り返る。
夫の理解が重要
子育て不安の解消は少子化対策としても欠かせない。不安が高い母親ほど次の子どもの妊娠・出産をためらう傾向があるからだ。国が検討中の「子ども・子育て新システム」でも、ワーク・ライフ・バランス(仕事と家庭の調和)推進や保育園の待機児童解消などとともに、専業主婦世帯向けの子育て支援策が重点課題になっている。
解決の糸口は家庭内にもある。地域で子育て支援事業に取り組むNPO法人新座子育てネットワーク(埼玉県新座市)代表理事の坂本純子さんは「重要なのは夫の理解。『昼間、母子で機嫌良く過ごしているんだろう』くらいにしか思っていない父親が今も多い。ときには妻を育児から解放し、一人で出掛ける機会をつくってあげてほしい」と助言する。
先輩ママから助言 ツイッター活用も
在宅で子育てをする母親の間で、ミニブログ「ツイッター」を孤立感解消に使う動きも広がっている。
10年10月に開設した「子育てママッター」(http://momtter.jp/)もその一つだ。登録して子育てに関する相談を持ちかけると、ほかの登録者からツイッターを通じて回答もくる。今では登録者は3千人を超えている。
立ち上げたのはウェブプロデューサーの内海裕子さん。2歳の息子を持つ母親だ。きっかけは自らの体験。息子は1歳になっても離乳食を食べてくれず、ツイッターで悩みを打ち明けたら、先輩ママから「大丈夫。食べ始める時期は子どもそれぞれ」と返事があり、救われたという。携帯電話からも使えるので授乳しながら片手で短時間で操作できるのも便利だったという。
「在宅で育児をしていてつらいと感じたとき、だれかの共感が大切。第三者からの『大変だよね』の一言で心が楽になる。外出もままならない育児期の不安やストレス解消にツイッターはちょうど手ごろな手段だ」と強調する。
少子化や家族形態の変化は専業主婦の子育てにも影響を及ぼした。多忙な夫の助けはなかなか得られず、近所付き合いも希薄になっている中で孤軍奮闘を迫られる。専業主婦だからできて当たり前――。夫や周囲のそんな先入観がさらに追い打ちを掛ける。専業主婦の目線から少子化社会の実情を検証してみる。
「子どもがなぜ泣くのか分からない。あやしても怒鳴っても泣きやまない。何度も子どもに手を上げそうになった」。埼玉県の主婦A子さん(35)は2歳の一人息子が生まれて間もないころの生活をこう振り返る。「出産前はわが子を虐待する親がいるなんて信じられなかった。でも今は分かる。孤立感が深まると精神的に参ってしまうんです」
常勤者より悩む
百貨店に勤めていたが結婚して退社。間もなく妊娠し、東京から埼玉へ引っ越した。両親も友人もいない初めての土地で慣れない育児。残業がちの夫の帰宅は夜10時。外出もせず、母子2人きりで夫の帰りを待った。「子育てがここまで孤独だとは想像もしていなかった」と打ち明ける。
子育ての悩みは専業主婦より働く母親の方が深そうだが、実は逆だ。ベネッセ次世代育成研究所の幼児の生活アンケート(2010年3月調査、回答=乳幼児を持つ3522人)によると、子育てに否定的な感情を持つ母親の比率はほとんどの項目で専業主婦が常勤者を上回る。1995年以降5年ごとに調査を繰り返しているが、この傾向は変わらない。
親との同居が減り、近所付き合いも希薄になった。まして少子化で出生数が減少傾向で、月齢が近い母子と近所の公園などで出会う機会も減っている。主任研究員の高岡純子さんは「ワーキングマザーは時間のやりくりは大変だが、子育てが生活のすべてではなく、精神的なバランスが取れる。専業主婦は子育てが主。孤立しやすくストレスをより強く感じる」と説明する。
支援の手を差し伸べる動きもある。東京都江東区が5月に始めたマイ保育園登録制度もその一つだ。希望の区立保育園に事前登録すると、身体測定や育児相談など定期イベントに参加できるほか、困ったときはいつ園を訪ねてもよく、保育士などが相談に乗る。保育園を専業主婦にも開放し、子育て不安を解消する狙いだ。6月時点の登録は657人に上る。
亀戸第三保育園が12日に開いた身体測定には19組の母子が集まった。生後7カ月の長男を伴って参加した主婦(35)は関西出身で1年前に夫の転勤で引っ越してきた。「離乳食の作り方が分からず相談したら、丁寧に教えてもらえた。身近に頼れる存在ができてとても助かる」と話す。
特定非営利活動法人(NPO法人)ホームスタート・ジャパン(東京都新宿区)はボランティアが自宅に直接出向き、相談に乗ったり話し相手になったりする「家庭訪問型子育て支援」を全国に広めている。専業主婦らの孤独感や孤立の解消を目的に70年代に英国で始まった活動で日本に06年に導入され、趣旨に賛同し、研修を修了した市民団体やNPO法人などが全国24市区町で活動している。
熊本市では市民団体「親育ち支援の会ポトフ」が08年から活動している。1回の訪問は約2時間。それを週1回、6週続ける。公益団体などから資金援助も受けており、利用者の個人負担は無料だ。
主婦B子さん(38)は09年12月から翌年まで訪問支援を受けた。一人息子の6カ月健診を受けたとき、育児ストレスが高いと判断した保健師が利用を勧めた。赤ちゃんと接するのは初めて。泣き出すとただおろおろするばかりで、怖くて風呂にも入れられない状態だったという。
訪問したボランティアは子育て中の3児の母(35)。初回、子育てに手いっぱいで家事に手が回らないと落ち込むB子さんに「1人目はそんなもの。最初から家事も育児も完璧にこなさなくても大丈夫」と声を掛けた。「親身になって話を聞いてくれ、こちらのつらさを受け止めてくれるので救われた」と振り返る。
夫の理解が重要
子育て不安の解消は少子化対策としても欠かせない。不安が高い母親ほど次の子どもの妊娠・出産をためらう傾向があるからだ。国が検討中の「子ども・子育て新システム」でも、ワーク・ライフ・バランス(仕事と家庭の調和)推進や保育園の待機児童解消などとともに、専業主婦世帯向けの子育て支援策が重点課題になっている。
解決の糸口は家庭内にもある。地域で子育て支援事業に取り組むNPO法人新座子育てネットワーク(埼玉県新座市)代表理事の坂本純子さんは「重要なのは夫の理解。『昼間、母子で機嫌良く過ごしているんだろう』くらいにしか思っていない父親が今も多い。ときには妻を育児から解放し、一人で出掛ける機会をつくってあげてほしい」と助言する。
先輩ママから助言 ツイッター活用も
在宅で子育てをする母親の間で、ミニブログ「ツイッター」を孤立感解消に使う動きも広がっている。
10年10月に開設した「子育てママッター」(http://momtter.jp/)もその一つだ。登録して子育てに関する相談を持ちかけると、ほかの登録者からツイッターを通じて回答もくる。今では登録者は3千人を超えている。
立ち上げたのはウェブプロデューサーの内海裕子さん。2歳の息子を持つ母親だ。きっかけは自らの体験。息子は1歳になっても離乳食を食べてくれず、ツイッターで悩みを打ち明けたら、先輩ママから「大丈夫。食べ始める時期は子どもそれぞれ」と返事があり、救われたという。携帯電話からも使えるので授乳しながら片手で短時間で操作できるのも便利だったという。
「在宅で育児をしていてつらいと感じたとき、だれかの共感が大切。第三者からの『大変だよね』の一言で心が楽になる。外出もままならない育児期の不安やストレス解消にツイッターはちょうど手ごろな手段だ」と強調する。
災害に備え現金・預金・保険一覧表――家族で情報共有
非常用の財布も
最近、テレビや雑誌の取材で「災害時に持ち出す非常用袋」に何を入れるべきかという質問をよく受ける。
まず小銭や千円札を交ぜた現金を数万円。数十万円も非常用袋に入れておくのは防犯上好ましくないので、3万~4万円を目安に家族の人数などで決めるといい。
イザというときの現金はむしろ財布の中に用意すべきだ。外出先で災害に遭う場合に備えると、財布には当座をしのぐための2万~3万円の現金と身分証明書を常備しておこう。身分証明書があると、仮に通帳や印鑑を焼失・流失しても銀行預金を引き出すことができるからだ。
次に家族の銀行口座と加入保険の一覧を作る。銀行預金のほうは、名義別に銀行・支店名を記入し、災害で家族が離ればなれになったとき、お金をおろしに行く銀行に印を付け、それを家族で認識しておくのがポイントだ。今回の震災では、消息不明だった家族が地元の銀行で出会えたケースもあったという。
銀行口座一覧には口座番号はあえて書かないこと。振り込め詐欺など銀行口座を利用した悪質な犯罪はあとを絶たない。盗難リスクを考えると災害時に不要な個人情報は書かないほうがいいのである。
加入保険の一覧表は絶対に作成しておきたい。自宅が被災し保険証券を焼失・流失すると、加入保険がわからなくなるからだ。
保険一覧表は保険の対象を最初の項目にすること。「誰に(人)」または「何に(モノ)」別に表をまとめていくと、災害時に請求漏れを防ぐ効果があるし、保障の重複を発見できるかもしれない。保障が過剰なら見直しすると保険料支出を減らすこともできる。
保険一覧表には保険会社名と電話番号を入れ、証券番号も記載する。保険は原則として受取人が指定されているし、実際の保険金支払いまで段階があるので、銀行口座の口座番号ほど神経質に考えなくてもいいのだ。
一覧表を作ったら家族で情報共有するのが何より大事なこと。一人暮らしの人は、離れた家族と最低限の情報共有をしておくことを勧める。金額を聞きにくいなら「どこの銀行・保険会社」とつきあいがあるかを聞いておこう。
最近、テレビや雑誌の取材で「災害時に持ち出す非常用袋」に何を入れるべきかという質問をよく受ける。
まず小銭や千円札を交ぜた現金を数万円。数十万円も非常用袋に入れておくのは防犯上好ましくないので、3万~4万円を目安に家族の人数などで決めるといい。
イザというときの現金はむしろ財布の中に用意すべきだ。外出先で災害に遭う場合に備えると、財布には当座をしのぐための2万~3万円の現金と身分証明書を常備しておこう。身分証明書があると、仮に通帳や印鑑を焼失・流失しても銀行預金を引き出すことができるからだ。
次に家族の銀行口座と加入保険の一覧を作る。銀行預金のほうは、名義別に銀行・支店名を記入し、災害で家族が離ればなれになったとき、お金をおろしに行く銀行に印を付け、それを家族で認識しておくのがポイントだ。今回の震災では、消息不明だった家族が地元の銀行で出会えたケースもあったという。
銀行口座一覧には口座番号はあえて書かないこと。振り込め詐欺など銀行口座を利用した悪質な犯罪はあとを絶たない。盗難リスクを考えると災害時に不要な個人情報は書かないほうがいいのである。
加入保険の一覧表は絶対に作成しておきたい。自宅が被災し保険証券を焼失・流失すると、加入保険がわからなくなるからだ。
保険一覧表は保険の対象を最初の項目にすること。「誰に(人)」または「何に(モノ)」別に表をまとめていくと、災害時に請求漏れを防ぐ効果があるし、保障の重複を発見できるかもしれない。保障が過剰なら見直しすると保険料支出を減らすこともできる。
保険一覧表には保険会社名と電話番号を入れ、証券番号も記載する。保険は原則として受取人が指定されているし、実際の保険金支払いまで段階があるので、銀行口座の口座番号ほど神経質に考えなくてもいいのだ。
一覧表を作ったら家族で情報共有するのが何より大事なこと。一人暮らしの人は、離れた家族と最低限の情報共有をしておくことを勧める。金額を聞きにくいなら「どこの銀行・保険会社」とつきあいがあるかを聞いておこう。
外貨投資のイロハ(上)為替変動、リスク見極め
差損出れば金利収入帳消し 「新興国」短期で乱高下も
日本国内に住んでいても、外国の通貨で預金したり、外貨建ての債券を買ったりすることができる。円高が進み、国内の低金利が続くなか、外貨で資産を持つことに興味を持つ人が増えている。だが、外貨投資には注意すべき点も多い。外貨を持つ前に、その仕組みや知識をおさらいしておこう。
米ドル、ユーロ、豪ドル、英ポンド、中国人民元、南アフリカランド――。世界には国や地域ごとに通貨があり、その種類は百数十種類といわれる。それぞれの通貨は「流通する国や地域、ほかの通貨との交換のしやすさ(流動性)、金利などの違いがある」(国際通貨研究所の森川央・上席研究員)。
外貨で資産を持つ場合、まず注意しなければならないのは、円と外貨を交換する取引の比率を指す「為替レート」が、常に変動している点だ。
通貨間需給で決定
手数料や金利を考えず、単純な図式で考えてみよう。1ドル=100円のときに、100万円をドルで預金したとする。手元には1万ドルの預金ができた。仮に1ドル=150円の円安になると、1万ドルの預金は150万円の価値になる。逆に1ドル=50円まで円高が進むと、1万ドルは50万円の価値にしかならない。
外貨を持つことはこうした「為替リスク」を抱えることを意味する。為替相場が有利に働いて利益が出る(「為替差益」という)こともあれば不利に働いて損する(「為替差損」という)こともある。
それでは、為替レートはどう決まるのだろう。大原則として、相場は2つの通貨間での需給で決まる。通貨を欲しがる人が多くなれば、その国の通貨の価値は上がる(高くなる)。
通貨の需給を決める要因は様々だが基本的に経済力の強い国の通貨は高くなる。経済力とは簡単に言えば「工業製品や資源など、他の国が欲しがるモノを持っていること」(国際通貨研の森川氏)。強い国の通貨はモノを買うために必要なので需要が高まる。
通貨ごとの金利の違いも為替レートに影響する。同じ期間なら金利の高い通貨で保有するほうが金利収入が多くなる。投資家は金利が低い通貨を高い通貨に換えようとするため、金利が高い通貨は上昇しやすい。
ただし金利収入を稼げるのはあくまでその通貨ベースの話。円換算で考えた場合は「金利よりも為替変動のほうが影響が大きい」(三菱東京UFJ銀行の宿輪純一シニアエコノミスト)ため、金利収入を為替差損が吹き飛ばしてしまうこともある。
「保険」の役割
通貨によって、為替相場の動き方にも違いがある。
米ドルやユーロ、円など先進国の通貨同士は取引が活発で、いつでも世界のどこかで取引されている。日本国内でも先進国の通貨なら多くの金融機関などで購入できる。
一方でブラジルレアルや南アフリカランドなど新興国の通貨は、先進国通貨に比べて取引量が少なく、日本で購入できる窓口も多くない。新興国は通貨の取引に対して「規則や課税などで取引量を抑制することがある」(宿輪氏)のが一因だ。このため一般的に、取引が活発な先進国通貨同士に比べ、取引が少ない新興国の通貨は短期間に大きく変動しやすいとされる。
外貨建ての資産は為替のリスクが大きい。ただファイナンシャルプランナーの深野康彦氏は「家計の支出増に備える『保険』の役割もある」と話す。日本で暮らす上で食料や原燃料など多くを輸入に頼らなければならないためだ。
例えば10ドルで購入できる小麦があったとする。1ドル=80円なら800円で購入できる。ところが1ドル=120円の円安になれば単純計算で1200円に値上がりする。
そこで1ドル=80円のときに5ドルを購入しておく。すると1ドル=120円になった場合でも、5ドルの価値が400円から600円になるので、家計全体では円安による値上げ分の一部をカバーできる。逆に円高になった場合は輸入品の価格が下がるので家計にはプラスに働きやすい。保有する量が適切ならドルの価値低下は「値上げリスクに対する『保険料』と納得できるのでは」と深野氏は話す。
将来の為替レートはプロでも予想が難しい。まずは為替相場の変動によるリスクを理解したうえで、自分が外貨で資産を持つ必要があるかを考えたい。
日本国内に住んでいても、外国の通貨で預金したり、外貨建ての債券を買ったりすることができる。円高が進み、国内の低金利が続くなか、外貨で資産を持つことに興味を持つ人が増えている。だが、外貨投資には注意すべき点も多い。外貨を持つ前に、その仕組みや知識をおさらいしておこう。
米ドル、ユーロ、豪ドル、英ポンド、中国人民元、南アフリカランド――。世界には国や地域ごとに通貨があり、その種類は百数十種類といわれる。それぞれの通貨は「流通する国や地域、ほかの通貨との交換のしやすさ(流動性)、金利などの違いがある」(国際通貨研究所の森川央・上席研究員)。
外貨で資産を持つ場合、まず注意しなければならないのは、円と外貨を交換する取引の比率を指す「為替レート」が、常に変動している点だ。
通貨間需給で決定
手数料や金利を考えず、単純な図式で考えてみよう。1ドル=100円のときに、100万円をドルで預金したとする。手元には1万ドルの預金ができた。仮に1ドル=150円の円安になると、1万ドルの預金は150万円の価値になる。逆に1ドル=50円まで円高が進むと、1万ドルは50万円の価値にしかならない。
外貨を持つことはこうした「為替リスク」を抱えることを意味する。為替相場が有利に働いて利益が出る(「為替差益」という)こともあれば不利に働いて損する(「為替差損」という)こともある。
それでは、為替レートはどう決まるのだろう。大原則として、相場は2つの通貨間での需給で決まる。通貨を欲しがる人が多くなれば、その国の通貨の価値は上がる(高くなる)。
通貨の需給を決める要因は様々だが基本的に経済力の強い国の通貨は高くなる。経済力とは簡単に言えば「工業製品や資源など、他の国が欲しがるモノを持っていること」(国際通貨研の森川氏)。強い国の通貨はモノを買うために必要なので需要が高まる。
通貨ごとの金利の違いも為替レートに影響する。同じ期間なら金利の高い通貨で保有するほうが金利収入が多くなる。投資家は金利が低い通貨を高い通貨に換えようとするため、金利が高い通貨は上昇しやすい。
ただし金利収入を稼げるのはあくまでその通貨ベースの話。円換算で考えた場合は「金利よりも為替変動のほうが影響が大きい」(三菱東京UFJ銀行の宿輪純一シニアエコノミスト)ため、金利収入を為替差損が吹き飛ばしてしまうこともある。
「保険」の役割
通貨によって、為替相場の動き方にも違いがある。
米ドルやユーロ、円など先進国の通貨同士は取引が活発で、いつでも世界のどこかで取引されている。日本国内でも先進国の通貨なら多くの金融機関などで購入できる。
一方でブラジルレアルや南アフリカランドなど新興国の通貨は、先進国通貨に比べて取引量が少なく、日本で購入できる窓口も多くない。新興国は通貨の取引に対して「規則や課税などで取引量を抑制することがある」(宿輪氏)のが一因だ。このため一般的に、取引が活発な先進国通貨同士に比べ、取引が少ない新興国の通貨は短期間に大きく変動しやすいとされる。
外貨建ての資産は為替のリスクが大きい。ただファイナンシャルプランナーの深野康彦氏は「家計の支出増に備える『保険』の役割もある」と話す。日本で暮らす上で食料や原燃料など多くを輸入に頼らなければならないためだ。
例えば10ドルで購入できる小麦があったとする。1ドル=80円なら800円で購入できる。ところが1ドル=120円の円安になれば単純計算で1200円に値上がりする。
そこで1ドル=80円のときに5ドルを購入しておく。すると1ドル=120円になった場合でも、5ドルの価値が400円から600円になるので、家計全体では円安による値上げ分の一部をカバーできる。逆に円高になった場合は輸入品の価格が下がるので家計にはプラスに働きやすい。保有する量が適切ならドルの価値低下は「値上げリスクに対する『保険料』と納得できるのでは」と深野氏は話す。
将来の為替レートはプロでも予想が難しい。まずは為替相場の変動によるリスクを理解したうえで、自分が外貨で資産を持つ必要があるかを考えたい。
債券を活用した資産運用(1)「貯蓄から投資」は冷静に
債券を活用した資産運用について、ファイナンシャルプランナーの前川貢さんに教えてもらいます。
金融危機以降の相場急落は、これまでにあったバブルの破綻より投資家の気持ちを打ちのめす結果となりました。多くの人が「貯蓄から投資へ」と追い立てられ、冷静であればちゅうちょしただろう大きな金額を投資に注ぎ込みました。投資した途端に資産価値が3割も4割も目減りしてしまう事態を誰も想像だにせず、現在も今後の対応に苦慮する人が多くいます。
「投資を始めなきゃ」となぜ考えたのでしょうか。多くの人は預貯金金利が低すぎる環境が続き、今後も預貯金を取り崩し生活をしなければならない不安がいっぱいとなり、その解決策として「貯蓄では駄目、投資は必要」と考えました。
貯蓄と投資の大きな違いは、投資には値動きがあることです。時間の経過で得をしたり損をしたりするのが投資。利息は少ないけど元本保証があるのが貯蓄。値動きのある投資で難しいのは売却の決断です。
投資経験の少ない預金者が割高と自分で判断して売却するのは至難の業です。しかし割高はいずれ修正され、持ち続けていれば途中で利益が出ていても結果損をすることもあります。つまり貯蓄か投資かの二者択一ではなく、貯蓄の部分は必要なのです。
貯蓄の良さはただ満期まで待てば決まった元本と利息が入ってくる気楽さです。これは「安いところで買い、高いところで売る」という手入れが必要な投資との大きな違いです。
したがって、いきなり投資に飛び込んでしまう前に、貯蓄の気楽さを確保した上で、貯蓄よりも利息が多く期待できるものはないかと探してみたほうがいいでしょう。その有効な選択肢として、債券投資の特に円債について紹介します。
金融危機以降の相場急落は、これまでにあったバブルの破綻より投資家の気持ちを打ちのめす結果となりました。多くの人が「貯蓄から投資へ」と追い立てられ、冷静であればちゅうちょしただろう大きな金額を投資に注ぎ込みました。投資した途端に資産価値が3割も4割も目減りしてしまう事態を誰も想像だにせず、現在も今後の対応に苦慮する人が多くいます。
「投資を始めなきゃ」となぜ考えたのでしょうか。多くの人は預貯金金利が低すぎる環境が続き、今後も預貯金を取り崩し生活をしなければならない不安がいっぱいとなり、その解決策として「貯蓄では駄目、投資は必要」と考えました。
貯蓄と投資の大きな違いは、投資には値動きがあることです。時間の経過で得をしたり損をしたりするのが投資。利息は少ないけど元本保証があるのが貯蓄。値動きのある投資で難しいのは売却の決断です。
投資経験の少ない預金者が割高と自分で判断して売却するのは至難の業です。しかし割高はいずれ修正され、持ち続けていれば途中で利益が出ていても結果損をすることもあります。つまり貯蓄か投資かの二者択一ではなく、貯蓄の部分は必要なのです。
貯蓄の良さはただ満期まで待てば決まった元本と利息が入ってくる気楽さです。これは「安いところで買い、高いところで売る」という手入れが必要な投資との大きな違いです。
したがって、いきなり投資に飛び込んでしまう前に、貯蓄の気楽さを確保した上で、貯蓄よりも利息が多く期待できるものはないかと探してみたほうがいいでしょう。その有効な選択肢として、債券投資の特に円債について紹介します。
高金利先進国債券オープン――安定運用、個人に人気
日興アセットマネジメントが運用する「高金利先進国債券オープン(毎月分配型)」が純資産残高を伸ばしている。14日時点では3388億円と昨年末に比べ約200億円増えた。2003年に設定され、先進国中心の債券ファンドの中でも安定した運用成績を確保し、個人投資家の関心を集めている。
相対的に金利の高い国のソブリン債に投資する。6月末時点の投資比率はオーストラリアが34・6%、ニュージーランドが26・9%、ノルウェーが24・9%、カナダが7・3%、米国が6・3%。組み入れている債券の外資系会社による格付けは最高位に当たる「Aaa」が9割を占める。運用では信用リスクの回避を重視する。
投資比率が最も大きいオーストラリアの10年物国債利回りは4%台後半と、超低金利が続く日本と比べ高い。金利差拡大から円に対して豪ドルは上昇圧力がかかりやすく、為替差益による運用成績の押し上げも期待できる。東日本大震災直後には一時1豪ドル=74円台まで円高が進む局面もあったが、その後は豪ドルが持ち直し、足元は84円前後で推移している。
投資比率が2番目に大きいニュージーランドの1~3月期の実質国内総生産(GDP)は季節調整済みで前期比0・8%増と2四半期連続のプラスとなった。2月に同国第2の都市クライストチャーチが大地震に見舞われたことで広がっていた景気の下振れ懸念も弱まっている。経済成長を背景に同国の10年物国債利回りは4%台後半と高水準だ。
ギリシャやイタリアなど欧州では債務問題への懸念が強まっているが、影響は限定的。欧州の投資対象が石油や天然ガスの輸出国のノルウェーに限られているからだ。日興アセットでは、「金利水準は他の欧州の国々とあまり変わらないものの、地域分散、資源国という切り口でノルウェーを選んでいる」と説明する。昨年から続く欧州債務懸念のリスクが小さいことも投資の安心感につながっているようだ。
相対的に金利の高い国のソブリン債に投資する。6月末時点の投資比率はオーストラリアが34・6%、ニュージーランドが26・9%、ノルウェーが24・9%、カナダが7・3%、米国が6・3%。組み入れている債券の外資系会社による格付けは最高位に当たる「Aaa」が9割を占める。運用では信用リスクの回避を重視する。
投資比率が最も大きいオーストラリアの10年物国債利回りは4%台後半と、超低金利が続く日本と比べ高い。金利差拡大から円に対して豪ドルは上昇圧力がかかりやすく、為替差益による運用成績の押し上げも期待できる。東日本大震災直後には一時1豪ドル=74円台まで円高が進む局面もあったが、その後は豪ドルが持ち直し、足元は84円前後で推移している。
投資比率が2番目に大きいニュージーランドの1~3月期の実質国内総生産(GDP)は季節調整済みで前期比0・8%増と2四半期連続のプラスとなった。2月に同国第2の都市クライストチャーチが大地震に見舞われたことで広がっていた景気の下振れ懸念も弱まっている。経済成長を背景に同国の10年物国債利回りは4%台後半と高水準だ。
ギリシャやイタリアなど欧州では債務問題への懸念が強まっているが、影響は限定的。欧州の投資対象が石油や天然ガスの輸出国のノルウェーに限られているからだ。日興アセットでは、「金利水準は他の欧州の国々とあまり変わらないものの、地域分散、資源国という切り口でノルウェーを選んでいる」と説明する。昨年から続く欧州債務懸念のリスクが小さいことも投資の安心感につながっているようだ。
独身アラサー、高級家電に走る――電子レンジや洗濯機、家事に強いこだわり
お金に余裕のある独身の間で高級家電が人気だ。洗濯機は単身者向けの普及品の2倍、電子レンジは2倍以上の高級品が売れている。標準的な機種に比べて機能が高く、家事にこだわる30歳前後のアラサー世代の支持を集めた。東日本大震災をきっかけに自宅でゆっくり過ごす生活者が増えたことも売れ行きを後押ししている。 洗濯機はパナソニックの「プチドラム」が売れ筋商品だ。主流となっている縦型の洗濯機に比べて乾燥機能が優れ、衣類を乾かしてもシワができにくい。アイロンに手間がかからないうえ、ベランダや室内で乾かす手間も省ける。忙しいアラサー世代には時間の節約になる。店頭価格は10万円強と高めだが、「単身者向けの商品では一番売れている」(ヨドバシカメラ)。 パナソニックは30歳前後の単身者向け家電を「ナイトカラーシリーズ」として展開している。黒を基調にするなどデザインにこだわっており、同ブランドの家電は「前年度の2倍近く売れている」(同社)。 キッチン周りの家電も高価格品が人気を集めている。電子レンジでは水蒸気で調理するシャープの「ヘルシオ」、温める効率を高めて調理時間を短くした三菱電機の「ZITANG」が売れ筋。両商品ともこだわった料理を手軽に作れることから、「昼食を自ら作る『弁当男子』やお菓子作りを趣味とする女性らの支持が高い」(ビックカメラ)という。 博報堂生活総合研究所の小原美穂・主任研究員は「アラサー世代は『身近な生活を楽しむ』という意識が強い。震災で家事へのこだわりは以前より強くなっており、高級な生活家電の消費拡大に結びついている」と指摘する。 |
難しくなった小学校の宿題―親にも難題、手助け限界?
甘えん坊のA男が、お母さんと塾に現れた。「週2回の通塾を、来週から1回にしてください」。済まなそうにお母さんが言う。
5年生になったら、急に宿題が増え、毎晩9時すぎまでかかる。塾のある日は、寝るのが遅くなり、翌日、学校で居眠りすることもある。「本人が疲れると言うので……」。お母さんは困り顔で説明した。
1月ほど前、お母さんに電話で「学校の宿題を塾でやってもいいか」と聞かれたことがある。A男は中学受験するわけではないので、「どんな勉強をするかは自由です。どうぞ持ってきてください」と答えた。
だが、A男は宿題を持って来なかった。「宿題、見てみたいな」。私がつぶやくと、お母さんは家に戻り、その日出された算数のプリントを持ってきた。
「えッ、この1枚だけ? これを解くのに、9時までかかるの?」。そう言いたいところをぐっとこらえて、「では、早速やってみよう」。宿題を解くA男の前で、お母さんから話を聞いた。
A男の家は飲食店で、1階に店、2階に住まいがある。夕食が済むと、両親は店に出て、A男は宿題に取りかかる。解けない問題があると、その都度、お母さんにSOSを出す。「忙しい時間に『質問!』と言って、店のインターホンを鳴らすんです。でも、私にも解けない問題が多くなって……」
新しい学習指導要領が始まり、小学校では学習内容が増え、しかも難しくなった。宿題にも1、2問だが、発展的な問題が盛り込まれている。A男は、その問題が解けないのだ。
「どうしてお母さん、解けないの?」。会話に割り込んで来たA男に、「お母さんはスーパーマンじゃないよ。解けなかったら、学校の先生に、分かりませんでしたと言えばいいんだよ。塾のある日は、先生と一緒にやれば?」。私が言うと、お母さんが「週2回、やっぱり通ってみる?」。少し考えてからA男が答えた。「やってみる」
お母さんと私は黙って目を合わせた。
5年生になったら、急に宿題が増え、毎晩9時すぎまでかかる。塾のある日は、寝るのが遅くなり、翌日、学校で居眠りすることもある。「本人が疲れると言うので……」。お母さんは困り顔で説明した。
1月ほど前、お母さんに電話で「学校の宿題を塾でやってもいいか」と聞かれたことがある。A男は中学受験するわけではないので、「どんな勉強をするかは自由です。どうぞ持ってきてください」と答えた。
だが、A男は宿題を持って来なかった。「宿題、見てみたいな」。私がつぶやくと、お母さんは家に戻り、その日出された算数のプリントを持ってきた。
「えッ、この1枚だけ? これを解くのに、9時までかかるの?」。そう言いたいところをぐっとこらえて、「では、早速やってみよう」。宿題を解くA男の前で、お母さんから話を聞いた。
A男の家は飲食店で、1階に店、2階に住まいがある。夕食が済むと、両親は店に出て、A男は宿題に取りかかる。解けない問題があると、その都度、お母さんにSOSを出す。「忙しい時間に『質問!』と言って、店のインターホンを鳴らすんです。でも、私にも解けない問題が多くなって……」
新しい学習指導要領が始まり、小学校では学習内容が増え、しかも難しくなった。宿題にも1、2問だが、発展的な問題が盛り込まれている。A男は、その問題が解けないのだ。
「どうしてお母さん、解けないの?」。会話に割り込んで来たA男に、「お母さんはスーパーマンじゃないよ。解けなかったら、学校の先生に、分かりませんでしたと言えばいいんだよ。塾のある日は、先生と一緒にやれば?」。私が言うと、お母さんが「週2回、やっぱり通ってみる?」。少し考えてからA男が答えた。「やってみる」
お母さんと私は黙って目を合わせた。
大学の教育目標、産業界の期待とズレ――東北大学講師串本剛氏
「専門知識習得」上位 「課題解決力」は中位
学士の能力 共通性必要
串本剛・東北大学講師らが全国の大学の学科長に学科の教育目標を聞いたところ、専門教育重視で、社会の要望とずれが大きいことが分かった。
本来、教育とは意図を伴った働きかけである。ところが大学教育においては、その目的が教育者と学習者の双方に意識され、共有されることはほとんどなかった。
無論、日本の大学の75%以上を占める私立大学は例外なく建学の精神を有するし、国公立大学も教育研究上の目的が存在することを前提に大学に関する法令は定められてきた。しかしその「精神」や「目的」は、実態として大学の構成員に理解されているものではなく、行動の指針となるほど具体的でもない。
目標を明文化
こうした状況は、1990年代から断続的に続く大学改革の中でも問題視されてきた。大学で学ぶことによって身に付く能力は、学生や社会に明示されるべきだからだ。受験生が大学を選ぶ際の重要な情報の一つになるし、社会の側からみれば、卒業生に期待できることを知ると同時に、大学教育が税金による支援に値するものかどうかを判断する材料になる。
これを受け近年では、学部・学科・課程ごとに、教育研究上の目的を学則などに定め公表することを求めた大学設置基準の改正(2007年)や、学位授与の方針(ディプロマ・ポリシー)の明示を推奨した中央教育審議会答申(05、08年)に促され、大学は「大学教育の目標」とみなされるものを明文化し公表している。
では、その内容はいかなるものなのか。私たちは、日本私立大学協会付置私学高等教育研究所のプロジェクト(代表・浜名篤関西国際大学教授)の一環として、全国の大学の学科長2千人を対象にアンケートを実施し、733人の回答を得た。表は、学科が明文化している教育・学習目標について、私たちが用意した11項目のどれに当てはまるかを、複数回答で選んでもらった結果である。
7割以上の学科長が選択した項目は3つあったが、すべて専門教育に関するものだった。また専門的職業人に関する2項目の選択率は5割弱だったが、すべての専門分野が専門職に直結してはいないことを考えると、必ずしも低い値ではない。
他方で、学生の専攻にかかわらず、共通に意識されることが多いと思われる項目(*印の項目)の選択率は低い。特に、対人的能力や認知的能力に比べ、人文学的知識や幅広い教養など、昔の一般教育課程で期待されていた学習成果はあまり重要視されていない。
この結果は、2つの点で注目される。第1に、産業界が大学教育に要求する内容と大学側の意識の間には依然として食い違いがある。
例えば経団連が今年初めに公表したアンケート結果では、企業が大学教育に期待する上位3項目(複数回答)は、「論理的思考力や問題解決能力を身につける」(76・5%)、「チームを組んで特定の課題に取り組む経験」(45・5%)、「専門分野の知識を身につける」(43・8%)だった。
同一項目による調査ではないので厳密な比較はできないが、専門分野の学習成果よりも、汎用性のある対人的・認知的能力を期待している点で、学科長調査の結果とは対照的である。
国際化も背景
第2に、学科長が考える教育・学習目標には、専門分野を超えた共通性が希薄である。大学進学率が50%を超え、学生の国際的な流動性が高まる中で、大学卒としての学士の能力には、これまで以上に一定の標準性が求められている。
この標準性には、専門分野ごとに想定されるものもあるだろう。日本学術会議が検討している「分野別参照基準」はその一例だ。だが、それとはまた別に、大学を出た者に対して、専門分野を問わず国際的にも共通して期待されるような知識・能力があるはずだ。
しかし今回の調査を見る限り、少なくとも学科長のレベルでは、この点に関する明確な配慮はみられない。学科長は教員が持ち回りで短期間務めるという日本の慣例を考慮すると、これは一般教員の共通認識といってもよいかもしれない。
これら2点については、共に“役割分担”という発想が反映したものとみることもできる。日本の学部教育(学士課程)は基本的に、学生の専攻にかかわりなく施される共通教育と専門教育から構成される。学科長の関心が後者の専門教育のみにあるものと解釈すれば、表に示したような結果はむしろ合理的な傾向を示したことになる。
だが、新入生の大半が所属する学科を決めた上で入学してくる現実を考えると、学科の教育・学習目標に共通教育の役割を位置づけることは不可欠である。なぜなら学生の立場からすれば、学士課程とは共通教育と専門教育という分断された2つの教育からなるものではなく、一貫性のある4(または6)年間であるべきだからだ。
しかも、経団連調査などで明らかなように、社会が学士課程教育に求めているのが専門分野に特有の知識や能力だけではない以上、“役割分担”の是非を含め、早急な検討が迫られていることは確かである。
学士の能力 共通性必要
串本剛・東北大学講師らが全国の大学の学科長に学科の教育目標を聞いたところ、専門教育重視で、社会の要望とずれが大きいことが分かった。
本来、教育とは意図を伴った働きかけである。ところが大学教育においては、その目的が教育者と学習者の双方に意識され、共有されることはほとんどなかった。
無論、日本の大学の75%以上を占める私立大学は例外なく建学の精神を有するし、国公立大学も教育研究上の目的が存在することを前提に大学に関する法令は定められてきた。しかしその「精神」や「目的」は、実態として大学の構成員に理解されているものではなく、行動の指針となるほど具体的でもない。
目標を明文化
こうした状況は、1990年代から断続的に続く大学改革の中でも問題視されてきた。大学で学ぶことによって身に付く能力は、学生や社会に明示されるべきだからだ。受験生が大学を選ぶ際の重要な情報の一つになるし、社会の側からみれば、卒業生に期待できることを知ると同時に、大学教育が税金による支援に値するものかどうかを判断する材料になる。
これを受け近年では、学部・学科・課程ごとに、教育研究上の目的を学則などに定め公表することを求めた大学設置基準の改正(2007年)や、学位授与の方針(ディプロマ・ポリシー)の明示を推奨した中央教育審議会答申(05、08年)に促され、大学は「大学教育の目標」とみなされるものを明文化し公表している。
では、その内容はいかなるものなのか。私たちは、日本私立大学協会付置私学高等教育研究所のプロジェクト(代表・浜名篤関西国際大学教授)の一環として、全国の大学の学科長2千人を対象にアンケートを実施し、733人の回答を得た。表は、学科が明文化している教育・学習目標について、私たちが用意した11項目のどれに当てはまるかを、複数回答で選んでもらった結果である。
7割以上の学科長が選択した項目は3つあったが、すべて専門教育に関するものだった。また専門的職業人に関する2項目の選択率は5割弱だったが、すべての専門分野が専門職に直結してはいないことを考えると、必ずしも低い値ではない。
他方で、学生の専攻にかかわらず、共通に意識されることが多いと思われる項目(*印の項目)の選択率は低い。特に、対人的能力や認知的能力に比べ、人文学的知識や幅広い教養など、昔の一般教育課程で期待されていた学習成果はあまり重要視されていない。
この結果は、2つの点で注目される。第1に、産業界が大学教育に要求する内容と大学側の意識の間には依然として食い違いがある。
例えば経団連が今年初めに公表したアンケート結果では、企業が大学教育に期待する上位3項目(複数回答)は、「論理的思考力や問題解決能力を身につける」(76・5%)、「チームを組んで特定の課題に取り組む経験」(45・5%)、「専門分野の知識を身につける」(43・8%)だった。
同一項目による調査ではないので厳密な比較はできないが、専門分野の学習成果よりも、汎用性のある対人的・認知的能力を期待している点で、学科長調査の結果とは対照的である。
国際化も背景
第2に、学科長が考える教育・学習目標には、専門分野を超えた共通性が希薄である。大学進学率が50%を超え、学生の国際的な流動性が高まる中で、大学卒としての学士の能力には、これまで以上に一定の標準性が求められている。
この標準性には、専門分野ごとに想定されるものもあるだろう。日本学術会議が検討している「分野別参照基準」はその一例だ。だが、それとはまた別に、大学を出た者に対して、専門分野を問わず国際的にも共通して期待されるような知識・能力があるはずだ。
しかし今回の調査を見る限り、少なくとも学科長のレベルでは、この点に関する明確な配慮はみられない。学科長は教員が持ち回りで短期間務めるという日本の慣例を考慮すると、これは一般教員の共通認識といってもよいかもしれない。
これら2点については、共に“役割分担”という発想が反映したものとみることもできる。日本の学部教育(学士課程)は基本的に、学生の専攻にかかわりなく施される共通教育と専門教育から構成される。学科長の関心が後者の専門教育のみにあるものと解釈すれば、表に示したような結果はむしろ合理的な傾向を示したことになる。
だが、新入生の大半が所属する学科を決めた上で入学してくる現実を考えると、学科の教育・学習目標に共通教育の役割を位置づけることは不可欠である。なぜなら学生の立場からすれば、学士課程とは共通教育と専門教育という分断された2つの教育からなるものではなく、一貫性のある4(または6)年間であるべきだからだ。
しかも、経団連調査などで明らかなように、社会が学士課程教育に求めているのが専門分野に特有の知識や能力だけではない以上、“役割分担”の是非を含め、早急な検討が迫られていることは確かである。
政策の信頼度と連動、北欧は消費を優先
家計の消費(貯蓄)と将来への不安には一定の関連性がある。内閣府の分析では、年金制度への信頼度が70%前後のデンマークやフィンランドでは消費支出が所得を上回る。これに対して信頼度が20%程度と低いドイツや日本では貯蓄率が7~13%と高い。 将来不安が和らぎ、政策に対する信頼度が高まれば、消費の抑制姿勢は緩んでくるのか。ヒントになるのは従来型の景気対策に伴う個人の消費行動だ。 景気低迷時に政府が大規模な公共投資などを実施すれば、新たな需要が生み出されるというのが従来型の景気対策の考え方だ。だが、最近は公共投資↓財政悪化↓将来の増税という連想から、個人が貯蓄を積み増すことが注目されている。 個人の消費行動については学者の間で論争があるが、関西学院大学の亀田啓悟准教授はむしろ「個人の期待を変えるほどの大規模な財政健全化が打ち出されれば(消費抑制の緩和に)効果がある」と指摘する。 社会保障給付の拡大を抑えられず、財政健全化にも有効な手が打てないなかで、政府は東日本大震災からの復興を迫られている。政策の優先順位を明確にしたうえで、具体的な将来設計をどう描くかが問われている。 |
将来の給与・年金が不安…、現役世代、守りの貯蓄
給与削減や年金給付の減額、増税への不安から、現役世代が貯蓄を積み上げている。家計の貯蓄率はほぼ一貫して低下しているが、貯蓄を取り崩して消費に回す高齢者を除けば約30年ぶりの高水準にある。所得が減るなかでも現役世代が貯蓄に励むのは、将来に備えた「自己防衛」。先行き不安を解消しないと個人消費は本格回復しそうにない。(大塚節雄) 可処分所得のどの程度を貯蓄に振り向けたかを示すのが貯蓄率。日本の貯蓄率は石油ショック前後の1970年代半ばをピークに低下傾向にある。90年代初めには15%程度だったが、2009年には5%となった。 最近になって貯蓄率が急速に落ち込んでいるのは、高齢化の影響とみられる。内閣府の分析によると、60~69歳の高齢者世帯では年金など可処分所得の1・2~1・9倍を消費に使う。こうした高齢者世帯の割合が増えたことで全体の貯蓄率が下がった格好だ。 高齢化の影響を除くと貯蓄率の動きはどうなるか。BNPパリバ証券は貯蓄率の変動要因を所得や物価、高齢化(65歳以上の人口割合)に分けたうえで、高齢化の要因を除いた現役世代の貯蓄率を試算した。 それによると、現役世代の貯蓄率は90年代以降は20%前後で、2000年代半ばからは緩やかな上昇基調にある。直近09年の全体の貯蓄率は5%だが、高齢化で18ポイント程度押し下げられており、これを除けば貯蓄率は23・4%と、78年以来の高水準となった。 年齢層ごとに貯蓄率の動きが確認できる家計調査の10年のデータでも、世帯主が40歳代の家計(勤労者世帯)の貯蓄率は5年前と比べて3・7ポイント上昇。一方で高齢者が多い無職世帯では4・4ポイント低下している。 もっとも、家計が貯蓄を積み上げる動機は変わっている。金融広報中央委員会の10年のアンケート調査で、金融資産を持つ理由について「老後の生活資金」と答えた家計は全体の6割以上。回答割合は10年前から8ポイント近く上昇した。その一方で「住宅取得」や「子供の教育」などが目的の貯蓄は落ち込んでいる。 将来不安から貯蓄に走る家計。最近10年間に40歳代の所得は約6%減ったが、貯蓄率は上昇傾向にあり、その分だけ消費に回す金額は目減りしている。問題が深刻なのは若年層ほど、自己防衛が強いことだ。将来受け取る年金額には全体の45%が不安を抱えているが、世帯主が20~40歳代に限るとその割合は60%近くに跳ね上がる。 BNPパリバの河野龍太郎チーフエコノミストは、現役世代の貯蓄率の上昇傾向が年金に対する不信感が強まった時期と重なると分析。「社会保障制度の持続性や将来の増税に対する不安が消費を抑えている」と強調する。「目先の失業や給与カットへの不安が大きい」(バークレイズ・キャピタル証券の森田京平チーフエコノミスト)という指摘も多い。 |
国保保険料の算出、一本化の見通し
年金生活者や自営業者などが加入する国民健康保険(国保)の保険料(税)の計算方法が2013年度から一本化される見通しだ。現在、横浜市など14の地方自治体が税制改正の影響を受けやすい「住民税方式」だが、国は6月末に地方税法が改正されたのを機に、税制改正の影響を受けにくい「所得方式」への変更を求める方針だ。 国保保険料の計算方法にはその年度の住民税をもとにする方法と、前年の基礎控除後の所得をもとに決める方式がある。 住民税方式では、前年の所得から差し引く扶養控除などの所得控除が税制改正で変わると、保険料が変動する。例えば扶養控除が廃止・縮小されると住民税が増加し、保険料も増える。その点、今後見直される可能性が小さい基礎控除を差し引いた後の所得に連動させる所得方式だと、他の所得控除が大幅に見直されても、保険料が大きく変動しなくなる。 ただ、所得方式は扶養控除などをする前の所得を使うため扶養家族の多い世帯では保険料が上がる。自治体による軽減措置が焦点になりそうだ。 |
高齢者向け分譲マンションの特徴は?、手ごろな値段で所有権取得
老後の住まいとして高齢者向け分譲マンションに関心を持っています。他の高齢者住宅・施設と比較して権利、家計運営の面でどのような特徴や問題点があるのか教えてください。(東京都、57歳、男性)
高齢者向け分譲マンションは、居室のバリアフリー仕様、緊急時の通報装置の設置など高齢者に特に配慮したマンションのことです。基本的に健康な人が入居しますが、食事や医療機関との提携サービスを提供する場合もあります。介護付き有料老人ホームや一定の条件を満たした高齢者専用賃貸住宅(高専賃)といった代表的な高齢者住宅・施設と似た面があり、表ではこうした住宅・施設との比較をしています。
まず、高齢者向け分譲マンションの最大の特徴は、居室の所有権を持つことです。資産なので自由に売却、賃貸、リフォームができ、相続も可能です。これに対して高専賃は賃借権、有料老人ホームは入居者限りの利用権を得ますが、いずれも所有権と違って自由に居室を処分できません。有料老人ホームの入居一時金は家賃の前払いの意味があり、一定期間たつと退去しても一時金が返還されない場合があります。
高齢者向け分譲マンションの購入代金は高専賃の入居時の敷金、礼金などや有料老人ホームの入居一時金に比べて高い場合が目立ちます。新築だと場所により数千万円の物件もあります。ただ、中古物件も多く、リフォーム後のもので数百万円で購入できるなど、手ごろな値段で所有権を得られる物件もあります。
高齢者向け分譲マンションでは固定資産税の負担があります。ただ、毎月の家賃がない分、他の高齢者住宅・施設より月々の負担が抑えやすいと言えます。
もっとも、高齢者向け分譲マンションも問題点はあります。換金する場合、希望価格で売れるとは限りません。また、介護保険を利用した介護サービスは居宅サービスなどを利用するため、自己負担が必要です。一方、介護付き有料老人ホームは月々の利用料に基本的な介護費が含まれます。
高齢者向け分譲マンションは要介護度が高くなると住み続けるのが難しい傾向があります。購入する場合は、こうした特徴を踏まえて検討してください。
高齢者向け分譲マンションは、居室のバリアフリー仕様、緊急時の通報装置の設置など高齢者に特に配慮したマンションのことです。基本的に健康な人が入居しますが、食事や医療機関との提携サービスを提供する場合もあります。介護付き有料老人ホームや一定の条件を満たした高齢者専用賃貸住宅(高専賃)といった代表的な高齢者住宅・施設と似た面があり、表ではこうした住宅・施設との比較をしています。
まず、高齢者向け分譲マンションの最大の特徴は、居室の所有権を持つことです。資産なので自由に売却、賃貸、リフォームができ、相続も可能です。これに対して高専賃は賃借権、有料老人ホームは入居者限りの利用権を得ますが、いずれも所有権と違って自由に居室を処分できません。有料老人ホームの入居一時金は家賃の前払いの意味があり、一定期間たつと退去しても一時金が返還されない場合があります。
高齢者向け分譲マンションの購入代金は高専賃の入居時の敷金、礼金などや有料老人ホームの入居一時金に比べて高い場合が目立ちます。新築だと場所により数千万円の物件もあります。ただ、中古物件も多く、リフォーム後のもので数百万円で購入できるなど、手ごろな値段で所有権を得られる物件もあります。
高齢者向け分譲マンションでは固定資産税の負担があります。ただ、毎月の家賃がない分、他の高齢者住宅・施設より月々の負担が抑えやすいと言えます。
もっとも、高齢者向け分譲マンションも問題点はあります。換金する場合、希望価格で売れるとは限りません。また、介護保険を利用した介護サービスは居宅サービスなどを利用するため、自己負担が必要です。一方、介護付き有料老人ホームは月々の利用料に基本的な介護費が含まれます。
高齢者向け分譲マンションは要介護度が高くなると住み続けるのが難しい傾向があります。購入する場合は、こうした特徴を踏まえて検討してください。
個人型確定拠出年金、魅力知って―信託報酬、年0.2%を下回る商品も。
投信を使う場合、長期運用では、日々差し引かれるコストである信託報酬が成績に大きな影響を与えがちだ(グラフE)。 金融機関の投信の品ぞろえは玉石混交。信託報酬が年に2%前後に達する投信が選択肢に入っていることもある。信託報酬が高くても良い成績をあげるものもあるが、長期になるほどその比率は低くなりがちで、事前にそれを選ぶことが難しいことが様々なデータで知られている。「低コストのインデックス(指数連動型)投信を使い、運用期間で配分は異なるが、国内外の株や債券に分散するのが基本」(ファイナンシャル・ジャーナリストの竹川美奈子さん) インデックス投信同士でも信託報酬には大きな差がある。このため個人投資家などが独自に有利な金融機関を調べ、ネットで情報交換する動きがある。 特に詳しい一人であるブレーメンさん(ハンドルネーム、47)は「お薦めは琉球銀行」という。国内外の株と債券という代表的な4資産で、信託報酬が年0・2%前後という非常に低コストのインデックス投信がそろっている。 このほか岩手銀行、住友生命なども低コスト投信が目立つ。ブレーメンさんも琉球銀行を使っているが「個人型401kは基本的にネット中心に様々な手続きができるので、住所地の金融機関でなくても特に不便はない」。 ただし「運用資産が高額の場合は信託報酬の差が大きいが、少額なら運営管理機関の手数料の低さを重視した方が有利だ」 |
個人型確定拠出年金、魅力知って、自営業・企業年金ない会社員向け。
個人が掛け金を積み立てて預貯金や投資信託などで運用、成績次第で老後の給付額が変わるのが個人型確定拠出年金制度(個人型401k)。税制優遇が手厚く、老後資金づくりに役立つ仕組みだが、あまり知られておらず、利用はごく少数にとどまっている。仕組みと賢い使い方を探った。
「税金を減らせるのが魅力」と話すのは2007年から個人型401kで老後資金を積み立てている都内の食品会社勤務、浜島和夫さん(仮名、39)。所得税や住民税は、課税所得に税率をかけて計算する。個人型401kの掛け金は全額、所得控除されるのでその分課税所得が減り、税金も少なくなるわけだ。
個人型401kが使えるのは、自営業者と、独自の企業年金をもたない会社員(表A)。掛け金の上限額は自営業者で月6万8000円、会社員で月2万3000円だ。
浜島さんは会社員の上限である月2万3000円(年27万6000円)を積み立てている。所得税・住民税を合わせた上限税率(その人の課税所得のうち最も高い部分に適用される税率)が15%なので、年に4万1000円強税金が減る。今後も税率などが一定なら、削減効果の累計は20年なら83万円弱になる。
個人型401kは銀行、証券、生命保険会社など多くの金融機関(運営管理機関)が扱っていて、選んだ金融機関が提示した商品から自分で選択し、運用する。浜島さんは「リスクのある運用は怖いのでは大半は預貯金」。大きな運用益は望めないが「税金が減るだけ、自分で普通に貯金するより得」と割り切る。
税率が高く掛け金が多いほど税の削減効果も大きくなる(表B)。やはり07年から個人型401kを開始、外国株などの投信で運用している静岡県の開業医、上田信吾さん(仮名、43)は、収入が多く上限税率が50%。自営業者の掛け金の上限である月6万8000円をかけ続けているので「年間40万円以上の税金が減る」。ちなみに加入者全員の掛け金の平均は1万6000円強だ(グラフD)。
運営管理機関ごとに定められた手数料が、拠出期間中、通常は年2000~6000円程度かかる(各運営管理機関と、実施主体である国民年金基金連合会などの合計)。ただ大半は所得控除に伴う節税効果が大きく上回る。SBI証券やスルガ銀行のように、一定の条件で運営管理機関分の手数料がゼロのところもある。ほかに投信の信託報酬などがかかる。
運用期間中は運用益に課税されない。「株や債券の投資信託を使い、運用益を元本に加えていくことによる複利効果で、大きく資産を増やすことも可能」(確定拠出年金教育協会の秦穣治専務理事)だ。ただし、運用に失敗すると元本割れするリスクもある。
60歳まで出せず
受け取りは原則60歳以降、一時金と年金形式の両方を選べる。例えば一時金で受け取る場合は退職所得控除がある。控除額は20年までは年間40万円、その後は70万円なので、30年積み立てれば1500万円(40万円×20年+70万円×10年)まで、元本と運用益を合わせて非課税だ。
年金に詳しいファイナンシャルプランナー(FP)の山崎俊輔さんは、自分も個人型401kの積み立てを続けている。「通常は会社員しか恩恵を受けられない退職所得控除を、自営業者でも使えるのは大きな利点」
個人型401kに加入できる対象者は3000数百万人に達するとみられる。02年の導入後まもなく10年になるが、加入者はまだ12万人強。「節税メリットなどが十分知られていないためで、もったいない話」(山崎さん)
「金融機関にとっては、少しずつしか残高が増えないので手間の割にうまみが少ないビジネス。このため積極的にPRしなかった」(大手金融機関)ことも大きいようだ。
「注意点は、原則60歳まで引き出せないこと」(教育協会の秦さん)。最近は突然のリストラなどで急に資金不足になり、金融機関などに「401kでためたお金をどうしても出させてくれ」と訴える人もいる。しかし、残高50万円以下など非常に限られた場合以外は法律上不可能だ。老後まで使わないでいい余裕資金を充てるべきだし、教育資金や住宅資金には向かない。
「税金を減らせるのが魅力」と話すのは2007年から個人型401kで老後資金を積み立てている都内の食品会社勤務、浜島和夫さん(仮名、39)。所得税や住民税は、課税所得に税率をかけて計算する。個人型401kの掛け金は全額、所得控除されるのでその分課税所得が減り、税金も少なくなるわけだ。
個人型401kが使えるのは、自営業者と、独自の企業年金をもたない会社員(表A)。掛け金の上限額は自営業者で月6万8000円、会社員で月2万3000円だ。
浜島さんは会社員の上限である月2万3000円(年27万6000円)を積み立てている。所得税・住民税を合わせた上限税率(その人の課税所得のうち最も高い部分に適用される税率)が15%なので、年に4万1000円強税金が減る。今後も税率などが一定なら、削減効果の累計は20年なら83万円弱になる。
個人型401kは銀行、証券、生命保険会社など多くの金融機関(運営管理機関)が扱っていて、選んだ金融機関が提示した商品から自分で選択し、運用する。浜島さんは「リスクのある運用は怖いのでは大半は預貯金」。大きな運用益は望めないが「税金が減るだけ、自分で普通に貯金するより得」と割り切る。
税率が高く掛け金が多いほど税の削減効果も大きくなる(表B)。やはり07年から個人型401kを開始、外国株などの投信で運用している静岡県の開業医、上田信吾さん(仮名、43)は、収入が多く上限税率が50%。自営業者の掛け金の上限である月6万8000円をかけ続けているので「年間40万円以上の税金が減る」。ちなみに加入者全員の掛け金の平均は1万6000円強だ(グラフD)。
運営管理機関ごとに定められた手数料が、拠出期間中、通常は年2000~6000円程度かかる(各運営管理機関と、実施主体である国民年金基金連合会などの合計)。ただ大半は所得控除に伴う節税効果が大きく上回る。SBI証券やスルガ銀行のように、一定の条件で運営管理機関分の手数料がゼロのところもある。ほかに投信の信託報酬などがかかる。
運用期間中は運用益に課税されない。「株や債券の投資信託を使い、運用益を元本に加えていくことによる複利効果で、大きく資産を増やすことも可能」(確定拠出年金教育協会の秦穣治専務理事)だ。ただし、運用に失敗すると元本割れするリスクもある。
60歳まで出せず
受け取りは原則60歳以降、一時金と年金形式の両方を選べる。例えば一時金で受け取る場合は退職所得控除がある。控除額は20年までは年間40万円、その後は70万円なので、30年積み立てれば1500万円(40万円×20年+70万円×10年)まで、元本と運用益を合わせて非課税だ。
年金に詳しいファイナンシャルプランナー(FP)の山崎俊輔さんは、自分も個人型401kの積み立てを続けている。「通常は会社員しか恩恵を受けられない退職所得控除を、自営業者でも使えるのは大きな利点」
個人型401kに加入できる対象者は3000数百万人に達するとみられる。02年の導入後まもなく10年になるが、加入者はまだ12万人強。「節税メリットなどが十分知られていないためで、もったいない話」(山崎さん)
「金融機関にとっては、少しずつしか残高が増えないので手間の割にうまみが少ないビジネス。このため積極的にPRしなかった」(大手金融機関)ことも大きいようだ。
「注意点は、原則60歳まで引き出せないこと」(教育協会の秦さん)。最近は突然のリストラなどで急に資金不足になり、金融機関などに「401kでためたお金をどうしても出させてくれ」と訴える人もいる。しかし、残高50万円以下など非常に限られた場合以外は法律上不可能だ。老後まで使わないでいい余裕資金を充てるべきだし、教育資金や住宅資金には向かない。
高齢者、お金の管理、安全に―人員が不足、任せる側も不安、利用3.5万人どまり。
日常生活自立支援事業は便利な公共サービスだが、課題もある。2011年1月末の利用者数は全国で約3万5千人にとどまる。このうち認知症高齢者が半数強の約1万9千人。残りは知的障害や精神障害を持つ人たちだ。 伸び悩みの主な理由は社会福祉協議会の人員不足にある。専門の常勤職員の人件費は都道府県と国が半額ずつ負担する。予算が付かず、ニーズがあると分かっていても多くの社協が人員増強に踏み切れないでいるのが実情だ。 一方、利用する側も通帳などを第三者へ預けることへの抵抗感が根強い。「本人から利用を申し出るケースはわずか。大半は状態の変化を察知した地域包括支援センターの職員など周囲の勧めがきっかけになっている」(全国社協地域福祉部)という。相談だけで終わることも多い。 厚生労働省の推計によると、10年に高齢者の独居世帯は初めて500万を突破。世帯総数の約1割を占める。今後も独居の高齢者、認知症の高齢者は確実に増加する。 品川区社協は日常生活自立支援事業に任意後見契約などを組み合わせた独自の事業を展開。訪問介護のやさしい手(東京・目黒)は類似したサービスを8月から都内で始める。金銭管理の面からも、高齢者を支える受け皿の拡大が必要だとの声は強い。 |
高齢者、お金の管理、安全に―遺言・通帳などの一覧…元気なうちに。
現役時代からの貯蓄や退職金などで積み上げたせっかくの老後資金も病気で倒れたり、認知症になったりすれば、自らの意思で使うことは難しくなる。人生の最終段階で大切なのは、いかに望んだ形で安定した生活を送るか、そのためにどのようにお金を使うかだ。事前にできる備えについてまとめた。 表Cに本人ができることと、子どもなど家族ができることに分けて主な準備項目をまとめた。ファイナンシャルプランナーの中山達雄さんは遺言書や財産目録の作成に加え、印鑑や鍵の保管場所の確認を勧める。 そのうえで「在宅か施設かなど介護が必要になった時のことや、終末期医療や葬儀についての希望を書き留めるか、周囲に伝えておきたい」と語る。 元気なうちに将来の後見人を公正証書で決めておく「任意後見制度」を利用すれば、誰に後見人を頼むのかや、仕事の範囲を自由に決めておくことができる。 子どもにとって、親の急な入院などで困るのが、治療費などの支払い。子どもが親名義の通帳と印鑑で預金を引き出そうとしても「金融機関は原則、本人以外の引き出しには応じない」(弁護士の江木大輔さん)。事前に代理人カードを作っておく手もあるが、江木さんは「使い込みを疑われるなど親族間でトラブルになる可能性もある。代理人カードの利用は親の判断能力がしっかりしている間に限るべきだ」と話す。 親の判断能力がなくなってからは、事前に結んでおいた任意後見契約をスタートさせるか、法定後見制度を活用して、子どもが後見人になれば、預金の引き出しを含めた親の財産管理や高齢者施設への入居契約など法律行為の代理が可能になる。 |
高齢者、お金の管理、安全に、社会福祉協の事業活用。
自分や親が高齢になると、生活費の引き出し、医療費の支払いなど日常的な金銭管理をどうするか、という問題が起こる。特に判断能力の低下に直面したり、外出が難しくなったりした高齢者にとっては切実な問題だ。住み慣れた場所で暮らし続けるために、公共サービスを利用して金銭管理をする方法もある。
「残高を確認してサインをお願いします。通帳は持って帰って保管しておきますね」。7月上旬、東京都江東区内にある都営住宅の一室で、同区社会福祉協議会(社協)の生活支援員、沢沙紀さんがこの部屋に暮らす坂本登志子さん(80)に声を掛けていた。
坂本さんは一人暮らし。心臓に持病を抱え足も不自由なため、ひとりで買い物や銀行に行くのが難しい。蓄えの取り崩しと年金収入によるやり繰りに不安を覚え、3年前から同区社協の「日常生活自立支援事業」を利用する(表A)。
「小口の金銭管理サービスは在宅高齢者の利用ニーズが大きい」と指摘するのは、社会福祉士の和賀井英雄さんだ。親族や信頼できる知人が近くにいない独居高齢者、同居の子どもが親の年金を使い込んでしまうような世帯では特に必要度が高いという。
坂本さんも隣県に姉がいるが、お互い高齢で行き来はない。代理人届を出した口座の通帳を同区社協に預け、毎月1回7万円を生活費として持ってきてもらい、介護ヘルパーと一緒に出掛ける際の買い物代や病院での支払いに充てている。
金額は沢さんらと話し合って決めた。何かと物入りな12月だけは3万円増やす。「多くも少なくもない、ちょうどいい金額。自宅で何とか暮らせるのも、このサービスのおかげ」と笑顔を見せる。
支援は貯金の引き出しに限らない。ショートステイや配食サービス利用料の支払い代行や家賃の減免申請などをすることで、金銭管理の面から在宅生活の安心を確保する。沢さんは「本人の希望は現在の暮らしを長く続けること。将来にわたって収支のバランスがとれるように気を付けている」という。
日常生活自立支援事業は全国約800の社協が手掛ける。認知症高齢者らの権利と財産を守る「成年後見制度」と異なるのは(1)軽度の認知症などであっても、本人に一定の判断力がある(2)報酬体系は1回の訪問当たり1000円程度からと安い(3)サービスは日常生活の範囲内に限定し、社協は高額の財産管理や法律行為の代理はできない――などが挙げられる。
一部重複する領域はあるものの、成年後見までは至らない高齢者らが自らの意思で契約を結ぶサービスと考えておけばいいだろう。トラブルを防ぐために、社協が管理する口座の残高は一定額に抑え、現金は訪問直前に引き出す。サービスの流れは表Bの通り。実際にサービスが始まるまでは費用はかからない。
司法書士で成年後見センター・リーガルサポート東京支部長の川口純一さんは「社協に通帳や印鑑を預けておけば、悪質商法などの被害に遭う可能性や被害額を減らすことにもつながる。高齢者の権利を守るのに役立つ仕組みだ」と話す。
「残高を確認してサインをお願いします。通帳は持って帰って保管しておきますね」。7月上旬、東京都江東区内にある都営住宅の一室で、同区社会福祉協議会(社協)の生活支援員、沢沙紀さんがこの部屋に暮らす坂本登志子さん(80)に声を掛けていた。
坂本さんは一人暮らし。心臓に持病を抱え足も不自由なため、ひとりで買い物や銀行に行くのが難しい。蓄えの取り崩しと年金収入によるやり繰りに不安を覚え、3年前から同区社協の「日常生活自立支援事業」を利用する(表A)。
「小口の金銭管理サービスは在宅高齢者の利用ニーズが大きい」と指摘するのは、社会福祉士の和賀井英雄さんだ。親族や信頼できる知人が近くにいない独居高齢者、同居の子どもが親の年金を使い込んでしまうような世帯では特に必要度が高いという。
坂本さんも隣県に姉がいるが、お互い高齢で行き来はない。代理人届を出した口座の通帳を同区社協に預け、毎月1回7万円を生活費として持ってきてもらい、介護ヘルパーと一緒に出掛ける際の買い物代や病院での支払いに充てている。
金額は沢さんらと話し合って決めた。何かと物入りな12月だけは3万円増やす。「多くも少なくもない、ちょうどいい金額。自宅で何とか暮らせるのも、このサービスのおかげ」と笑顔を見せる。
支援は貯金の引き出しに限らない。ショートステイや配食サービス利用料の支払い代行や家賃の減免申請などをすることで、金銭管理の面から在宅生活の安心を確保する。沢さんは「本人の希望は現在の暮らしを長く続けること。将来にわたって収支のバランスがとれるように気を付けている」という。
日常生活自立支援事業は全国約800の社協が手掛ける。認知症高齢者らの権利と財産を守る「成年後見制度」と異なるのは(1)軽度の認知症などであっても、本人に一定の判断力がある(2)報酬体系は1回の訪問当たり1000円程度からと安い(3)サービスは日常生活の範囲内に限定し、社協は高額の財産管理や法律行為の代理はできない――などが挙げられる。
一部重複する領域はあるものの、成年後見までは至らない高齢者らが自らの意思で契約を結ぶサービスと考えておけばいいだろう。トラブルを防ぐために、社協が管理する口座の残高は一定額に抑え、現金は訪問直前に引き出す。サービスの流れは表Bの通り。実際にサービスが始まるまでは費用はかからない。
司法書士で成年後見センター・リーガルサポート東京支部長の川口純一さんは「社協に通帳や印鑑を預けておけば、悪質商法などの被害に遭う可能性や被害額を減らすことにもつながる。高齢者の権利を守るのに役立つ仕組みだ」と話す。
自動車保険、直販が好調、7社、昨年度収入7.5%増――利用者、安さ重視。
インターネットや電話などを通じて販売する「直販」型損害保険の取り扱いが伸びている。ソニー損害保険など主要7社の2010年度の自動車保険の保険料収入は計1646億円となり、前年度に比べ7・5%増えた。保険料の安さを重視する利用者が増えていることなどが背景にあるようだ。
主要7社のうち5社が増収を確保した。08年以降に開業したSBI損害保険、イーデザイン損害保険の新規参入組は2倍以上に収入が増えた。
日本損害保険協会によると、10年度の全体の自動車保険料は3兆4564億円と0・9%増にとどまった。直販損保は営業費や人件費を抑えることで、大手損保に比べ保険料を低く設定しているケースが多い。契約の際に必要な手続きを簡素化していることも契約増の一因とみられる。
主要7社のうち5社が増収を確保した。08年以降に開業したSBI損害保険、イーデザイン損害保険の新規参入組は2倍以上に収入が増えた。
日本損害保険協会によると、10年度の全体の自動車保険料は3兆4564億円と0・9%増にとどまった。直販損保は営業費や人件費を抑えることで、大手損保に比べ保険料を低く設定しているケースが多い。契約の際に必要な手続きを簡素化していることも契約増の一因とみられる。
FX証拠金倍率、来月、上限50→25倍に――高リスク取引、一段と抑制。
為替への影響焦点 外貨買い弱まる可能性 投資家が証拠金を預けると、その何倍もの外貨を売買できる外国為替証拠金取引(FX)への規制が、8月から一段と強化される。投機性を弱めるのが狙いで、証拠金倍率の上限(元手の何倍まで取引できるかの数値)は今の半分の25倍に下がる。個人の高リスク取引は曲がり角にさしかかり、円高傾向の為替相場にも影響は及びそうだ。 高倍率が野放し状態だった個人のFXに初めて上限(50倍)が導入されたのが昨年8月。今回はそれに続く措置となる。昨夏の措置で取引額は3割程度減少。業界内ではさらに減ることへの懸念が出ているが、「倍率低下で投機的イメージが薄れる」(セントラル短資FXの松本一栄社長)と歓迎する声もある。 為替市場関係者は、規制強化による取引減少が相場にどんな影響を与えるかに関心を寄せている。FX利用者の売買は存在感が大きいためだ。 外貨取引の2割 FX業者と顧客の円対外貨の取引額を業界統計から推計すると、今年1~6月は1営業日平均5・8兆円程度。一方世界の為替市場での円対外貨取引額(直物)は、昨年4月時点の国際決済銀行(BIS)調査で1日28兆円だ。今年1~6月も同じ規模だったと仮定すると、FXの比率は約2割。業者は顧客の買いと売りを相殺する例も多く、注文のすべてが為替市場に出て行くわけではないが、個人による売買の影響力は大きそうだ。 規制強化のマーケットへの影響は、局面によって異なる。 まず、円高が進み始めた局面では、「FX投資家によって円高圧力が緩和される度合いがこれまでよりは小さくなる」(FXプライムの上田真理人専務)。従来FX利用者は円高局面で外貨を安く買う手法を好みがちだったが、倍率低下を受け、この「逆張り」の円売りが抑制される可能性があるからだ。 円急騰の防止も 一方で、今のように円高がある程度進み、投資家の逆張り的な外貨保有が膨らんだ局面では、逆に円の急騰を防ぐ効果も期待できる。 従来こうした場面では、FX投資家の存在がかえって円高に拍車をかけるケースがあった。円相場が上がり、外貨の評価損が一定程度に達すると、損失確定の円買いを強制される「ロスカット」という仕組みがあるためだ。 典型的な例が、3月17日早朝、円の対ドル相場が一気に3円以上上がり、過去最高値(1ドル=76円25銭)を記録したケース。一部市場参加者がロスカットの誘発を狙った円買いを仕掛けたと言われた。 今回の規制強化によって「ロスカットが相対的に発動されにくくなる」とIT関連会社役員で個人投資家の池谷大輔さん(31)はみている。証拠金倍率を下げると、評価損が膨らんでも、すぐにはロスカット発動基準に達しないためだ。 ただ、そうした相場安定効果がどの程度出るか不透明な面もある。サイバーエージェントFXの高根宏章社長は「ロスカットが減ってもストップロスの円買いが集中する可能性は残る」とみる。 ストップロスとは、一定の相場になったとき損失確定の反対売買をすることをあらかじめ決めておく注文。ロスカットと異なり利用は義務ではないが、多くの人が同じような水準にストップロス注文を出していると、相場がその水準に達した際に円買いが急増する。 7月12日の夕方、円が79円台前半に一気に上がった一因は、79円50銭近辺に集まっていたストップロスの発動だった。 8月の倍率引き下げを受けて投資家が外貨持ち高を一斉に減らすと、円高を招く恐れも否めない。新規制に向けて徐々に対応することが期待されている。 |
日本の電気料金、韓国の2.7倍、重い負担
経済産業省によると、2009年度の国内電気料金の平均単価は1キロワット時あたり16・0円(家庭用20・5円、産業用13・8円)。電力自由化前の1994年度に比べ17%低下している。 電力各社は燃料費の増減を料金に反映する「燃料費調整制度」に基づいて値上げすることはあるが、料金体系を改定する形での値上げは81年度の北海道電力以来、一度もない。むしろ電力自由化に伴い、値下げの改定を繰り返している。 石油危機後、燃料費の変動の影響を受けやすい石油火力から原子力発電へのシフトを進めてきたことも料金低下の一因。総発電量に占める火力比率は73年度の8割から09年度には6割に低下し、原子力比率は1割未満から3割に上昇した。 ただ、国会で審議中の再生エネルギー特別措置法案が通り、太陽光発電などの電気を電力会社が全量買い取るようになれば、その分のコストが上乗せされ、料金上昇につながる。停止した原発を火力で代替することによる燃料費の増加も押し上げ要因となりそうだ。 国際的にみれば日本の電気料金は高い。国際エネルギー機関(IEA)によると、産業用電気料金はフランスが1キロワット時10・7セント(約8・5円)、米国6・8セント(約5・4円)、韓国5・8セント(約4・6円)。これに対して日本は15・8セント(約12・5円)。日米の差は2・3倍、日韓は2・7倍だ。 日本は火力発電比率が低下してきたとはいえ、液化天然ガス(LNG)など燃料の大半を輸入に依存し、調達コストがかさむ。電力自由化で新規事業者は増えているが、大手電力の地域独占は続き、競争が促進されにくいとの指摘も多い。大手電力が送電網を持ち、新規事業者がその使用料を支払う制度が割高な料金の一因との声もある。 韓国の電気料金が安いのは、政府の財政負担で電力会社の損失を穴埋めしているためだ。国民負担であることに変わりはないが、法人税率の低さとともに韓国企業の国際競争力を後押ししていることは間違いない。 |
個人向け社債急回復、三菱UFJ、丸紅など発行――国債償還マネー狙う。
個人投資家向けの社債発行が急回復している。7月に入って三菱東京UFJ銀行、丸紅、小田急電鉄が相次いで起債し、4月からの合計額は約4500億円と昨年度(7800億円)の約6割に達した。東日本大震災後に混乱していた社債市場が復調したうえ、今年は個人向け5年国債が初めて満期を迎え、償還資金の取り込みを狙う企業も多い。(個人向け社債は3面「きょうのことば」参照) 三菱東京UFJ銀は期間10年の個人向け社債1600億円の募集に入った。返済の優先順位が低い代わりに金利がやや高い劣後債で、最初の5年間は利率が年1・11%。個人投資家の需要は旺盛で、発行額を当初予定の1500億円から増やした。 150億円の3年債を発行する小田急も、利率は年0・38%と大手銀行の定期預金金利などに比べて高い。低金利で運用難が続くなか、社債は個人投資家にとって相対的に有利な金融商品と位置付けられている。 2006年に初めて発行された個人向け5年物国債が今年だけで4兆円の償還を迎え、投資マネーの受け皿として注目されている面もある。丸紅は個人資金の取り込みを狙い、300億円の5年債を発行する。 震災以降、国内社債市場では主力銘柄である東京電力債が急落し、一時は新規の起債が全面停止するなど混乱に見舞われた。ここにきて、投資家の根強い購入意欲を背景に発行市場の機能回復が鮮明だ。個人向けでは野村ホールディングスなど金融機関が先行して起債し、事業会社にもその流れが広がっている。 日本企業の手元資金は高水準だが「多様な資金調達手段を確保するため、個人向け社債を重視する企業は今後も増えそう」(大和証券キャピタル・マーケッツ)という指摘もある。 |
2011年7月15日金曜日
不登校に歯止め、別室登校、足がかりに――教室入らず個別指導・自習
学校に行っても所属する教室で授業を受けず、相談室や保健室で過ごす「別室登校」の子供たちへの支援を各地の教育委員会が本格化させている。専用教室を設けて学習支援員を配置したり、対応法をまとめた冊子を配布したり。不登校の児童生徒数が高止まりを続ける中、学校離れを防ぎクラスに復帰する足がかりとして、別室でのケアを重視する動きが広がっている。
4日午前、山形県天童市の市立第四中学校で、理科の男性教員が顕微鏡を使った植物細胞の観察方法を教えていた。生徒は2年の女子(13)1人。「倍率を上げてみよう。何が見える?」「緑色の粒がいっぱい」。2人しかいない教室で、丁寧な指導が続いた。
同校は「マルチルーム」と呼ぶ別室登校の生徒専用の教室を設け、教員免許を持つ「別室登校学習支援員」を配置。時間割を作り他の教員と手分けして授業をするほか、担任も交えて生徒の様子を話し合う連絡会を毎日行う。現在は8人が在籍し、本来のクラスへの復帰を目指す。
人と接するのが苦手で不登校になり、2年生になって同ルームに通い始めた女子生徒は「勉強で分からないところを先生に一つ一つ聞けるのがよい。クラスに戻った時に皆に追いつけるようにしたい」。
星淳一校長は「以前は担任教師らが授業の空き時間に別室を訪れる程度で、自習が中心だった。きちんと指導する態勢があることで生徒の勉強への意欲も高まっている」と話す。
7割の生徒に効果
こうした支援策は2年前、県教委が始めた。県内中学校のほぼ5分の1の20校に支援員を配置し、教員やスクールカウンセラーらと連携して学習指導を行う。2009年の調査では別室登校をしていた生徒422人のうち306人が半年後にクラスに戻るなどの成果が確認できたという。
不登校などの実態に詳しい京都教育大の本間友巳教授(臨床心理学)によると、別室登校が広がり始めたのは1990年代末ごろ。文部科学省が不登校対策でスクールカウンセラーの増員、校内相談室の整備などを促した結果、「従来は不登校になっていた子が別室で過ごすケースが増えた」。
それでも人手不足の学校現場できめ細かい指導は難しく、自習させるだけなど対応は進まなかった。文科省も別室登校は「定義が難しい」として全国的な実態調査を行っていない。
しかし小中学校の不登校者数は毎年10万人を超え、各地の教委は対策に本腰を入れざるを得ない状況に。その中で不登校になりそうな子の受け皿になり、クラス復帰を目指す子が学校生活に慣れる場にもなる別室に改めて注目が集まった。
教委がガイド配布
新潟市教委は昨年、別室登校をする子供への対応方法をまとめたガイドブックを作って小中学校に配布。教員からの「別室登校の子の支援態勢をどう構築すればいいか分からない」「教職員で対応方法を打ち合わせる時間が取れない」といった声に応えた。
1人になりたい子が安心できるよう、別室内に間仕切りをしたスペースを用意することや、プリント類や学級便りを別室登校の子にも届けてクラスの一員という意識を持たせるなど、配慮すべき点を紹介。別室登校になりそうな時からクラスに復帰し始めた時までを6段階に分け、具体的な対応方法も示した。
別室登校の実態を把握し、効果的な対策を見つけようとする試みも始まった。京都府教委は昨年、京都市立を除く府内の全公立小中343校を調査。小学校の26%、中学校の78%に別室登校の子がいることが判明した。中学生では別室で教員が個別に学習指導にあたる場合の方が自習のみの場合よりも元のクラスに復帰しやすい傾向も分かった。
調査の中心になった府総合教育センターの山本岳教育相談部長は「別室登校を解消できたケースでは教職員が子供と信頼関係を築けていることが多い。別室で過ごす子供をそのままにせず、きちんと向き合う大切さを実感した」と話す。今年度は別室登校する子供やその保護者にもアンケートし、有効策を探るという。
4日午前、山形県天童市の市立第四中学校で、理科の男性教員が顕微鏡を使った植物細胞の観察方法を教えていた。生徒は2年の女子(13)1人。「倍率を上げてみよう。何が見える?」「緑色の粒がいっぱい」。2人しかいない教室で、丁寧な指導が続いた。
同校は「マルチルーム」と呼ぶ別室登校の生徒専用の教室を設け、教員免許を持つ「別室登校学習支援員」を配置。時間割を作り他の教員と手分けして授業をするほか、担任も交えて生徒の様子を話し合う連絡会を毎日行う。現在は8人が在籍し、本来のクラスへの復帰を目指す。
人と接するのが苦手で不登校になり、2年生になって同ルームに通い始めた女子生徒は「勉強で分からないところを先生に一つ一つ聞けるのがよい。クラスに戻った時に皆に追いつけるようにしたい」。
星淳一校長は「以前は担任教師らが授業の空き時間に別室を訪れる程度で、自習が中心だった。きちんと指導する態勢があることで生徒の勉強への意欲も高まっている」と話す。
7割の生徒に効果
こうした支援策は2年前、県教委が始めた。県内中学校のほぼ5分の1の20校に支援員を配置し、教員やスクールカウンセラーらと連携して学習指導を行う。2009年の調査では別室登校をしていた生徒422人のうち306人が半年後にクラスに戻るなどの成果が確認できたという。
不登校などの実態に詳しい京都教育大の本間友巳教授(臨床心理学)によると、別室登校が広がり始めたのは1990年代末ごろ。文部科学省が不登校対策でスクールカウンセラーの増員、校内相談室の整備などを促した結果、「従来は不登校になっていた子が別室で過ごすケースが増えた」。
それでも人手不足の学校現場できめ細かい指導は難しく、自習させるだけなど対応は進まなかった。文科省も別室登校は「定義が難しい」として全国的な実態調査を行っていない。
しかし小中学校の不登校者数は毎年10万人を超え、各地の教委は対策に本腰を入れざるを得ない状況に。その中で不登校になりそうな子の受け皿になり、クラス復帰を目指す子が学校生活に慣れる場にもなる別室に改めて注目が集まった。
教委がガイド配布
新潟市教委は昨年、別室登校をする子供への対応方法をまとめたガイドブックを作って小中学校に配布。教員からの「別室登校の子の支援態勢をどう構築すればいいか分からない」「教職員で対応方法を打ち合わせる時間が取れない」といった声に応えた。
1人になりたい子が安心できるよう、別室内に間仕切りをしたスペースを用意することや、プリント類や学級便りを別室登校の子にも届けてクラスの一員という意識を持たせるなど、配慮すべき点を紹介。別室登校になりそうな時からクラスに復帰し始めた時までを6段階に分け、具体的な対応方法も示した。
別室登校の実態を把握し、効果的な対策を見つけようとする試みも始まった。京都府教委は昨年、京都市立を除く府内の全公立小中343校を調査。小学校の26%、中学校の78%に別室登校の子がいることが判明した。中学生では別室で教員が個別に学習指導にあたる場合の方が自習のみの場合よりも元のクラスに復帰しやすい傾向も分かった。
調査の中心になった府総合教育センターの山本岳教育相談部長は「別室登校を解消できたケースでは教職員が子供と信頼関係を築けていることが多い。別室で過ごす子供をそのままにせず、きちんと向き合う大切さを実感した」と話す。今年度は別室登校する子供やその保護者にもアンケートし、有効策を探るという。
介護保険うまく活用
これまで介護は家族中心で行うものだと考えられていた。しかし、最近になって介護する家族の高齢化、介護期間の長期化やそれに伴う費用の増加などによって、家族だけで介護をすることが困難になってきた。このような状況の下に、公平で効率的な社会全体での介護支援の取り組みが始まった。これが2000年から国の制度として始まった介護保険なのだ。
在宅における介護の仕事は24時間態勢で、年中無休だ。介護に疲れ果てて鬱になったり、病に倒れたりすれば、介護自体が不可能になり、介護される方も不幸になる。介護のプロに任せられるところは任せ、介護する方の負担を少しでも軽減するために公的に作られたのが介護保険サービスだ。
要介護状態にならないよう予防するために、見守りや手助けなどの何らかの支援をするのが「要支援」。身の回りの世話などの日常生活の部分的な介護が必要になったのが「要介護」といわれる。この制度のおかげで、介護の必要な人が身近に生じても、介護の専門家によって助けてもらえる。この制度をうまく利用し、介護を独りで抱え込まないことが必要だ。
在宅における介護の仕事は24時間態勢で、年中無休だ。介護に疲れ果てて鬱になったり、病に倒れたりすれば、介護自体が不可能になり、介護される方も不幸になる。介護のプロに任せられるところは任せ、介護する方の負担を少しでも軽減するために公的に作られたのが介護保険サービスだ。
要介護状態にならないよう予防するために、見守りや手助けなどの何らかの支援をするのが「要支援」。身の回りの世話などの日常生活の部分的な介護が必要になったのが「要介護」といわれる。この制度のおかげで、介護の必要な人が身近に生じても、介護の専門家によって助けてもらえる。この制度をうまく利用し、介護を独りで抱え込まないことが必要だ。
男性更年期心・体・性に症状――「うつ」と区別難しく、生活習慣見直しを
心 やる気なく疲れる
体 寒いときでも発汗
性 機能に衰え感じる
やる気がなく、とにかく疲れる。性機能にも衰えを感じる。このような症状を伴う男性で、更年期障害を疑う人は多いのではないだろうか。50代を中心に起こる疾病で男性ホルモンを注射すれば半分の症例は治るが、軽度のうつとの見分けは専門家でも難しい。生活習慣の見直しを、まず心がける必要がある。
大阪市在住の50代の会社員、Kさんは1年前に部署を異動。まじめな性格で仕事に一生懸命取り組んできたが、最近、やる気が出ず出社がおっくうになった。寒いときでも汗をかく。勃起も弱くなってきた。見かねた妻が男性更年期の専門医を調べ、診察に連れていった。
まじめな人に多い
男性更年期障害の症状は心と体、性機能にまたがって起こる。意欲の低下や疲労感、睡眠障害、筋力の低下や冬場でも盛んな発汗。それに勃起の減退などが主な症状だ。
原因はまず加齢。50代を中心に40~60代で見られる疾病で、加齢により男性ホルモン「テストステロン」の分泌が減ることで起こる。ストレスの要因も大きく、脳が男性ホルモンを出さないように作用する。そのため、まじめ、神経質な人に多いともいわれる。
診断方法は主に2つ。一つはチェックシートだ。「ひどい発汗」「不安感」「性的能力の衰え」など17項目のアンケートについて該当する程度を回答してもらい、重症度を調べるのが一般的だ。
もう一つが男性ホルモンの量を調べる血液検査。数値が低ければ男性更年期障害の疑いがある。日本泌尿器科学会などの定めたガイドラインの数値をもとに見極めて、治療することになる。
一般的な治療はホルモン補充療法。男性ホルモンを2~4週ごとに注射する治療を半年続ける場合が多い。3カ月ほどで症状が改善することもある。数値があまり低くない場合には漢方薬の処方や生活改善で対応する場合もある。勃起不全(ED)のときは並行して治療する場合もある。
ただホルモン補充療法には副作用もあるので注意。前立腺がんの患者では男性ホルモンが悪影響する可能性があるので補充療法はできない。そのため治療前には前立腺がんの検査を先にする。また、赤血球が増加する多血症や前立腺肥大などが起こる場合もある。
ホルモン補充療法で治る比率は5~7割といわれる。関西医科大学の松田公志教授は「治らない患者の中には軽度のうつの疑いのある人がいる」と指摘する。病院によっては受診した患者の約3割はうつ病というケースもある。
軽度のうつの患者もチェックシートで診断すると高スコアがでやすい。チェックシートで疑いがある患者を血液検査すると、男性ホルモンの値が疾病の対象となる患者は約3分の1にすぎないという報告もある。
大阪市立大学医学部の鞍作克之講師は「軽度のうつと男性更年期との区別は専門家でも難しい」と話す。うつと男性更年期を併発している場合もある。治療現場では血液検査の結果をもとに判断し、男性ホルモンの量が少ない場合は患者と相談して補充療法の治療をすることもある。
心理的影響大きく
男性更年期外来などの専門医をそろえる病院もあるが、数が限られる。うつ症状など心理的な要因が強い場合は、心療内科や精神科などを受診して様子をみてから専門医を受診するといいようだ。
再発する場合もまれにある。補充療法をいったんやめ、その3カ月後に状態を調べた調査では、男性ホルモンの量は減っても症状があまり悪化しない場合が多いという報告もある。
補充療法は一時的なもので、長く続けると男性ホルモンを分泌するもともとの機能が低下するリスクを指摘する声もある。分泌が低下する要因のストレスを取り除く生活改善が重要だ。
海外の研究報告では偽薬を注射した場合も、男性ホルモンを注射したときに匹敵するほどの症状の改善がみられた。「プラセボ効果」と呼ばれるもので、心理面の影響が大きいという指摘は多い。
20~30代で男性ホルモンの量が少ないときは別の病気の可能性がある。脳の下垂体から男性ホルモンを出す指令をする機能が低下する疾病などが考えられる。大阪大学の辻村晃准教授は「20~30代で量が少ないときはきちんとした検査を受けてほしい」と指摘する。
生活習慣の改善には家族の協力も必要だ。多くの患者は妻に付き添われて専門医を訪れる。関西医科大学の松田教授は「余暇を大事にして、年をとった自分にあった生活を考えてほしい」と話す。
体 寒いときでも発汗
性 機能に衰え感じる
やる気がなく、とにかく疲れる。性機能にも衰えを感じる。このような症状を伴う男性で、更年期障害を疑う人は多いのではないだろうか。50代を中心に起こる疾病で男性ホルモンを注射すれば半分の症例は治るが、軽度のうつとの見分けは専門家でも難しい。生活習慣の見直しを、まず心がける必要がある。
大阪市在住の50代の会社員、Kさんは1年前に部署を異動。まじめな性格で仕事に一生懸命取り組んできたが、最近、やる気が出ず出社がおっくうになった。寒いときでも汗をかく。勃起も弱くなってきた。見かねた妻が男性更年期の専門医を調べ、診察に連れていった。
まじめな人に多い
男性更年期障害の症状は心と体、性機能にまたがって起こる。意欲の低下や疲労感、睡眠障害、筋力の低下や冬場でも盛んな発汗。それに勃起の減退などが主な症状だ。
原因はまず加齢。50代を中心に40~60代で見られる疾病で、加齢により男性ホルモン「テストステロン」の分泌が減ることで起こる。ストレスの要因も大きく、脳が男性ホルモンを出さないように作用する。そのため、まじめ、神経質な人に多いともいわれる。
診断方法は主に2つ。一つはチェックシートだ。「ひどい発汗」「不安感」「性的能力の衰え」など17項目のアンケートについて該当する程度を回答してもらい、重症度を調べるのが一般的だ。
もう一つが男性ホルモンの量を調べる血液検査。数値が低ければ男性更年期障害の疑いがある。日本泌尿器科学会などの定めたガイドラインの数値をもとに見極めて、治療することになる。
一般的な治療はホルモン補充療法。男性ホルモンを2~4週ごとに注射する治療を半年続ける場合が多い。3カ月ほどで症状が改善することもある。数値があまり低くない場合には漢方薬の処方や生活改善で対応する場合もある。勃起不全(ED)のときは並行して治療する場合もある。
ただホルモン補充療法には副作用もあるので注意。前立腺がんの患者では男性ホルモンが悪影響する可能性があるので補充療法はできない。そのため治療前には前立腺がんの検査を先にする。また、赤血球が増加する多血症や前立腺肥大などが起こる場合もある。
ホルモン補充療法で治る比率は5~7割といわれる。関西医科大学の松田公志教授は「治らない患者の中には軽度のうつの疑いのある人がいる」と指摘する。病院によっては受診した患者の約3割はうつ病というケースもある。
軽度のうつの患者もチェックシートで診断すると高スコアがでやすい。チェックシートで疑いがある患者を血液検査すると、男性ホルモンの値が疾病の対象となる患者は約3分の1にすぎないという報告もある。
大阪市立大学医学部の鞍作克之講師は「軽度のうつと男性更年期との区別は専門家でも難しい」と話す。うつと男性更年期を併発している場合もある。治療現場では血液検査の結果をもとに判断し、男性ホルモンの量が少ない場合は患者と相談して補充療法の治療をすることもある。
心理的影響大きく
男性更年期外来などの専門医をそろえる病院もあるが、数が限られる。うつ症状など心理的な要因が強い場合は、心療内科や精神科などを受診して様子をみてから専門医を受診するといいようだ。
再発する場合もまれにある。補充療法をいったんやめ、その3カ月後に状態を調べた調査では、男性ホルモンの量は減っても症状があまり悪化しない場合が多いという報告もある。
補充療法は一時的なもので、長く続けると男性ホルモンを分泌するもともとの機能が低下するリスクを指摘する声もある。分泌が低下する要因のストレスを取り除く生活改善が重要だ。
海外の研究報告では偽薬を注射した場合も、男性ホルモンを注射したときに匹敵するほどの症状の改善がみられた。「プラセボ効果」と呼ばれるもので、心理面の影響が大きいという指摘は多い。
20~30代で男性ホルモンの量が少ないときは別の病気の可能性がある。脳の下垂体から男性ホルモンを出す指令をする機能が低下する疾病などが考えられる。大阪大学の辻村晃准教授は「20~30代で量が少ないときはきちんとした検査を受けてほしい」と指摘する。
生活習慣の改善には家族の協力も必要だ。多くの患者は妻に付き添われて専門医を訪れる。関西医科大学の松田教授は「余暇を大事にして、年をとった自分にあった生活を考えてほしい」と話す。
国債への資金逃避加速、欧米経済の先行き不安視
投資家が安全資産とされる国債に資金を移す動きが加速している。14日の債券市場では幅広い年限の国債が買われ、利回りは軒並み低下(価格は上昇)。米景気の先行き不透明感と欧州財政不安に、円高による国内景気の悪化懸念が加わり、国債が買われやすい状況になっている。市場では当面は金利は低下しやすいとの見方が増えている。
▼…財務省が14日実施した新発5年物国債の入札について、市場は「順調な結果」と受け止めている。応札額を落札額で割った応札倍率は3・52倍と前回(6月、3・21倍)を上回った。世界経済の減速懸念などを背景に、投資家は積極的に応札したようだ。
流通市場でも国債は買われ、5年債利回りは0・370%、長期金利の指標となる10年債は1・070%とそれぞれ約8カ月ぶりの低水準を記録。20年債利回りも約8カ月ぶり、30年債も約7カ月ぶりの低水準だった。
▼…米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長は13日、米雇用情勢は「危機的」などと述べ、米景気への厳しい見方を示した。追加緩和の可能性にも言及。「当面の市場のテーマは米景気になった。投資家は米景気の動向を見ながら行動する」(みずほ証券の三浦哲也チーフマーケットアナリスト)
欧州の財政不安も依然として根強い。投資家はギリシャやイタリア、スペインの国債を売却。欧州で安全とされるドイツ国債に加え、日米国債がマネーの退避先になっている。投資家はリスク回避姿勢を強め、相対的に安全な国の債券に資金を移しているようだ。
▼…国内経済だけをみれば、東日本大震災から復興が本格化し、景気回復期待から金利は上昇しやすい。部品などのサプライチェーン(供給網)は徐々に復旧し、生産の回復を示す指標が相次いでいる。それでも「海外と国内の要因を比べると、海外の先行き不安の方が金利に与える影響は大きい」(バークレイズ・キャピタル証券の森田長太郎チーフストラテジスト)という。
政治の混乱で、復興の本格費用となる2011年度第3次補正予算の編成は不透明。市場では補正予算に伴う国債の増発は11月以降との見方が多く「財政悪化が意識されるのは9月ごろ」(SMBC日興証券の野村真司チーフ債券ストラテジスト)という。足元の円高も景気回復の足を引っ張るとみられ、金利低下局面が当面続きそうだ。
▼…財務省が14日実施した新発5年物国債の入札について、市場は「順調な結果」と受け止めている。応札額を落札額で割った応札倍率は3・52倍と前回(6月、3・21倍)を上回った。世界経済の減速懸念などを背景に、投資家は積極的に応札したようだ。
流通市場でも国債は買われ、5年債利回りは0・370%、長期金利の指標となる10年債は1・070%とそれぞれ約8カ月ぶりの低水準を記録。20年債利回りも約8カ月ぶり、30年債も約7カ月ぶりの低水準だった。
▼…米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長は13日、米雇用情勢は「危機的」などと述べ、米景気への厳しい見方を示した。追加緩和の可能性にも言及。「当面の市場のテーマは米景気になった。投資家は米景気の動向を見ながら行動する」(みずほ証券の三浦哲也チーフマーケットアナリスト)
欧州の財政不安も依然として根強い。投資家はギリシャやイタリア、スペインの国債を売却。欧州で安全とされるドイツ国債に加え、日米国債がマネーの退避先になっている。投資家はリスク回避姿勢を強め、相対的に安全な国の債券に資金を移しているようだ。
▼…国内経済だけをみれば、東日本大震災から復興が本格化し、景気回復期待から金利は上昇しやすい。部品などのサプライチェーン(供給網)は徐々に復旧し、生産の回復を示す指標が相次いでいる。それでも「海外と国内の要因を比べると、海外の先行き不安の方が金利に与える影響は大きい」(バークレイズ・キャピタル証券の森田長太郎チーフストラテジスト)という。
政治の混乱で、復興の本格費用となる2011年度第3次補正予算の編成は不透明。市場では補正予算に伴う国債の増発は11月以降との見方が多く「財政悪化が意識されるのは9月ごろ」(SMBC日興証券の野村真司チーフ債券ストラテジスト)という。足元の円高も景気回復の足を引っ張るとみられ、金利低下局面が当面続きそうだ。
全銀協が第三者機関、個人版私的整理、きょう指針発表―被災者の債務免除。
東日本大震災で被災した個人が抱えている債務を軽減するための「私的整理指針」で、債務免除の是非などを判断する第三者機関の全容が判明した。全国銀行協会が出資して東京に運営委員会本部を設立。被災地の各県には支部を置き、あらかじめ登録した弁護士や税理士などがチームを組んで債務整理の支援を手掛ける。政府や金融界などは15日に指針を策定し発表する。
個人向けの私的整理指針は、被災者を自己破産など法的整理に追い込まずに債務免除などを実施する仕組み。震災の影響ですでにある債務の返済ができない直接的、間接的な被災者が対象になる。同指針では債務者が返済困難かどうかや、債務免除の是非を中立的な第三者機関が判断することになっている。
全銀協がつくる運営委本部のメンバーには、有識者や弁護士、金融機関などの代表者が就任。被災地の支部に対し、指針の解釈や運用上の助言・指導などをして基準がバラバラにならないようにする。支部には弁護士会や公認会計士協会、税理士会などが専門家を派遣。案件に応じてチームを組み債務整理を支援する。
個人向けの私的整理指針は、被災者を自己破産など法的整理に追い込まずに債務免除などを実施する仕組み。震災の影響ですでにある債務の返済ができない直接的、間接的な被災者が対象になる。同指針では債務者が返済困難かどうかや、債務免除の是非を中立的な第三者機関が判断することになっている。
全銀協がつくる運営委本部のメンバーには、有識者や弁護士、金融機関などの代表者が就任。被災地の支部に対し、指針の解釈や運用上の助言・指導などをして基準がバラバラにならないようにする。支部には弁護士会や公認会計士協会、税理士会などが専門家を派遣。案件に応じてチームを組み債務整理を支援する。
介護給付費の格差1.6倍に、09年度、徳島28万円が最多。
65歳以上の高齢者の1人あたり介護給付費で、都道府県の間に最大1・6倍の開きがあることが厚生労働省の調査で分かった。2009年度、最高の徳島県は28万1300円だったのに対し、最低の埼玉県は17万4100円にとどまった。介護施設の利用が多い地域ほど介護給付費がかさむ傾向があり、保険料の上昇を抑制するためには、在宅や地域での介護の充実を図る必要がある。 09年度の1人あたり介護給付費の全国平均は22万5000円。18万円以下の埼玉県や千葉県は、65歳以上の人口に対して介護を必要とする認定を受けた人の割合が13%前後と全国平均(約16%)に比べ低かったほか、在宅サービスの割合も平均の50・7%を上回った。 一方、徳島県は在宅サービスが42%にとどまり、施設サービスの割合が約46%と平均(40・6%)に比べて高い。長崎県は要介護者の割合が21%弱と全国で最も高かったが、地域密着型のサービスが15%台と平均(8・7%)を大幅に上回り、施設サービスの割合を38%弱に抑えたことなどから、1人あたり給付費は沖縄県や鳥取県に比べて低かった。 |
電力不足対策で工程表原案、家庭・企業の省エネ頼み―制度改革が不可欠。
政府が検討している電力不足対策の工程表は、短期と中長期の二段構えで対策を進めるシナリオを描いた。当面は家庭や企業の省エネを支援して電力不足をしのぎ、来夏をメドに電力の料金体系の見直しや発電事業の競争環境の整備といった大がかりな制度改革に取り組む戦略だ。
工程表は、原子力発電所の再稼働が難しい場合を想定。火力発電所の能力増強をまず打ち出した。目先の対策の目玉となるのは家電エコポイントの復活や、省エネ機器をリースで導入する企業・家庭への補助制度。機器自体の電力需要量を落とすのが目的だ。
無線通信で消費電力を常時把握できるスマートメーターや、余った電気を蓄える蓄電池の設置もピーク時の電力需要の分散が狙いだ。
こうした「準備」を踏まえて、ピーク時の電力料金の引き上げや節電した分の料金を割り引く料金体系の抜本見直しなどを実施すれば、企業や家庭が自ら蓄えた電気を使ったり、ピーク時の電力使用を節約したりする動きにつながる。
だが料金体系の見直しなどが頓挫すると、当面の電力不足対策は家庭・企業への省エネの押しつけだけに終わる。
工程表は菅直人首相が期待する企業の自家発電などの供給力には触れていない。供給側の対策が伴うことで電力需給対策は完結するが、いまのところは火力発電の増強への期待にとどまっている。
中長期的にカギを握るのは風力や太陽光など再生可能エネルギーの普及。そのためには、規模の小さい電力事業者や自家発電をする事業者のビジネスが成り立つ仕組みが必要になる。
国会で14日に関連法案が審議入りした再生可能エネルギーの全量固定価格買い取り制度の導入はその一環。工程表は、電力を取引する卸電力取引所から既存の電力会社が一定量を購入する取引所の活性化策も掲げた。
ただ電力会社の発電部門と送電部門を分ける「発送電分離」は明記されず、「送配電利用についての中立性・公平性の確保」との表現にとどまった。発送電分離には発電事業者の新規参入を促す効果があるとされるが、電力会社の抵抗は強い。いまの工程表では、新規事業者が送配電設備を借りる場合の料金の見直しなど、各論の改革にとどまる可能性もある。
工程表は、原子力発電所の再稼働が難しい場合を想定。火力発電所の能力増強をまず打ち出した。目先の対策の目玉となるのは家電エコポイントの復活や、省エネ機器をリースで導入する企業・家庭への補助制度。機器自体の電力需要量を落とすのが目的だ。
無線通信で消費電力を常時把握できるスマートメーターや、余った電気を蓄える蓄電池の設置もピーク時の電力需要の分散が狙いだ。
こうした「準備」を踏まえて、ピーク時の電力料金の引き上げや節電した分の料金を割り引く料金体系の抜本見直しなどを実施すれば、企業や家庭が自ら蓄えた電気を使ったり、ピーク時の電力使用を節約したりする動きにつながる。
だが料金体系の見直しなどが頓挫すると、当面の電力不足対策は家庭・企業への省エネの押しつけだけに終わる。
工程表は菅直人首相が期待する企業の自家発電などの供給力には触れていない。供給側の対策が伴うことで電力需給対策は完結するが、いまのところは火力発電の増強への期待にとどまっている。
中長期的にカギを握るのは風力や太陽光など再生可能エネルギーの普及。そのためには、規模の小さい電力事業者や自家発電をする事業者のビジネスが成り立つ仕組みが必要になる。
国会で14日に関連法案が審議入りした再生可能エネルギーの全量固定価格買い取り制度の導入はその一環。工程表は、電力を取引する卸電力取引所から既存の電力会社が一定量を購入する取引所の活性化策も掲げた。
ただ電力会社の発電部門と送電部門を分ける「発送電分離」は明記されず、「送配電利用についての中立性・公平性の確保」との表現にとどまった。発送電分離には発電事業者の新規参入を促す効果があるとされるが、電力会社の抵抗は強い。いまの工程表では、新規事業者が送配電設備を借りる場合の料金の見直しなど、各論の改革にとどまる可能性もある。
犯罪被害者の子どもの奨学金に、振り込め詐欺の被害金で金融庁。
金融庁は14日、被害者から申請がないため返金できずにいる振り込め詐欺の被害金を犯罪被害者の子どもへの奨学金に活用すると発表した。振り込め詐欺に限定せず幅広く被害者の高校生から大学院生までを対象に無利息で奨学金を貸与。犯罪被害者の支援団体への助成にも使う。一般から意見や担い手を募集する。
被害者から申請がないために預金保険機構に納付されている振り込め詐欺の被害金は約45億円。金融庁は内閣府と財務省の各政務官でプロジェクトチームを作り、昨秋からこの資金の具体的な使い道を検討してきた。奨学金は年間200~300人程度の申請を想定している。
被害者から申請がないために預金保険機構に納付されている振り込め詐欺の被害金は約45億円。金融庁は内閣府と財務省の各政務官でプロジェクトチームを作り、昨秋からこの資金の具体的な使い道を検討してきた。奨学金は年間200~300人程度の申請を想定している。
再生エネ法案―買い取り価格焦点、法案審議入り、与野党、総論は賛成。
14日に審議入りした再生エネルギー特別措置法案について、与野党とも総論は賛成で一致している。民主党執行部は菅直人首相の退陣を促すため、8月前半までの成立を目指す。ただ全国一律の買い取り価格や、その期間を巡っては「国民生活や経済への影響が大きい」との慎重意見も野党には根強く、修正協議の焦点となる。 自民党の近藤三津枝氏は14日の衆院本会議で「全国一律の買い取り価格では、日照時間の短い被災地の東北、北海道には不利な政策だ」と質問。買い取り費用が電気料金に転嫁される仕組みは、地域による不公平感が生まれるとの指摘だ。 自民党は買い取り価格や決定の仕組みについて、修正を求める方針だ。昨年参院選の公約には自然エネルギー促進や固定価格買い取り制度の導入を盛り込んでおり、党幹部は「法案自体には反対はできない」との見方を示す。 公明党も再生可能エネルギー電力の全量固定価格買い取り制度の導入を掲げており、修正協議では料金引き上げの影響が大きい産業への配慮などを求める。みんなの党は新規参入企業への税制優遇措置や、発送電分離に関する規定の盛り込みを提唱し、共産党は電力料金への転嫁を抑えるよう主張する。 一方で社民党の福島瑞穂党首は「首相は全力投球で脱原発、自然エネルギー促進で頑張ってほしい」と早期成立を後押しする。首相周辺では自公両党が退陣に絡んで強硬姿勢に出た場合は「社民党、共産党と組んで法案を成立させる」との声も出ている。 |
ドル・ユーロ安加速、米欧政治に市場が不信、世界経済にも影。
米国と欧州でほぼ同時に政治の停滞感が濃くなり、市場の不信が増幅している。目の前に財政や金融の緊急課題が控えているにもかかわらず、必要な意思決定が遅れ、ドルやユーロが売り込まれる構図だ。政策の決定力を弱めた米欧は世界経済の成長にも影を落とす。
「もう我慢の限界だ。大統領を辞めることになっても、これ以上の譲歩はできない」
オバマ米大統領は13日、財政赤字の削減幅などを巡り強硬な姿勢を続ける野党の共和党に不満を爆発させた。ロイター通信などが同党関係者の話として伝えた。
ホワイトハウスでの大統領と与野党の指導部の協議は先週末から休みなしで続く。「業を煮やした大統領が突然席を立った」「共和党の幹部に無礼な振る舞いがあった」など、メディアを通じて共和党と政権・民主党は中傷合戦を展開する。
着地点が見えないのは連邦債務の法定上限の引き上げだ。8月初めまでに与野党が合意できなければ米国はデフォルト(債務不履行)に陥り、国債の信用が失墜しかねない。政府は資金調達の道が絶たれ、年金の支払いや軍人の恩給が止まると詰め寄る。共和党は「大統領の増税の主張が合意の妨げ」(ベイナー下院議長)と譲らない。
早期の打開を促す声は増す。米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長は13日の議会証言で、米国債の信頼が揺らぐと「国際金融システム全体に衝撃が走る」と警告した。米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは同日、財政再建を巡る協議の不調を踏まえて米国債の格付けを引き下げ方向で見直すと発表した。
欧州財政危機
単一通貨ユーロを使う欧州は、各国が世論の受けを意識してまとまらない。市場に結束力のなさを見透かされ、債務危機のギリシャからイタリアやスペインにも不安は拡大。国債が大量に売られる局面が続く。
典型的な争点はギリシャへの追加金融支援についてドイツやオランダが唱える「民間金融機関の関与」だ。ドイツなどの「支援側」は、ギリシャ国債を持つ金融機関も痛みを負わなければ納税者が納得しないとの立場を保つ。一方、欧州中央銀行(ECB)などは民間に負担を強いれば、ギリシャ国債がデフォルト扱いとなり市場の混乱が加速すると反発する。
間を取る形でフランスの民間銀行が償還期間の長い国債に再投資する案を示したが、格付け会社は投資家への不利益を認めてデフォルトが避けられないとの判断だ。解が見えない方程式を前にユーロ圏や欧州連合(EU)の財務相は11、12日の協議でも結論を出せなかった。欧州発の金融危機がささやかれても、まさに小田原評定の状態だ。
トリシェECB総裁は「国際的なドクトリン(原則)から逸脱したら金融安定の土台が弱くなる」と政治の「暴走」に強い懸念を発してきた。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、ユーロの救済には余裕のあるドイツの負担増など大胆な行動が必要と説く。
ファンロンパイEU大統領が15日に緊急EU首脳会議を招集するとの噂も広がったが、結論を出せないのが明白なためか開催は不透明なまま。市場の警戒感をよそに、政治家は内向きのポピュリズム(大衆迎合)に傾くばかりで欧州全体の意思が見えてこない。
「もう我慢の限界だ。大統領を辞めることになっても、これ以上の譲歩はできない」
オバマ米大統領は13日、財政赤字の削減幅などを巡り強硬な姿勢を続ける野党の共和党に不満を爆発させた。ロイター通信などが同党関係者の話として伝えた。
ホワイトハウスでの大統領と与野党の指導部の協議は先週末から休みなしで続く。「業を煮やした大統領が突然席を立った」「共和党の幹部に無礼な振る舞いがあった」など、メディアを通じて共和党と政権・民主党は中傷合戦を展開する。
着地点が見えないのは連邦債務の法定上限の引き上げだ。8月初めまでに与野党が合意できなければ米国はデフォルト(債務不履行)に陥り、国債の信用が失墜しかねない。政府は資金調達の道が絶たれ、年金の支払いや軍人の恩給が止まると詰め寄る。共和党は「大統領の増税の主張が合意の妨げ」(ベイナー下院議長)と譲らない。
早期の打開を促す声は増す。米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長は13日の議会証言で、米国債の信頼が揺らぐと「国際金融システム全体に衝撃が走る」と警告した。米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは同日、財政再建を巡る協議の不調を踏まえて米国債の格付けを引き下げ方向で見直すと発表した。
欧州財政危機
単一通貨ユーロを使う欧州は、各国が世論の受けを意識してまとまらない。市場に結束力のなさを見透かされ、債務危機のギリシャからイタリアやスペインにも不安は拡大。国債が大量に売られる局面が続く。
典型的な争点はギリシャへの追加金融支援についてドイツやオランダが唱える「民間金融機関の関与」だ。ドイツなどの「支援側」は、ギリシャ国債を持つ金融機関も痛みを負わなければ納税者が納得しないとの立場を保つ。一方、欧州中央銀行(ECB)などは民間に負担を強いれば、ギリシャ国債がデフォルト扱いとなり市場の混乱が加速すると反発する。
間を取る形でフランスの民間銀行が償還期間の長い国債に再投資する案を示したが、格付け会社は投資家への不利益を認めてデフォルトが避けられないとの判断だ。解が見えない方程式を前にユーロ圏や欧州連合(EU)の財務相は11、12日の協議でも結論を出せなかった。欧州発の金融危機がささやかれても、まさに小田原評定の状態だ。
トリシェECB総裁は「国際的なドクトリン(原則)から逸脱したら金融安定の土台が弱くなる」と政治の「暴走」に強い懸念を発してきた。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、ユーロの救済には余裕のあるドイツの負担増など大胆な行動が必要と説く。
ファンロンパイEU大統領が15日に緊急EU首脳会議を招集するとの噂も広がったが、結論を出せないのが明白なためか開催は不透明なまま。市場の警戒感をよそに、政治家は内向きのポピュリズム(大衆迎合)に傾くばかりで欧州全体の意思が見えてこない。
自動車保険、事故後の負担より高額に、損保大手が割引見直し。
東京海上日動火災保険、三井住友海上火災保険、損害保険ジャパンの大手損保3社は自動車保険の保険料について、等級別の割引制度を抜本的に見直す方針を固めた。事故を起こして保険金支払いを受けた場合、いまの制度より高い保険料負担を求めるのが柱。事故を起こした人には実質値上げとなる。来年にも導入する予定。他の損保も追随する公算が大きい。
自動車保険の等級制度は無事故の期間に応じて保険料を割り引く仕組み。20等級に分かれ、等級が上がるほど割引率が大きい。通常、最初の契約時は6等級。1年間、無事故なら1段階ずつ等級が上がり、事故を起こして保険金支払いを受けると3等級下がる。
大手3損保の新制度では、事故で3等級下がった人には通常とは別の割引制度を適用し、割引率を縮小する。たとえば17等級から14等級に下がった人では、通常なら50%程度の割引率を新制度では30~40%に縮小する。14等級で基本保険料が年10万円の場合、1万~2万円の値上げになる。3年間無事故なら、通常の割引制度に戻れる。
大手3損保は損害保険料率算出機構が保険料算定の目安となる「参考純率」を夏に公表するのに合わせ、制度の詳細を設計し、金融庁に届け出る見通し。自動車保険事業の赤字が定着しているため、割引制度の見直しが必要と判断した。
自動車保険の等級制度は無事故の期間に応じて保険料を割り引く仕組み。20等級に分かれ、等級が上がるほど割引率が大きい。通常、最初の契約時は6等級。1年間、無事故なら1段階ずつ等級が上がり、事故を起こして保険金支払いを受けると3等級下がる。
大手3損保の新制度では、事故で3等級下がった人には通常とは別の割引制度を適用し、割引率を縮小する。たとえば17等級から14等級に下がった人では、通常なら50%程度の割引率を新制度では30~40%に縮小する。14等級で基本保険料が年10万円の場合、1万~2万円の値上げになる。3年間無事故なら、通常の割引制度に戻れる。
大手3損保は損害保険料率算出機構が保険料算定の目安となる「参考純率」を夏に公表するのに合わせ、制度の詳細を設計し、金融庁に届け出る見通し。自動車保険事業の赤字が定着しているため、割引制度の見直しが必要と判断した。
大手損害保険会社が自動車保険で12年ぶりの等級制度見直しに踏み込んで実質的な値上げに動くのは、自動車保険事業が慢性的な赤字に陥っているためだ。損保各社は今年、事故率の高い高齢者ほど保険料を増やす「年齢別料率」を導入し始めた。今回の見直しは赤字脱却に向けた値上げの第2弾となる。 損保の収入(正味収入保険料)から支出(保険金)と経費を差し引いた利益率にあたる「収支残率」で見れば、自動車保険事業の厳しさはすぐわかる。大手3損保の2011年3月期の収支残比率はいずれもマイナスで、マイナス幅は3・8~7・9%と過去5年で最低に落ち込んでいる。 最大の要因はドライバーの高齢化だ。65歳以上の運転免許保有者は2010年末で1275万人。5年前に比べて4割増えた。高齢者の多くは契約が長い分、保険料の割引率が高い。その一方で高齢者の事故は増える構図が続いている。 高齢ドライバーの増加による保険事業の悪化を食い止めようと、各社は高齢者の保険料を値上げする保険料体系を導入し始めた。損害保険ジャパンは4月に導入。三井住友海上火災保険は10月、東京海上日動火災保険は来年1月に開始予定だ。 ただそれでも自動車保険事業の赤字脱却は難しい見通し。しかも年齢別の保険料体系の導入には「高齢者いじめではないか」との批判もある。このため今回は、年齢別ではなく、事故を起こした人だけを対象に値上げすることにした。 今回の見直しの議論では、割引率は今のままにしておいて、1回の事故で一気に保険料の負担を大幅に増やす案もあった。しかし現在の割引率を適用すると、一気に等級を下げることになる。仮に5等級下げる場合、12等級で基本保険料が年10万円だった人は、事故を1回起こすと年2万円の負担増になる。 大手損保は「保険料の負担感が一気に増えると保険への加入をやめる人が増えかねない」と考えた。新等級制度の導入で、事故を起こした時の保険料の上昇を緩やかにすることにした。 今回の見直しでは、1つの等級には事故を起こして上の等級から落ちてきた人と、無事故で下の等級から上がってきた人の2つの性格の契約者が存在する。従来の制度では2つの層の割引率は同じだったが、新たな等級制度では事故を起こして落ちてきた層には罰則要素の強い割引率体系を別に用意する。 |
2011年7月14日木曜日
円急伸、個人の外貨売り一因、損失確定で持ち高減らす
外国為替市場で円相場が急伸している。欧州債務不安の拡大をきっかけに市場でリスク回避姿勢が強まり、円が主要通貨に対して買われた。直前まで外貨の買い持ち高を過去最高水準に膨らませていた個人投資家が損失拡大を止めようと円を買い戻す動きが出たことも円高に拍車をかけた。ただ、震災後の円高局面に比べると損失は限定的で個人の外貨買いは衰えていないとの指摘もある。
▼…13日早朝の外国為替市場で、円相場は一時1ドル=78円台半ばと、震災後につけた過去最高値(3月17日、76円25銭)に次ぐ4カ月ぶりの高値水準を付けた。
個人投資家は市場の流れに逆らって外貨を買う「逆張り」を得意とし、直前まで外貨買いを膨らませていた。個人の動向を反映する東京金融取引所の外国為替証拠金取引「くりっく365」でみると、12日時点の米ドルやユーロなどの外貨(12通貨)の対円買い越し規模は、前日比12・6%増の約88万枚(枚は1万通貨単位)。震災直後の3月16日の86万枚を上まわり、過去最高を更新していた。こうした個人の多くが、円高により評価損を抱え、13日朝に外貨の売りを迫られた。
▼…早朝に高値が付きやすいのはFX取引特有の慣習もある。FX会社の多くは早朝に取引を一時停止し、1日の取引を集計し顧客の損益状況を計算する。この時に顧客に一定の評価損が生じた場合、強制的に取引を終了させる「ロスカット」ルールが発動され、取引再開後に反対売買が実行される。
震災後の高値時にはこの時間を狙って海外の投機筋が仕掛け的な円買いに動いた。「今回も同様の投機的な動きが出た可能性が高い」(FXプライムの柳沢浩チーフアナリスト)という。
▼…ただ、震災後の乱高下で損失を被った経験から、個人投資家は小幅の値動きでもこまめに持ち高を手じまっており、前回ほど大きな損失を受けていないとの指摘も多い。8月1日からFX取引の証拠金倍率(レバレッジ)が現行の50倍から25倍に規制されることを見越して、個人が倍率を低めに設定していたことも、円高耐久力が増したことの背景にある。
今日の円急伸の局面では「いったんは損失確定した個人が新たに外貨買いに動いている」(セントラル短資FXの伊藤雅博市場営業部長)との声もある。実際、円相場は78円台を一時付けた後は79円台前半に値を戻している。ただ一方で、「個人投資家が利益確定に動く80円前後で円の戻りが鈍くなる可能性がある」(外資系銀行)と指摘する声もあった。
▼…13日早朝の外国為替市場で、円相場は一時1ドル=78円台半ばと、震災後につけた過去最高値(3月17日、76円25銭)に次ぐ4カ月ぶりの高値水準を付けた。
個人投資家は市場の流れに逆らって外貨を買う「逆張り」を得意とし、直前まで外貨買いを膨らませていた。個人の動向を反映する東京金融取引所の外国為替証拠金取引「くりっく365」でみると、12日時点の米ドルやユーロなどの外貨(12通貨)の対円買い越し規模は、前日比12・6%増の約88万枚(枚は1万通貨単位)。震災直後の3月16日の86万枚を上まわり、過去最高を更新していた。こうした個人の多くが、円高により評価損を抱え、13日朝に外貨の売りを迫られた。
▼…早朝に高値が付きやすいのはFX取引特有の慣習もある。FX会社の多くは早朝に取引を一時停止し、1日の取引を集計し顧客の損益状況を計算する。この時に顧客に一定の評価損が生じた場合、強制的に取引を終了させる「ロスカット」ルールが発動され、取引再開後に反対売買が実行される。
震災後の高値時にはこの時間を狙って海外の投機筋が仕掛け的な円買いに動いた。「今回も同様の投機的な動きが出た可能性が高い」(FXプライムの柳沢浩チーフアナリスト)という。
▼…ただ、震災後の乱高下で損失を被った経験から、個人投資家は小幅の値動きでもこまめに持ち高を手じまっており、前回ほど大きな損失を受けていないとの指摘も多い。8月1日からFX取引の証拠金倍率(レバレッジ)が現行の50倍から25倍に規制されることを見越して、個人が倍率を低めに設定していたことも、円高耐久力が増したことの背景にある。
今日の円急伸の局面では「いったんは損失確定した個人が新たに外貨買いに動いている」(セントラル短資FXの伊藤雅博市場営業部長)との声もある。実際、円相場は78円台を一時付けた後は79円台前半に値を戻している。ただ一方で、「個人投資家が利益確定に動く80円前後で円の戻りが鈍くなる可能性がある」(外資系銀行)と指摘する声もあった。
マクドナルド、一人ひとりに異なる値引き――一律の大量販促に限界。
決済機能のついた携帯電話やポイントカードなどIT(情報技術)の進化を受け、顧客一人ひとりの購買履歴を販促に利用する企業が増えている。大手小売・サービス業はチラシやテレビCMなど不特定の顧客を対象にしたマスマーケティングで売り上げを伸ばしてきたが、ネット市場の拡大などで消費志向が多様化。一律・大量販促に限界が出てきたためだ。
ネット通販では購買履歴が容易に蓄積できるため「アマゾン」などが個別販促で先行している。オーダーメード感を強調することでリピート客がつかみやすくなる。
カルチュア・コンビニエンス・クラブが運営する「TSUTAYA」では来店客がレジで商品を購入すると、購買履歴に応じた割引クーポンを発行。例えば、DVDレンタルの経験が無い人にその無料券を渡す。ローソンとヤフーはネット通販の履歴とローソン店頭で使えるポイントカードの履歴を来春から相互に活用。例えばヤフーでワインを頻繁に買う客に、ローソンでワインに合うおつまみをクーポンで薦めるといった試みだ。
これまで大手チェーンでは個人履歴が膨大なほかコスト負担が高く、分析は進んでいなかった。ただITの進歩と利用コストの低下で膨大な顧客情報を管理できるようになり、個人対応が進んできた。
スマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)の普及など消費者の欲求に即応するスピード感のある販促は競争力を高める。店舗でも個人の購買履歴を分析したサービスがさらに広がりそうだ。
ネット通販では購買履歴が容易に蓄積できるため「アマゾン」などが個別販促で先行している。オーダーメード感を強調することでリピート客がつかみやすくなる。
カルチュア・コンビニエンス・クラブが運営する「TSUTAYA」では来店客がレジで商品を購入すると、購買履歴に応じた割引クーポンを発行。例えば、DVDレンタルの経験が無い人にその無料券を渡す。ローソンとヤフーはネット通販の履歴とローソン店頭で使えるポイントカードの履歴を来春から相互に活用。例えばヤフーでワインを頻繁に買う客に、ローソンでワインに合うおつまみをクーポンで薦めるといった試みだ。
これまで大手チェーンでは個人履歴が膨大なほかコスト負担が高く、分析は進んでいなかった。ただITの進歩と利用コストの低下で膨大な顧客情報を管理できるようになり、個人対応が進んできた。
スマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)の普及など消費者の欲求に即応するスピード感のある販促は競争力を高める。店舗でも個人の購買履歴を分析したサービスがさらに広がりそうだ。
マクドナルド、一人ひとりに異なる値引き、新型クーポン、1000万人に配信。
日本マクドナルドホールディングスは一人ひとりの顧客の購買特徴に合わせ、割引する新たな電子クーポンの配信を始めた。携帯電話サイト会員のうち1000万人の購買履歴を分析。コーヒーやハンバーガーなど割引商品の内容や送信時間が一律ではない「個人仕様」のクーポンを提供する。顧客ごとに割引内容を変えるクーポンは珍しく、外食業界の激しい価格競争に対応する。
現在の日本マクドナルドの割引クーポンは性別や居住地域といった情報を登録すると週1回程度送られてくる。携帯電話に送られてきたクーポンをレジ前の読み取り機にかざすか店員に提示して使用する。
通常のクーポンは同じ割引内容の一斉配信だが、新クーポンは会員の購買パターンに応じて、内容や配信頻度を変える。一部実験を始めており、効果を検証しながら本格運用を目指す。
例えば、週末の昼食時にコーヒーを購入する頻度が高い人には、土曜の朝にコーヒーの割引クーポンをメールで送ることが可能になる。一定期間、来店していない顧客には以前よく購入していたハンバーガーを無料などで提供するクーポンを送信し、来店を促す。販売中の新製品の購入経験がない顧客には半額のクーポンを配布し、試してもらう販促も実施する。配信頻度は顧客の来店状況によって異なる。
同社では2004年以降、計300億円をかけて顧客情報などを分析するIT(情報技術)システムを構築。来店客の購買パターンなどのデータが一定程度蓄積されたため、本格的な個人向けサービスに踏み切る。
同社の携帯電話サイトには約2000万人の会員がいるが、新クーポンは「おサイフケータイ」の機能がついた携帯電話を持っている約1000万人が対象になる。「マクドナルド」に月1回以上のペースで来店する優良顧客は約3000万人おり、3分の2は携帯電話サイトの会員になっている計算。競合の外食チェーンの会員数は数十万から数百万人で、圧倒的な会員規模を生かす。
外食業界では牛丼1杯が200円台になるなど競争は激しい。日本マクドナルドは1990年代後半から00年代初頭にハンバーガーを100円以下に引き下げるなど極端な価格政策で業績が低迷した。このため単純な価格競争から一線を画し、携帯電話を使った優良顧客向けの効率的な値下げで販売増を進める。
現在の日本マクドナルドの割引クーポンは性別や居住地域といった情報を登録すると週1回程度送られてくる。携帯電話に送られてきたクーポンをレジ前の読み取り機にかざすか店員に提示して使用する。
通常のクーポンは同じ割引内容の一斉配信だが、新クーポンは会員の購買パターンに応じて、内容や配信頻度を変える。一部実験を始めており、効果を検証しながら本格運用を目指す。
例えば、週末の昼食時にコーヒーを購入する頻度が高い人には、土曜の朝にコーヒーの割引クーポンをメールで送ることが可能になる。一定期間、来店していない顧客には以前よく購入していたハンバーガーを無料などで提供するクーポンを送信し、来店を促す。販売中の新製品の購入経験がない顧客には半額のクーポンを配布し、試してもらう販促も実施する。配信頻度は顧客の来店状況によって異なる。
同社では2004年以降、計300億円をかけて顧客情報などを分析するIT(情報技術)システムを構築。来店客の購買パターンなどのデータが一定程度蓄積されたため、本格的な個人向けサービスに踏み切る。
同社の携帯電話サイトには約2000万人の会員がいるが、新クーポンは「おサイフケータイ」の機能がついた携帯電話を持っている約1000万人が対象になる。「マクドナルド」に月1回以上のペースで来店する優良顧客は約3000万人おり、3分の2は携帯電話サイトの会員になっている計算。競合の外食チェーンの会員数は数十万から数百万人で、圧倒的な会員規模を生かす。
外食業界では牛丼1杯が200円台になるなど競争は激しい。日本マクドナルドは1990年代後半から00年代初頭にハンバーガーを100円以下に引き下げるなど極端な価格政策で業績が低迷した。このため単純な価格競争から一線を画し、携帯電話を使った優良顧客向けの効率的な値下げで販売増を進める。
ユーロの紙幣、金券店で在庫切れ。
ユーロの急落を受け、外貨両替を扱う東京都内の金券店では13日、ユーロ紙幣の在庫切れが相次いだ。ユーロの割安感が出たことで、夏休みを控えて欧州方面の旅行を計画する個人を中心に両替の動きが広がった。
都内の金券店ではユーロの買いが相次ぎ「仕入れた在庫では間に合わず、全ての注文に応えられない」(金券店の大黒屋=東京・中央)状況。同時に安くなったドルへの両替も多いという。旅行中に手軽に使えるように「十ユーロ札など小口の紙幣を求める客が多かった」(金券店のラッキーコレクション=東京・千代田)との声もある。
都内の金券店ではユーロの買いが相次ぎ「仕入れた在庫では間に合わず、全ての注文に応えられない」(金券店の大黒屋=東京・中央)状況。同時に安くなったドルへの両替も多いという。旅行中に手軽に使えるように「十ユーロ札など小口の紙幣を求める客が多かった」(金券店のラッキーコレクション=東京・千代田)との声もある。
国民年金、10年度59.3%、納付率低下止まらず――3年続き最低更新。
厚生労働省は13日、2010年度の国民年金保険料の納付率が59・3%となり、3年連続で過去最低を更新したと発表した。加入者のうち非正規労働者は08年時点でも7割が保険料を納めておらず、こうした非正規労働者の増加が納付率の低下に影響したとみられる。納付率の低下に歯止めがかからない状態で、雇用の変化に合わせた年金制度の見直しが課題に浮上している。
09年度の納付率は59・98%で、2年連続で6割を下回った。この納付率は低所得を理由に保険料納付を免除された人を除いて算出している。免除者も含めた全加入者のうち何割が実際に保険料を納めたかを示す実質納付率は、前年度比1・3ポイント低い42・1%だった。
年齢別の納付率は55~59歳が72・6%と最高。若年層ほど納付率は低くなる傾向で、最低は25~29歳の46・6%だった。若い世代では年金制度への不信から保険料を払わない人も多い。
納付率の低下は5年連続。厚労省年金局は、「非正規労働者の加入者が増えた結果、納付率が低下した」と見ている。国民年金はもともと自営業者を対象にしていたが、現在は加入者の3割弱がパートなど勤務時間が週30時間未満の非正規労働者。厚労省の08年調査では、国民年金に加入する非正規労働者で保険料を完納した人の比率は34%と、6割近い自営業者より低い。
国民年金加入者に占める自営業者の割合は22%(99年)から15%(08年)に縮小する一方、同期間に非正規労働者は16%から26%に上昇。ほぼ連動して保険料の納付率は低下した。バブル崩壊後の就職難でパートなど非正規で働く若年層が増えたことが未納増の背景にあることがうかがわれる。
これまで政府は低所得者の保険料免除などの対策を講じたが、納付率の低下に歯止めはかかっていない。6月にまとめた社会保障と税の一体改革案では、厚生年金の適用基準となる勤務時間を週30時間以上から20時間以上に緩める案を盛り込んだ。非正規労働者が厚生年金に加入すれば、年金保険料は給与天引きとなるので、納付率は上がるが、厚生年金の適用拡大は負担増となる企業が反発している。
09年度の納付率は59・98%で、2年連続で6割を下回った。この納付率は低所得を理由に保険料納付を免除された人を除いて算出している。免除者も含めた全加入者のうち何割が実際に保険料を納めたかを示す実質納付率は、前年度比1・3ポイント低い42・1%だった。
年齢別の納付率は55~59歳が72・6%と最高。若年層ほど納付率は低くなる傾向で、最低は25~29歳の46・6%だった。若い世代では年金制度への不信から保険料を払わない人も多い。
納付率の低下は5年連続。厚労省年金局は、「非正規労働者の加入者が増えた結果、納付率が低下した」と見ている。国民年金はもともと自営業者を対象にしていたが、現在は加入者の3割弱がパートなど勤務時間が週30時間未満の非正規労働者。厚労省の08年調査では、国民年金に加入する非正規労働者で保険料を完納した人の比率は34%と、6割近い自営業者より低い。
国民年金加入者に占める自営業者の割合は22%(99年)から15%(08年)に縮小する一方、同期間に非正規労働者は16%から26%に上昇。ほぼ連動して保険料の納付率は低下した。バブル崩壊後の就職難でパートなど非正規で働く若年層が増えたことが未納増の背景にあることがうかがわれる。
これまで政府は低所得者の保険料免除などの対策を講じたが、納付率の低下に歯止めはかかっていない。6月にまとめた社会保障と税の一体改革案では、厚生年金の適用基準となる勤務時間を週30時間以上から20時間以上に緩める案を盛り込んだ。非正規労働者が厚生年金に加入すれば、年金保険料は給与天引きとなるので、納付率は上がるが、厚生年金の適用拡大は負担増となる企業が反発している。
子ども手当見直し、民主、あす2案提示、所得制限を巡り自公に。
民主党は自民、公明両党との子ども手当の見直し協議を巡り、最大の焦点である所得制限を容認する方向で最終調整に入った。15日の実務者協議で所得制限に関する独自案を示す。民主案は(1)所得制限の水準を国が示したうえで、導入の是非は各市区町村が判断する(2)年収が一定水準を超える世帯には給付額を減額する――の2案。来週中の3党合意を目指す。 自公両党は子ども手当の見直しを、赤字国債発行法案成立の前提条件の一つとする立場を再び強めている。具体的には現在、中学生まで1人一律1万3千円を支給している制度を改め、所得制限などを設けるよう求めている。 民主党内では所得制限を設けることになお反対論が根強いが、玄葉光一郎政調会長は自公両党との協議に先立ち、政策調査会で党内の一任を取り付けた。3党は12日の政調会長会談で、今後の調整を実務者協議に委ねることを確認。これを受け、民主党の城島光力政調会長代理が13日、15日に子ども手当の見直し案を提示する考えを自公側に伝えた。 自公に示すのは2通りの見直し案。このうち、一つは所得制限を自治体の判断に委ねる案だ。参考にしているのが、自公政権時代に実施した「子育て応援特別手当」。同特別手当は「世帯主の所得1800万円」を下限に、自治体が所得制限の水準を自由に設定できるようにしていた。 もう一つの案は「給付減額」方式。所得制限の対象とする世帯の収入を、自公政権時代の児童手当と同じ860万円(扶養親族3人の被用者)に設定するという内容だ。860万円以上の世帯は支給額をゼロにするのではなく、減額とする。 民主党が所得制限を受け入れれば、子ども手当の修正協議が加速する可能性がある。ただ自治体に判断を委ねる案では、自治体が事務負担の増加を懸念し、所得制限の導入がほとんど進まない可能性もある。減額案も、そもそも所得制限とは趣旨が異なるため、野党の理解が得られるかは不透明だ。 |
2011年7月13日水曜日
洗濯乾燥機が置けない?――大型化に住まい追いつけず
洗濯乾燥機の内ふたを閉め、ドアをロックしスタートを押す。ドラムの回転する音が、はじまってすぐ停止した。エラー表示のパネルには、かつてない組み合わせの英数字。
取扱説明書をめくって調べるが、エラー表示とその対処法の一覧にも、見当たらない。「上記以外は、販売店に修理を依頼して下さい」。故障したか。
電力事情を考えて、洗濯は夜している。販売店には明日電話するとし、急ぎのものだけ手洗いしよう。
ロックを解除しようとして愕然。開かない。あちこち押すが、操作を受け付けないようだ。
これまた電力事情を意識し、洗濯はなるべくまとめて行うようにしている。言い替えれば、溜め込んだ汚れ物が、この中にはいっぱいだ。
前に販売店に、別の家電の修理を相談したら、メーカーに送って二週間かかると言われた。蒸し暑いこの季節、そんなに長く密封しておいたら、どうなる?
悪い想像が頭をおおいかけたとき、その店はもう撤退したことを思い出す。販売店に依頼できない場合は、メーカーのサービスセンターへと、取扱説明書にある。電話すると、中一日で点検に来てもらえた。
結論から言えば、故障ではなく、私の不注意。メーカーに送らず、その場で直った。「これがひっかかっていました」。係員の男性の手に、伸びきった黒のレギンスを目にし、赤面する。
係員によると、内ふたを閉める際レギンスが挟まり、それがストッパーになりドラムの回転を阻んでいた。原因物を取り除き、請求は三万二千円。財布を握って身を硬くする私に、係員はすかさず、「よかったです、修理ですんで」。
へたをすると部品がいかれ、交換しないといけなかったが、この型の部品はもう生産されていない。買い替えとなると、このスペースに置くのは不可能。「洗濯乾燥機はどんどん大型化していますから。少なくともドラム式は断念していただかないといけないかも」。
そう、今の機種を探し出すのにも、防水パンの内のりを測り、巻き尺を持って販売店に通い詰めた。私が三十六歳のとき、中古で購入したマンション。建った当時は、ドラム式の洗濯乾燥機など想定されていなかったのだ。
食洗機を買うときもやはり、スペースと配管が問題に。終の棲家にしたくても、家電製品の進化と普及に、住まいがついていけない。
住み続けるには、今ある家電を注意深く使い、なるべく長く持たせよう。
取扱説明書をめくって調べるが、エラー表示とその対処法の一覧にも、見当たらない。「上記以外は、販売店に修理を依頼して下さい」。故障したか。
電力事情を考えて、洗濯は夜している。販売店には明日電話するとし、急ぎのものだけ手洗いしよう。
ロックを解除しようとして愕然。開かない。あちこち押すが、操作を受け付けないようだ。
これまた電力事情を意識し、洗濯はなるべくまとめて行うようにしている。言い替えれば、溜め込んだ汚れ物が、この中にはいっぱいだ。
前に販売店に、別の家電の修理を相談したら、メーカーに送って二週間かかると言われた。蒸し暑いこの季節、そんなに長く密封しておいたら、どうなる?
悪い想像が頭をおおいかけたとき、その店はもう撤退したことを思い出す。販売店に依頼できない場合は、メーカーのサービスセンターへと、取扱説明書にある。電話すると、中一日で点検に来てもらえた。
結論から言えば、故障ではなく、私の不注意。メーカーに送らず、その場で直った。「これがひっかかっていました」。係員の男性の手に、伸びきった黒のレギンスを目にし、赤面する。
係員によると、内ふたを閉める際レギンスが挟まり、それがストッパーになりドラムの回転を阻んでいた。原因物を取り除き、請求は三万二千円。財布を握って身を硬くする私に、係員はすかさず、「よかったです、修理ですんで」。
へたをすると部品がいかれ、交換しないといけなかったが、この型の部品はもう生産されていない。買い替えとなると、このスペースに置くのは不可能。「洗濯乾燥機はどんどん大型化していますから。少なくともドラム式は断念していただかないといけないかも」。
そう、今の機種を探し出すのにも、防水パンの内のりを測り、巻き尺を持って販売店に通い詰めた。私が三十六歳のとき、中古で購入したマンション。建った当時は、ドラム式の洗濯乾燥機など想定されていなかったのだ。
食洗機を買うときもやはり、スペースと配管が問題に。終の棲家にしたくても、家電製品の進化と普及に、住まいがついていけない。
住み続けるには、今ある家電を注意深く使い、なるべく長く持たせよう。
年金の難しさ――早稲田大学教授津田廣喜氏
国民皆年金制度になってから、今年でちょうど50年の歳月が流れた。
当時と現在を比べてみると、昭和36年(1961年)の厚生年金の支給開始年齢は男60歳・女55歳。平均余命から計算すると、男女平均の支給年数は約18年であった。現在は制度の移行期間中だが、最後に支給開始年齢は男女とも65歳になる。それでも支給年数は約23年と、当時より長くなる。
また、昭和36年前後の合計特殊出生率は約2・0で、出生数は約160万人、現在はそれぞれ1・3台、約110万人。保険料の基礎となる1人当り国民所得の伸びは当時が13~14%、現在は概(おおむ)ね横這(ば)いである。さらに、平均余命の伸びに伴い、受給者数も当初の予測より大幅に増えている。
長期の展望が必要な年金制度は安定性が大事だが、前提がこんなに違ってくると、5年毎(ごと)の財政再計算のたびに制度を変えざるを得なかった。
最近では平成16年(2004年)に大きな制度改正が行われた。財政当局の主張は殆(ほとん)ど通らなかったと担当者は憮然(ぶぜん)たる表情だったが、所謂(いわゆる)マクロ経済スライドや保険料の段階的な引き上げが導入された。世の中に苦い薬を飲んでもらうことが困難な近時としては、それなりの制度改正だったといっていい。
それでも、年金制度が動く経済を相手にしている以上、状況の変化に対応した不断の見直しが避けられない。現に、デフレのためにマクロ経済スライドは「空振り」になり、支給額引き下げの一部停止、保険料の伸び悩みもあって、年金財政の将来像は制度改正時よりかなり悪化している。
国民に安心を与える政策はかくも難しい。
当時と現在を比べてみると、昭和36年(1961年)の厚生年金の支給開始年齢は男60歳・女55歳。平均余命から計算すると、男女平均の支給年数は約18年であった。現在は制度の移行期間中だが、最後に支給開始年齢は男女とも65歳になる。それでも支給年数は約23年と、当時より長くなる。
また、昭和36年前後の合計特殊出生率は約2・0で、出生数は約160万人、現在はそれぞれ1・3台、約110万人。保険料の基礎となる1人当り国民所得の伸びは当時が13~14%、現在は概(おおむ)ね横這(ば)いである。さらに、平均余命の伸びに伴い、受給者数も当初の予測より大幅に増えている。
長期の展望が必要な年金制度は安定性が大事だが、前提がこんなに違ってくると、5年毎(ごと)の財政再計算のたびに制度を変えざるを得なかった。
最近では平成16年(2004年)に大きな制度改正が行われた。財政当局の主張は殆(ほとん)ど通らなかったと担当者は憮然(ぶぜん)たる表情だったが、所謂(いわゆる)マクロ経済スライドや保険料の段階的な引き上げが導入された。世の中に苦い薬を飲んでもらうことが困難な近時としては、それなりの制度改正だったといっていい。
それでも、年金制度が動く経済を相手にしている以上、状況の変化に対応した不断の見直しが避けられない。現に、デフレのためにマクロ経済スライドは「空振り」になり、支給額引き下げの一部停止、保険料の伸び悩みもあって、年金財政の将来像は制度改正時よりかなり悪化している。
国民に安心を与える政策はかくも難しい。
節電と暮らし――窓開けると気になる…、生活音トラブル大丈夫?
欠かせない配慮/交流が防止に一役
節電のため、窓を開けて風を通すことが増えそうな今年の夏。窓を閉めエアコンをつけていると気がつかなかった、様々な生活音の問題が出てきそうだ。話し声、家電の音、風鈴の音など一度気になり始めると耳について離れないという人もいる。音を巡るトラブルを防ぐ心得は何か、探った。
掃除機の音が
「節電のため窓を開けていると、下の階や左右の家からの音が気になる」と話すのは神奈川県に住む主婦のA子さん(52)。朝9時ごろから掃除機の音が鳴り響き、時には音楽も。「出かけたり自分も音楽をかけたりして気を紛らわせている」というが、「窓を開けて音楽をかけ返すとけんか腰にならないか」と悩む時もあるという。
子どもの声も、騒音となりうる。「噴水を稼働中はお子さんが大きい声で騒がないように注意してください」――。東京都西東京市の西東京いこいの森公園。子どもが水遊びに興じる噴水近くには、こんな看板が立つ。
この噴水は7月1日に再開したばかり。東京地裁八王子支部が2007年、騒音源となる噴水などの使用を禁止する仮処分を決定し、約4年、止まっていた。騒音差し止めを申し立てた住民が亡くなったことなどから、市は地域への説明などを経て再開。今後もトラブル防止のため、月に1回公園と住宅の境界で音量を測定し、近隣の住民との意見交換に生かす考えだ。
夏の音といえば風鈴。窓を開け放って風鈴の音色を楽しむのは節電の夏にぴったりの過ごし方にも思えるが、「チリンチリンという音があの世からのお迎えみたいで気がめいるという人もいる」と東京都国分寺市環境計画課長の増田章司さん。
音への規制は東京都条例で定められているほか、国分寺市には規制基準以下の音をめぐる隣人トラブルを防止するための条例もある。「住民の間に入って何が我慢できないのかよく話を聞く。誰が聞いても騒音と感じるものもあれば、人によって気にならないものもあり、対応が難しい」と増田さんは話す。
生活音がトラブルに発展する背景には、様々な要因がありそうだ。東芝ホームアプライアンスによれば、07年以降、家電は静音化が急速に進み「掃除機でも、キーンという耳障りな甲高い音がせず動いているかどうか分からないほど静かな機種まである」。
その半面、東京工業大学連携教授の清水寧さんは「静音化でほどよい雑音までなくなると、これまで隠れていたモーター音などが気になることもある」と指摘する。
住居自体の変化も見逃せない。「熱を逃しにくい環境配慮タイプの住宅では音がよく響く上、窓を閉めていると外の音がほとんど聞こえない。静かすぎる環境では、ささいな音でも耳障りに聞こえるようになる」と清水さんはみる。
「近所付き合いが薄れてしまったので、トラブルを解決するのが難しくなった」。大阪府に住む専業主婦のB子さん(60)は近年こう痛感している。「買い物から帰ってきたとたん、階下の老夫婦から『うるさい』と苦情の電話が来た。どうすればいいか」と、同じマンションに住む若い夫婦から相談を受けたが解決できず、程なく若い夫婦は引っ越したという。
では、生活音をトラブルに発展させないために、何をすればいいのか。
近所迷惑防ぐ
まず、自分が必要以上に音を出さないよう気をつけることは大前提だ。
「近所迷惑にならないよう草に水をやる時間に気を付ける」と話すのは大阪府の会社員のC子さん(46)。暑くて最近は5時過ぎに目が覚めてしまうことが多いが、水やりは周囲の家が起き出す時間になってから。「葉に水が落ちる音や蛇口を閉める音は明け方には案外響く。近所付き合いは配慮が何より大切」
「生活音トラブルは音自体の大きさの問題というより、感情の問題も大きい。顔の見える関係があればこじれないことも多い」と話すのは特定非営利活動法人集合住宅管理組合センター(東京都新宿区)の有馬百江常務理事。「きっかけは何でもいいので、コミュニティーに参加することが大切」と説く。
先のB子さんは、かつて子どもの誕生日パーティーで苦情を受けたことがあった。その際は「ケーキやお菓子を持参してあいさつに行く方法をお母さん仲間から教えてもらった」という。
東京在住の会社員、D子さん(53)の家では、夜になると上の階から掃除の音が聞こえるが、理事会活動で顔なじみのため気にならないという。「家族の間で『今日は遅かったんだね』などと話す。怒る前に『もしかしたら自分も』と振り返れば、多少の音は許せるのでは」
「窓から聞こえる親子の会話にほのぼのする」(33歳の男性会社員)というように、近所の音に郷愁を感じる人もいる。生活音は「お互いさま」の部分もある。そう思えば多少気になってもイライラせず乗り切れるかもしれない。
マンション組合も対策
生活音トラブルの防止は、マンションの管理組合にとっても大きな課題だ。国土交通省・国土交通政策研究所が10年にまとめた「マンションの適正な維持管理に向けたコミュニティ形成に関する研究」によれば、調査に回答した約1000のマンションの約6割が生活音による住民トラブルがあると回答した。
特に超高層型マンションでは76%で発生。担当者は「もともとホテルのような静かな暮らしを求める気持ちが強く、近隣からの生活音に敏感に反応するのでは」と分析する。
対策として「上下階をチームにして防災活動をするなど、より戦略的に生活音トラブルに対処しようとするところもある」。解決を管理会社任せにせず、住民が解決しようとするマンションほどトラブルが少ないという。人のつながりはやはりカギになるようだ。
節電のため、窓を開けて風を通すことが増えそうな今年の夏。窓を閉めエアコンをつけていると気がつかなかった、様々な生活音の問題が出てきそうだ。話し声、家電の音、風鈴の音など一度気になり始めると耳について離れないという人もいる。音を巡るトラブルを防ぐ心得は何か、探った。
掃除機の音が
「節電のため窓を開けていると、下の階や左右の家からの音が気になる」と話すのは神奈川県に住む主婦のA子さん(52)。朝9時ごろから掃除機の音が鳴り響き、時には音楽も。「出かけたり自分も音楽をかけたりして気を紛らわせている」というが、「窓を開けて音楽をかけ返すとけんか腰にならないか」と悩む時もあるという。
子どもの声も、騒音となりうる。「噴水を稼働中はお子さんが大きい声で騒がないように注意してください」――。東京都西東京市の西東京いこいの森公園。子どもが水遊びに興じる噴水近くには、こんな看板が立つ。
この噴水は7月1日に再開したばかり。東京地裁八王子支部が2007年、騒音源となる噴水などの使用を禁止する仮処分を決定し、約4年、止まっていた。騒音差し止めを申し立てた住民が亡くなったことなどから、市は地域への説明などを経て再開。今後もトラブル防止のため、月に1回公園と住宅の境界で音量を測定し、近隣の住民との意見交換に生かす考えだ。
夏の音といえば風鈴。窓を開け放って風鈴の音色を楽しむのは節電の夏にぴったりの過ごし方にも思えるが、「チリンチリンという音があの世からのお迎えみたいで気がめいるという人もいる」と東京都国分寺市環境計画課長の増田章司さん。
音への規制は東京都条例で定められているほか、国分寺市には規制基準以下の音をめぐる隣人トラブルを防止するための条例もある。「住民の間に入って何が我慢できないのかよく話を聞く。誰が聞いても騒音と感じるものもあれば、人によって気にならないものもあり、対応が難しい」と増田さんは話す。
生活音がトラブルに発展する背景には、様々な要因がありそうだ。東芝ホームアプライアンスによれば、07年以降、家電は静音化が急速に進み「掃除機でも、キーンという耳障りな甲高い音がせず動いているかどうか分からないほど静かな機種まである」。
その半面、東京工業大学連携教授の清水寧さんは「静音化でほどよい雑音までなくなると、これまで隠れていたモーター音などが気になることもある」と指摘する。
住居自体の変化も見逃せない。「熱を逃しにくい環境配慮タイプの住宅では音がよく響く上、窓を閉めていると外の音がほとんど聞こえない。静かすぎる環境では、ささいな音でも耳障りに聞こえるようになる」と清水さんはみる。
「近所付き合いが薄れてしまったので、トラブルを解決するのが難しくなった」。大阪府に住む専業主婦のB子さん(60)は近年こう痛感している。「買い物から帰ってきたとたん、階下の老夫婦から『うるさい』と苦情の電話が来た。どうすればいいか」と、同じマンションに住む若い夫婦から相談を受けたが解決できず、程なく若い夫婦は引っ越したという。
では、生活音をトラブルに発展させないために、何をすればいいのか。
近所迷惑防ぐ
まず、自分が必要以上に音を出さないよう気をつけることは大前提だ。
「近所迷惑にならないよう草に水をやる時間に気を付ける」と話すのは大阪府の会社員のC子さん(46)。暑くて最近は5時過ぎに目が覚めてしまうことが多いが、水やりは周囲の家が起き出す時間になってから。「葉に水が落ちる音や蛇口を閉める音は明け方には案外響く。近所付き合いは配慮が何より大切」
「生活音トラブルは音自体の大きさの問題というより、感情の問題も大きい。顔の見える関係があればこじれないことも多い」と話すのは特定非営利活動法人集合住宅管理組合センター(東京都新宿区)の有馬百江常務理事。「きっかけは何でもいいので、コミュニティーに参加することが大切」と説く。
先のB子さんは、かつて子どもの誕生日パーティーで苦情を受けたことがあった。その際は「ケーキやお菓子を持参してあいさつに行く方法をお母さん仲間から教えてもらった」という。
東京在住の会社員、D子さん(53)の家では、夜になると上の階から掃除の音が聞こえるが、理事会活動で顔なじみのため気にならないという。「家族の間で『今日は遅かったんだね』などと話す。怒る前に『もしかしたら自分も』と振り返れば、多少の音は許せるのでは」
「窓から聞こえる親子の会話にほのぼのする」(33歳の男性会社員)というように、近所の音に郷愁を感じる人もいる。生活音は「お互いさま」の部分もある。そう思えば多少気になってもイライラせず乗り切れるかもしれない。
マンション組合も対策
生活音トラブルの防止は、マンションの管理組合にとっても大きな課題だ。国土交通省・国土交通政策研究所が10年にまとめた「マンションの適正な維持管理に向けたコミュニティ形成に関する研究」によれば、調査に回答した約1000のマンションの約6割が生活音による住民トラブルがあると回答した。
特に超高層型マンションでは76%で発生。担当者は「もともとホテルのような静かな暮らしを求める気持ちが強く、近隣からの生活音に敏感に反応するのでは」と分析する。
対策として「上下階をチームにして防災活動をするなど、より戦略的に生活音トラブルに対処しようとするところもある」。解決を管理会社任せにせず、住民が解決しようとするマンションほどトラブルが少ないという。人のつながりはやはりカギになるようだ。
高齢者世帯1000万突破、世帯総数の21%、半数は独居老人、貧困率16%に上昇
厚生労働省は12日、2010年の国民生活基礎調査を発表した。65歳以上の高齢者だけか、高齢者と18歳未満の子供だけの「高齢者世帯」が1020万7千世帯に達し、初めて1千万世帯を突破。世帯総数に占める割合は21・0%に上った。高齢者の増加を反映し、国民の経済格差を示す指標の一つとなる「貧困率」も16・0%と過去最悪を更新した。 調査は全国の世帯を対象に無作為抽出して所得や世帯について調査票を配布。所得は2万6115票(有効回答率72・6%)、世帯は22万8864票(同79・1%)を集計した。今回は3年に1度の大規模調査。 調査によると、世帯総数は10年6月現在で4863万8千世帯だった。このうち「高齢者世帯」は1020万7千世帯。さらに高齢者が1人でもいる世帯は2070万5千世帯と、全世帯の約4割に上った。 高齢者が1人でもいる世帯を詳しくみると、「夫婦のみ」が619万世帯で最多。「1人暮らし」は501万8千世帯で、独居老人の世帯が初めて500万世帯を超えた。 09年の1世帯当たりの平均所得は549万6千円と前年比0・4%増えたが、ピークだった1994年の8割止まりで、約20年前と同水準になっている。平均所得額以下の世帯の割合は61・4%だった。 世帯別にみると「高齢者世帯」は307万9千円、「子供のいる世帯」は697万3千円だった。厚労省の担当者は「高齢者と非正規社員を中心に、低所得者層が増える傾向にある」と話す。 こうした背景から09年の貧困率は16・0%と、前回06年から0・3ポイント上昇した。貧困率は全世帯の可処分所得を1人当たりに換算して低い順に並べ、真ん中になる人の所得(中央値)の半分に満たない、所得が112万円未満の人の割合。子供(17歳以下)の貧困率は15・7%で同比1・5ポイント増えた。 調査は東日本大震災前だったが、厚労省は震災の影響について「被災者への給付内容や景気動向にもよるが、貧困率の押し上げ要因になる可能性はある」と見ている。 |
ウチの子には割高でも少人数、英会話、家庭教師、運動教室、支出惜しまず。
英会話教室や運動教室で、個別指導など少人数学習の需要が拡大している。特に目立つのが小学校低学年の利用。グループレッスンに比べ割高でも、学習効果が把握しやすいことから富裕層以外にも支持が広がる。子供の教育費は縮小傾向だが、学びの「実」が得られる分野ならば、小さいうちから惜しまず支出する親心がうかがえる。
7月上旬の月曜日、東京・世田谷の英会話教室「Gaba成城ラーニングスタジオ」。「How is the weather today?(今日の天気はどうですか)」「Fine!(良い天気)」。外国人講師の質問に小学校2年生の男児が元気よく答える。
GABAが28校で展開する小学生向け英会話講座「Gaba kids」は1レッスン40分のマンツーマン式。小学校での英語必修化もあり、受講人数は今年末までの目標300人を突破する勢い。利用層も幅広い。
料金は1回約5000円と他社のグループレッスンの2倍近い。母親は「以前はグループに通っていたが、遊んでしまい身につかなかった」と話す。「料金が高くても身につく方を選びたい」
ベルリッツ・ジャパン(東京・港)では今年初め、4対6だった英会話の個別・グループ受講比率が7対3に逆転した。個別は1回40分で8070円。けん引役は中学生だが、小学校低学年もじわり増えている。
「効果を実感」支出惜しまず
需要が反転したのが家庭教師。トライグループ(東京・千代田)では4~6月の低学年以下の新規入会者が前年同期より1割近く増えた。東日本大震災後の通塾不安がきっかけだが「苦手分野の克服に向く」と継続利用を希望する親は多い。
学習塾大手、栄光の「栄光キッズカレッジ」では体育の個別指導の希望者が増加している。生徒2人に先生1人が鉄棒や跳び箱を教える。1回60分で月2回の料金はグループ(5人)より3150円高い8400円。小学3~4年生中心に、キャンセル待ちを含め問い合わせは50件以上ある。
リーマン・ショック後、家計は子供の教育費を絞り気味だ。文部科学省の「子どもの学習費調査」(2008年度)によると、小学生の年間学校外活動費は公立で約21万円と06年比11%減少。昨年は子ども手当があったが、今年は震災で横ばいになるとみられる。
ただ、ベネッセ教育研究開発センターの鈴木尚子研究員は「日常の学校生活で学習効果が実感しやすい分野には支出を惜しまない」という親のメリハリぶりを指摘する。最近、習い事でピアノなどの楽器より水泳の人気が高いことも、同じ傾向を反映しているという。
7月上旬の月曜日、東京・世田谷の英会話教室「Gaba成城ラーニングスタジオ」。「How is the weather today?(今日の天気はどうですか)」「Fine!(良い天気)」。外国人講師の質問に小学校2年生の男児が元気よく答える。
GABAが28校で展開する小学生向け英会話講座「Gaba kids」は1レッスン40分のマンツーマン式。小学校での英語必修化もあり、受講人数は今年末までの目標300人を突破する勢い。利用層も幅広い。
料金は1回約5000円と他社のグループレッスンの2倍近い。母親は「以前はグループに通っていたが、遊んでしまい身につかなかった」と話す。「料金が高くても身につく方を選びたい」
ベルリッツ・ジャパン(東京・港)では今年初め、4対6だった英会話の個別・グループ受講比率が7対3に逆転した。個別は1回40分で8070円。けん引役は中学生だが、小学校低学年もじわり増えている。
「効果を実感」支出惜しまず
需要が反転したのが家庭教師。トライグループ(東京・千代田)では4~6月の低学年以下の新規入会者が前年同期より1割近く増えた。東日本大震災後の通塾不安がきっかけだが「苦手分野の克服に向く」と継続利用を希望する親は多い。
学習塾大手、栄光の「栄光キッズカレッジ」では体育の個別指導の希望者が増加している。生徒2人に先生1人が鉄棒や跳び箱を教える。1回60分で月2回の料金はグループ(5人)より3150円高い8400円。小学3~4年生中心に、キャンセル待ちを含め問い合わせは50件以上ある。
リーマン・ショック後、家計は子供の教育費を絞り気味だ。文部科学省の「子どもの学習費調査」(2008年度)によると、小学生の年間学校外活動費は公立で約21万円と06年比11%減少。昨年は子ども手当があったが、今年は震災で横ばいになるとみられる。
ただ、ベネッセ教育研究開発センターの鈴木尚子研究員は「日常の学校生活で学習効果が実感しやすい分野には支出を惜しまない」という親のメリハリぶりを指摘する。最近、習い事でピアノなどの楽器より水泳の人気が高いことも、同じ傾向を反映しているという。
大塚寿「40代を後悔しない50のリスト」
「人生見つめる」風潮 追い風
ビジネスパーソンが40代をいかに過ごすべきかを説いた『40代を後悔しない50のリスト』(大塚寿著、ダイヤモンド社・1429円)が売れている。2月の発売から5カ月弱で10刷12万部。東日本大震災を受けての、改めて人生を考え直したい、という風潮も追い風になっているようだ。
40代では、部下のマネジメントなどそれまでと違うスキルが求められるといわれるが、どう迎えたらよいのだろうか。企画の出発点は30代半ばの担当編集者、市川有人氏の個人的な疑問だった。
疑問に答えてくれる著者を探すうち、一緒に本を作ったことのある大塚氏と再会。かつてリクルートの営業マンとして、取引先の幹部や社内の先輩など1万人以上から成功・失敗談を聞いてきたという大塚氏の経験を知り起用が決まる。市川氏が知りたかった、忙しい中で家族とどう接するかといったプライベートの過ごし方も題材とした。
特定の世代を狙った本は多いが「40代向けで売れた本は少ない」という不安から、初版は7千部と多くなかった。一方、ヒットした『28歳からのリアル』(人生戦略会議著、WAVE出版)が刊行されたのが2003年で、当時28歳だった人は今、36歳前後。この層が支持してくれるのではという期待もあった。
本格的に売れ始めたのは3月。東日本大震災後に勢いが衰えることもなく、コンスタントに売れ続ける。「悔いのない人生を、と考える人が増えた中で、タイトル中の『後悔』が効いたのかもしれない」(市川氏)。30、40代のビジネスパーソンという読者層が新聞と重なるためか、新聞広告の反響が大きいという。
書店からも「ターゲットが明確で扱いやすい」との声が上がる。同様に40代を狙う本が出始め、「40代本」コーナーを設ける書店も現れている。
なぜ、定年退職した人のほとんどの後悔は、
四〇代に集中しているのでしょうか?
四〇代は三〇代の延長ではありません。
走る方向が一八〇度変わってしまう、
人生のターニングポイントなのです。
ビジネスパーソンが40代をいかに過ごすべきかを説いた『40代を後悔しない50のリスト』(大塚寿著、ダイヤモンド社・1429円)が売れている。2月の発売から5カ月弱で10刷12万部。東日本大震災を受けての、改めて人生を考え直したい、という風潮も追い風になっているようだ。
40代では、部下のマネジメントなどそれまでと違うスキルが求められるといわれるが、どう迎えたらよいのだろうか。企画の出発点は30代半ばの担当編集者、市川有人氏の個人的な疑問だった。
疑問に答えてくれる著者を探すうち、一緒に本を作ったことのある大塚氏と再会。かつてリクルートの営業マンとして、取引先の幹部や社内の先輩など1万人以上から成功・失敗談を聞いてきたという大塚氏の経験を知り起用が決まる。市川氏が知りたかった、忙しい中で家族とどう接するかといったプライベートの過ごし方も題材とした。
特定の世代を狙った本は多いが「40代向けで売れた本は少ない」という不安から、初版は7千部と多くなかった。一方、ヒットした『28歳からのリアル』(人生戦略会議著、WAVE出版)が刊行されたのが2003年で、当時28歳だった人は今、36歳前後。この層が支持してくれるのではという期待もあった。
本格的に売れ始めたのは3月。東日本大震災後に勢いが衰えることもなく、コンスタントに売れ続ける。「悔いのない人生を、と考える人が増えた中で、タイトル中の『後悔』が効いたのかもしれない」(市川氏)。30、40代のビジネスパーソンという読者層が新聞と重なるためか、新聞広告の反響が大きいという。
書店からも「ターゲットが明確で扱いやすい」との声が上がる。同様に40代を狙う本が出始め、「40代本」コーナーを設ける書店も現れている。
なぜ、定年退職した人のほとんどの後悔は、
四〇代に集中しているのでしょうか?
四〇代は三〇代の延長ではありません。
走る方向が一八〇度変わってしまう、
人生のターニングポイントなのです。
太陽光で我が家は節電、設置の補助金申請6割増、4~6月。
契約・工事巡りトラブルも
東日本大震災を機に、太陽光発電を導入する一般家庭が急増している。支給される補助金の申請件数は4~6月で5万件を超え、前年同期から6割増のペース。停電への対策のほか、家庭で余った電気は電力会社が買い取るため、導入した人たちは「節電にも協力できる」と話す。一方、契約や工事を巡るトラブルも少なくなく、国民生活センターなどが注意を呼び掛けている。
「晴れの日が楽しみ」。千葉県市川市の自動車部品店経営、井上憲一さん(38)は、2階建ての自宅屋根に取り付けたばかりの太陽光パネルを見上げて笑顔だ。設置のきっかけは震災後の電力不足。近所の人から「太陽光があれば、停電でも大丈夫」と聞き、5月中旬に導入した。
居間には、発電量と消費電力量が同時に表示されるモニターが置かれ、井上さんは「これまで気にせず電気を使っていたが、(6人の)家族皆、ゲーム感覚で電化製品をどんどん消すようになった」。実際、5月の電気料金は今までの半分の約12000円。さらに、余った電気は売電に回し、東京電力から約6000円が振り込まれた。「楽しみながら節電にも協力できる」と笑う。
設備の導入に際し国から支給される補助金の申請件数は今年4~6月、5万3千件超で、昨年同期から約6割増。情報サイト「太陽生活ドットコム」の小川誉久編集長は「震災でエネルギー問題への関心が高まり、停電対策や社会貢献として始める人が多い」と話す。
家庭で余った分は電力会社が買い取ることが制度化されており、「一般に、発電量の半分程度が売電に回る」(資源エネルギー庁)。2010年度の全国の買い取り量は10億キロワット時超とみられ、総需要量の1%未満だが、資源エネルギー庁は「伸びしろが大きいエネルギー源として期待できる」としている。
一方、導入例が増えるにつれトラブルも目立つ。国民生活センターに寄せられた太陽光発電に関する相談は昨年度、約2600件。今年4月以降はすでに400件超で、昨年より100件ほど多いという。
訪問販売業者と契約した人からの相談が多く、「業者の説明と比べ3分の1しか発電しない」「補助金に期限があると言われ契約を急がされた」などの相談があったという。太陽光発電の相談に応じている特定非営利活動法人(NPO法人)「太陽光発電所ネットワーク」(東京)の都筑建事務局長は「複数の業者から見積もりを取って比較し、日当たりなど実際の生活環境を考慮に入れてよく確認することが大切だ」と話している。
東日本大震災を機に、太陽光発電を導入する一般家庭が急増している。支給される補助金の申請件数は4~6月で5万件を超え、前年同期から6割増のペース。停電への対策のほか、家庭で余った電気は電力会社が買い取るため、導入した人たちは「節電にも協力できる」と話す。一方、契約や工事を巡るトラブルも少なくなく、国民生活センターなどが注意を呼び掛けている。
「晴れの日が楽しみ」。千葉県市川市の自動車部品店経営、井上憲一さん(38)は、2階建ての自宅屋根に取り付けたばかりの太陽光パネルを見上げて笑顔だ。設置のきっかけは震災後の電力不足。近所の人から「太陽光があれば、停電でも大丈夫」と聞き、5月中旬に導入した。
居間には、発電量と消費電力量が同時に表示されるモニターが置かれ、井上さんは「これまで気にせず電気を使っていたが、(6人の)家族皆、ゲーム感覚で電化製品をどんどん消すようになった」。実際、5月の電気料金は今までの半分の約12000円。さらに、余った電気は売電に回し、東京電力から約6000円が振り込まれた。「楽しみながら節電にも協力できる」と笑う。
設備の導入に際し国から支給される補助金の申請件数は今年4~6月、5万3千件超で、昨年同期から約6割増。情報サイト「太陽生活ドットコム」の小川誉久編集長は「震災でエネルギー問題への関心が高まり、停電対策や社会貢献として始める人が多い」と話す。
家庭で余った分は電力会社が買い取ることが制度化されており、「一般に、発電量の半分程度が売電に回る」(資源エネルギー庁)。2010年度の全国の買い取り量は10億キロワット時超とみられ、総需要量の1%未満だが、資源エネルギー庁は「伸びしろが大きいエネルギー源として期待できる」としている。
一方、導入例が増えるにつれトラブルも目立つ。国民生活センターに寄せられた太陽光発電に関する相談は昨年度、約2600件。今年4月以降はすでに400件超で、昨年より100件ほど多いという。
訪問販売業者と契約した人からの相談が多く、「業者の説明と比べ3分の1しか発電しない」「補助金に期限があると言われ契約を急がされた」などの相談があったという。太陽光発電の相談に応じている特定非営利活動法人(NPO法人)「太陽光発電所ネットワーク」(東京)の都筑建事務局長は「複数の業者から見積もりを取って比較し、日当たりなど実際の生活環境を考慮に入れてよく確認することが大切だ」と話している。
入院医療費、18歳まで無料に、北区、子育て世帯定住促す。
東京都北区は入院医療費を実質無料にする対象を中学生以下から18歳以下に拡大した。同区は23区内で65歳以上の高齢化率が最も高い。区内の子育て世代の負担を軽減させて、若年人口の増加を目指す。 健康保険が適用される入院医療費の自己負担分を区が助成する。食事療養費も助成する。高校に通っていなくても助成し、保護者の所得制限はない。区によると、新たに対象になる人は約6200人という。 申請できるのは保護者で、いったん医療機関に自己負担分を支払った後、領収書の原本など書類を区役所に提出してもらう。審査を経て保護者の指定口座に振り込む。 区は必要経費として2011年度予算に1963万円を計上している。 高校生の医療費助成では、千代田区が4月から通院・入院医療費を実質無料にしている。 |
投信分配金4年ぶり規模、1~6月、低金利で個人購入増――運用成績伴わぬ例も。
投資信託の運用会社が投信保有者に支払う「分配金」が急増している。今年上期(1~6月)の支給額は2兆3000億円を超え、8半期(4年)ぶりに過去最高を更新。低金利下で個人の現金収入に対する需要が強まる中、分配金を頻繁に出す投信の残高が積み上がり、支給額が膨らんだ。「高額分配」をうたう投信も増えているが、高リスクの運用や元本の払い戻しで支払う例もあり、商品選びで注意が必要との声も多い。 分配金は投信の運用資産を一部取り崩して、支払う。投信が組み入れた株や債券などの配当・利子収入や、値上がり益が主な原資。もともとは分配なしの投信が多かったが、現在は分配型が急増している。 野村総合研究所が投信の分配金支給額を集計したところ、上期は2兆3149億円と前年同期比43%増えた。増加は4半期連続。支給額は2008年の金融危機後に投信の運用成績が悪化していったん減少したが、その後再び増加している。 分配金を出す投信の中でも人気が高いのは、「毎月分配型」だ。6月末の残高は36兆円。公募投信の残高全体に占める比率は約55%に達し、わずか2%だった10年前から急上昇した。 低金利が長引き預金の利子収入のみで資産を増やすことができないなか、高齢層が年金の補完的な役割を期待して分配型投信を積極的に購入している。「給与所得が減少したため購入する現役世代も確実に増えている」(SMBC日興証券) 価格変動リスクの高い資産で運用し、従来より高い分配金を出す商品が増えたのも支給額の増加に拍車をかけている。上期はブラジルなど新興・資源国の債券や米国の低格付け社債といった外国債券で運用する投信の支給額が1兆4834億円と41%増えた。海外の不動産投資信託(REIT)で運用する投信も3429億円と87%増えた。 ただ最近は成績不振なのに過去の運用益を取り崩したり、投資家に元本を払い戻したりして、高額の分配金を維持する投信も目立つ。投信評価会社モーニングスターが、基準価格(投信の時価)に対して過去1年間の分配金支給額が大きく、分配金利回りが高かったファンド上位20本を調べたところ、7割に当たる14本が期間中の運用益以上の分配金を出していた。 「実力以上」の分配金を受け取っても投資家にとって利益が出たと言えない。運用内容より分配金の水準で商品を選ぶ個人が増えているが、「分配金だけでなくトータルで運用益が出ているかどうかに目を向ける必要がある」と投資信託協会の稲野和利会長は指摘する。 |
主な決済手段「電子」4割、民間調べ、「今後も現金で」34%。
クレジットカード大手のビザ・ワールドワイドジャパン(東京・千代田)は、主な支払い手段が電子マネーを含む電子決済となっている消費者が39・9%にのぼるとの調査結果を公表した。現金決済が多い消費者でも電子決済をできるだけ活用したいと考える「電子決済予備軍」は25・6%に達し、同社では「現金決済に伴うストレスの存在が明らかになった」としている。
調査はインターネットを通じ、5月20~23日に実施。全国の18歳以上70歳未満の男女2400人から回答を得た。電子決済派と対照的に現金を主な決済手段とし、今後もできるだけ現金を利用したいと考える「現金派」は34・5%だった。
電子決済予備軍に「現金決済への不満」(複数回答)を聞いたところ、「小銭がかさばり邪魔」(69・9%)、「銀行やATMへ行くのが手間」(68・4%)、「現金を持ち歩くのは不安」(67・3%)などとなった。逆に現金決済に関しては「いくら使ったか実感しやすい」(83・2%)、「使いすぎない」(73・5%)といったメリットを挙げる声も多かった。
同社は「日本ではクレジットカード=電子決済との認識になっている可能性が高い」と指摘。前払い式の電子マネーや、即時払いできるデビットカードなどの認知度を高めることで、電子決済シフトが進むとみている。
調査はインターネットを通じ、5月20~23日に実施。全国の18歳以上70歳未満の男女2400人から回答を得た。電子決済派と対照的に現金を主な決済手段とし、今後もできるだけ現金を利用したいと考える「現金派」は34・5%だった。
電子決済予備軍に「現金決済への不満」(複数回答)を聞いたところ、「小銭がかさばり邪魔」(69・9%)、「銀行やATMへ行くのが手間」(68・4%)、「現金を持ち歩くのは不安」(67・3%)などとなった。逆に現金決済に関しては「いくら使ったか実感しやすい」(83・2%)、「使いすぎない」(73・5%)といったメリットを挙げる声も多かった。
同社は「日本ではクレジットカード=電子決済との認識になっている可能性が高い」と指摘。前払い式の電子マネーや、即時払いできるデビットカードなどの認知度を高めることで、電子決済シフトが進むとみている。
日本資金決済業協会(東京・千代田)がまとめた決済手段に関する調査によると、現金以外では商品券や電子マネーなど前払い式の決済手段を最も頻繁に利用するという消費者が40%に達した。背景には「ICプリペイドカード」の利用拡大があり、2009年の前回調査より約8ポイント増えた。
前払い式の決済手段の中では商品券や磁気カードの利用が減る一方、ICプリペイドカードは前回結果を8ポイント上回る40%となり、利用者の割合が最も多かった。今後利用してみたいICプリペイドカードでは東日本旅客鉄道の「スイカ」などの交通系の電子マネーやイオンが運営する電子マネー「ワオン」が上位を占めた。
前払い式の決済手段の中では商品券や磁気カードの利用が減る一方、ICプリペイドカードは前回結果を8ポイント上回る40%となり、利用者の割合が最も多かった。今後利用してみたいICプリペイドカードでは東日本旅客鉄道の「スイカ」などの交通系の電子マネーやイオンが運営する電子マネー「ワオン」が上位を占めた。
2011年7月12日火曜日
プリペイドでネットの決済
海外通販など初めて利用するサイトでクレジットカードを使っても大丈夫だろうか――。インターネットで買い物する際のこうした不安を解消しようと、ライフカードとビザ・ワールドワイドジャパンはネット決済専用プリペイドカード「Vプリカ」の販売を始めた。
プラスチックカードの発行はせずに、ネット上でカード番号や有効期限を付与。専用パスワードによる認証サービスにも対応している。ビザ、マスターブランドのカードを持っていれば購入でき、券種は3000円券から3万円券までの5種類がある。それぞれ200~900円の購入手数料がかかる。
一部の通販サイトでは独自の電子マネーやギフト券を発行しているが、使えるのは自社サイトでの買い物が中心。ネット上での商品やサービス購入に使われる「ネットマネー」(サーバー型電子マネー)も、対応するサイトはまだ限られる。Vプリカはビザが使える世界中のネットショップで利用できるため、不慣れな海外サイトを利用するときなどで決済手段の選択肢が広がりそうだ。
プラスチックカードの発行はせずに、ネット上でカード番号や有効期限を付与。専用パスワードによる認証サービスにも対応している。ビザ、マスターブランドのカードを持っていれば購入でき、券種は3000円券から3万円券までの5種類がある。それぞれ200~900円の購入手数料がかかる。
一部の通販サイトでは独自の電子マネーやギフト券を発行しているが、使えるのは自社サイトでの買い物が中心。ネット上での商品やサービス購入に使われる「ネットマネー」(サーバー型電子マネー)も、対応するサイトはまだ限られる。Vプリカはビザが使える世界中のネットショップで利用できるため、不慣れな海外サイトを利用するときなどで決済手段の選択肢が広がりそうだ。
被災労働者に公的支援――賃金立て替え払いや、失業給付の特例など
東日本大震災により、被災地の多くの働く人に国の支援が必要となっている。活用できる支援策も多い。 まず、会社が被災地にある中小企業で、震災日以前の給料や退職金に未払いがあるとき、会社が事実上の倒産状態ならば、未払い賃金の立て替え払い制度を利用できる。 ただし、9月11日までに働く人自らが申請して、会社の事業活動が事実上停止しており、再開する見込みも、賃金の支払い能力もないことを管轄の労働基準監督署長に認定してもらう必要がある。 次に、会社の休業手当についても救済策がある。通常、会社側の都合による休業の場合、従業員には休業手当を支払うが、天災や原発事故の避難命令による会社の休業の場合は、必ずしも支払わなくてよい。しかし、それでは生活ができない。 そこで普段なら働く人が退職した時だけ受けられる雇用保険の失業給付が、特例として受け取れる場合がある。一時休業で給料を受けることができない場合や、一時的に離職して事業再開後に再雇用が予定される場合などだ。倒産などで離職した人と同じだけ給付が受けられる。 このほか、会社に助成金を出して、雇用の維持や創出につなげてもらう特別措置もある。震災に伴う経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、労働者を一時的に休業させ雇用を維持する場合に、休業手当の最大9割を助成する雇用調整助成金を利用できる。 被災者を雇い入れた事業主に助成金が出る制度もできた。被災した卒業後3年以内の既卒者を雇い入れると助成内容が拡充される。また、採用内定を取り消されて就職先が未定の新卒者を雇い入れた場合に出る助成金もある。公共職業安定所(ハローワーク)に問い合わせたい。 支援が続く間に、被災地に雇用の場を生み出すことが必要だ。インフラ整備を進めて農林水産業をその大きな柱とすることなどが求められている。 |
おさらい生命保険(下)入り方編――同じ内容でも保険料に差
営業コストなど反映 家計の負担見極めて
職員が来訪 対面で相談
代理店 各社の商品比較
ネット通販 簡単で割安
生命保険は万一のときに受け取る保険金など加入の条件が同じでも、会社によって保険料に大きな差がある。貯蓄に回せるお金を増やし、家計の自由度を高めるためには、複数の会社の商品を比較する意識が欠かせない。生命保険の入り方や見直しのポイントをまとめた。
「たいていの物やサービスは価格が上がればそれだけ機能や内容が充実するが、生命保険は違う」。こう語るのは、元大手生保営業職員で保険代理店役員の後田亨さんだ。
「純」「付加」に分解
今回、死亡時3千万円の定期保険(期間10年)に40歳男性が加入した場合に絞って、保険料を比べた(グラフA)。インターネット生保のA社やB社の保険料は、国内大手F社に比べて6割の水準だ。
F社は保険料が余った場合、契約者に分配する「配当」がある。配当金がどの程度になるのかはわからないため、保険料を一概に比べられない面もある。
ただ「死亡時に3千万円」という保障内容が同じ定期保険なのに、保険料に大きな差があることは珍しくない。なぜか。理由を探るには保険料が決まる仕組みを知る必要がある。
一般的に保険会社に支払う保険料は、保険金や給付金に充てる「純保険料」と、人件費などの経費や利益になる「付加保険料」の2つに分解できるといわれている(図B)。死亡保険の場合、保険の原価に相当する純保険料は各社共通の指標を用いているため、基本的にはどの会社も同じ水準とされる。保険料の差は、付加保険料の違いによるといっていい。
ネット生保は店舗や営業職員を持たない。一方、きめ細かいサービスを目指して全国に拠点を構え、多くの営業職員を抱える会社も多い。こうしたコストの差を反映すると保険料が違ってくるわけだ。
死亡保障に入院をカバーする特約や貯蓄機能などを組み合わせて提案する会社も目立つ。ファイナンシャルプランナー(FP)の竹下さくらさんは「このやり方だと、他社と比べて保険料が高いのか安いのかが分かりにくい」と指摘する。
自分に合った生命保険を見つけるにはどうすればいいのか。「対面で相談できる担当者が付く方が安心」という意見もある。表Cに加入方法ごとの長所と短所をまとめた。
営業職員は商品知識が豊富で、保険の説明や契約の際などに、自宅や会社まで来てくれるなど丁寧なサービスが期待できる。半面、一社専属のために他社商品との比較はできない。「勧める商品は内容が複雑で、保険料が高めの傾向がある」(FPの内藤真弓さん)という指摘もある。
駅前の商店街などによくある、複数の会社の商品を取り扱う保険代理店の場合、店員に相談しながら割安な保険を探すことができる。ただ「保険会社が代理店に支払う販売手数料の高い保険を勧める例もある」(竹下さん)という。「もっと安い保険はありませんか」と尋ねる姿勢が肝心だ。
インターネットなどの通信販売は、対面で説明が受けられない代わりに単純な商品が多い。保険料は割安だが、最も安いとは限らない。一部の会社が健康でたばこを吸わない人など向けに「リスク細分型保険」として、より安い保険料の商品を提供している。
団体向けも要検討
勤め先の会社などで「団体保険」に入れる人は、検討する価値がある。1年更新の定期保険が主流で、募集コストがかからないため、保険料が安い。配当金が出ることもあり「実質的な負担額でネット生保を下回ることも珍しくない」(後田さん)という。
月々の保険料について竹下さんは「手取り額の5~10%以内が無理のない水準。これ以上なら見直しが必要」と話す。後田さんは「掛け捨ての定期保険に絞れば多くの会社員は手取り額の1%程度で必要な保障が得られる」と見る(表D)。
保険会社から更新時の保険料アップなどを理由に、既存契約の「転換」を勧められた際は、よく検討することが必要だ。「転換」とはこれまでの契約でたまった解約返戻金を頭金にして、同じ会社の新しい保険に入り直すことを指す。
提案内容にもよるが、後田さんは「予定利率(保険の積み立て部分の利率に相当)が引き下げられたり、解約返戻金が失われてしまうなど契約者にとって不利な変更になることがある」と指摘する。
職員が来訪 対面で相談
代理店 各社の商品比較
ネット通販 簡単で割安
生命保険は万一のときに受け取る保険金など加入の条件が同じでも、会社によって保険料に大きな差がある。貯蓄に回せるお金を増やし、家計の自由度を高めるためには、複数の会社の商品を比較する意識が欠かせない。生命保険の入り方や見直しのポイントをまとめた。
「たいていの物やサービスは価格が上がればそれだけ機能や内容が充実するが、生命保険は違う」。こう語るのは、元大手生保営業職員で保険代理店役員の後田亨さんだ。
「純」「付加」に分解
今回、死亡時3千万円の定期保険(期間10年)に40歳男性が加入した場合に絞って、保険料を比べた(グラフA)。インターネット生保のA社やB社の保険料は、国内大手F社に比べて6割の水準だ。
F社は保険料が余った場合、契約者に分配する「配当」がある。配当金がどの程度になるのかはわからないため、保険料を一概に比べられない面もある。
ただ「死亡時に3千万円」という保障内容が同じ定期保険なのに、保険料に大きな差があることは珍しくない。なぜか。理由を探るには保険料が決まる仕組みを知る必要がある。
一般的に保険会社に支払う保険料は、保険金や給付金に充てる「純保険料」と、人件費などの経費や利益になる「付加保険料」の2つに分解できるといわれている(図B)。死亡保険の場合、保険の原価に相当する純保険料は各社共通の指標を用いているため、基本的にはどの会社も同じ水準とされる。保険料の差は、付加保険料の違いによるといっていい。
ネット生保は店舗や営業職員を持たない。一方、きめ細かいサービスを目指して全国に拠点を構え、多くの営業職員を抱える会社も多い。こうしたコストの差を反映すると保険料が違ってくるわけだ。
死亡保障に入院をカバーする特約や貯蓄機能などを組み合わせて提案する会社も目立つ。ファイナンシャルプランナー(FP)の竹下さくらさんは「このやり方だと、他社と比べて保険料が高いのか安いのかが分かりにくい」と指摘する。
自分に合った生命保険を見つけるにはどうすればいいのか。「対面で相談できる担当者が付く方が安心」という意見もある。表Cに加入方法ごとの長所と短所をまとめた。
営業職員は商品知識が豊富で、保険の説明や契約の際などに、自宅や会社まで来てくれるなど丁寧なサービスが期待できる。半面、一社専属のために他社商品との比較はできない。「勧める商品は内容が複雑で、保険料が高めの傾向がある」(FPの内藤真弓さん)という指摘もある。
駅前の商店街などによくある、複数の会社の商品を取り扱う保険代理店の場合、店員に相談しながら割安な保険を探すことができる。ただ「保険会社が代理店に支払う販売手数料の高い保険を勧める例もある」(竹下さん)という。「もっと安い保険はありませんか」と尋ねる姿勢が肝心だ。
インターネットなどの通信販売は、対面で説明が受けられない代わりに単純な商品が多い。保険料は割安だが、最も安いとは限らない。一部の会社が健康でたばこを吸わない人など向けに「リスク細分型保険」として、より安い保険料の商品を提供している。
団体向けも要検討
勤め先の会社などで「団体保険」に入れる人は、検討する価値がある。1年更新の定期保険が主流で、募集コストがかからないため、保険料が安い。配当金が出ることもあり「実質的な負担額でネット生保を下回ることも珍しくない」(後田さん)という。
月々の保険料について竹下さんは「手取り額の5~10%以内が無理のない水準。これ以上なら見直しが必要」と話す。後田さんは「掛け捨ての定期保険に絞れば多くの会社員は手取り額の1%程度で必要な保障が得られる」と見る(表D)。
保険会社から更新時の保険料アップなどを理由に、既存契約の「転換」を勧められた際は、よく検討することが必要だ。「転換」とはこれまでの契約でたまった解約返戻金を頭金にして、同じ会社の新しい保険に入り直すことを指す。
提案内容にもよるが、後田さんは「予定利率(保険の積み立て部分の利率に相当)が引き下げられたり、解約返戻金が失われてしまうなど契約者にとって不利な変更になることがある」と指摘する。
2011年7月10日日曜日
外貨投資の注意点は?――税制面のコストにも注目
ファイナンシャルプランナー 深野康彦氏
将来の円安を見込み、外貨投資を始めようと考えています。手法は外貨預金か外貨MMF(マネー・マーケット・ファンド)のいずれかを検討しています。助言をお願いします。(福岡県の30代女性)
2008年秋のリーマン・ショック以降、米ドルやユーロなどの主要通貨は以前に比べて金利水準が低くなっています。そのため外貨投資では、為替相場が今よりも円安になった場合に得られる為替差益が主な収益源になります。利益を得るには、円を外貨に替える際の「入り口」と、外貨を円に戻して以降の「出口」の両方のコストを意識しましょう。
「入り口」のコストは両替手数料です。外貨預金は取り扱っている金融機関が多く、通貨の種類も豊富ですが、大手銀行では1米ドルを両替するのに片道1円の手数料がかかる場合が多いようです。数十銭に抑えたネット銀行もあります。証券会社の扱う外貨MMFの場合、大手証券でも1米ドルあたり片道50銭とコストが安いほか、利回りも高めの傾向があります。いずれも、金利(外貨MMFは分配金)は20%の源泉分離課税の対象となります。
「出口」のコストにも注目しましょう。1年後、為替が円安に振れて為替差益が発生したとします。外貨預金の場合、為替差益は雑所得とみなされ、会社員なら給与所得などとまとめて総合課税されます。一方、外貨MMFの為替差益は非課税です。極端な例ですが、表の試算では課税の有無で収益に約5万7770円の差が生まれています。
相談者の所得にもよりますが、為替差益を得たことで所得が増えれば1段階上の税率を適用されるおそれがあります。専業主婦の場合は年間所得が38万円を超えると、配偶者控除の適用が受けられなくなり、夫の納税額が増えることもあります。自営業者なら世帯収入の増加により、健康保険料や介護保険料などが上昇する可能性もあります。
為替差益が非課税の外貨MMFならば、これらの心配はありません。取り扱い通貨は原則、主要通貨に限られますが、「入り口」の手数料の安さを含めて外貨預金よりも有利な運用ができるといえるでしょう。
将来の円安を見込み、外貨投資を始めようと考えています。手法は外貨預金か外貨MMF(マネー・マーケット・ファンド)のいずれかを検討しています。助言をお願いします。(福岡県の30代女性)
2008年秋のリーマン・ショック以降、米ドルやユーロなどの主要通貨は以前に比べて金利水準が低くなっています。そのため外貨投資では、為替相場が今よりも円安になった場合に得られる為替差益が主な収益源になります。利益を得るには、円を外貨に替える際の「入り口」と、外貨を円に戻して以降の「出口」の両方のコストを意識しましょう。
「入り口」のコストは両替手数料です。外貨預金は取り扱っている金融機関が多く、通貨の種類も豊富ですが、大手銀行では1米ドルを両替するのに片道1円の手数料がかかる場合が多いようです。数十銭に抑えたネット銀行もあります。証券会社の扱う外貨MMFの場合、大手証券でも1米ドルあたり片道50銭とコストが安いほか、利回りも高めの傾向があります。いずれも、金利(外貨MMFは分配金)は20%の源泉分離課税の対象となります。
「出口」のコストにも注目しましょう。1年後、為替が円安に振れて為替差益が発生したとします。外貨預金の場合、為替差益は雑所得とみなされ、会社員なら給与所得などとまとめて総合課税されます。一方、外貨MMFの為替差益は非課税です。極端な例ですが、表の試算では課税の有無で収益に約5万7770円の差が生まれています。
相談者の所得にもよりますが、為替差益を得たことで所得が増えれば1段階上の税率を適用されるおそれがあります。専業主婦の場合は年間所得が38万円を超えると、配偶者控除の適用が受けられなくなり、夫の納税額が増えることもあります。自営業者なら世帯収入の増加により、健康保険料や介護保険料などが上昇する可能性もあります。
為替差益が非課税の外貨MMFならば、これらの心配はありません。取り扱い通貨は原則、主要通貨に限られますが、「入り口」の手数料の安さを含めて外貨預金よりも有利な運用ができるといえるでしょう。
教育費、どうためる?、老後資金と分け、計画を――高校までは生活費から
保険は元本割れに注意
教育費は「家を買うのと同じくらいお金がかかる」といわれる。子供を持つ時期が遅くなり、我が子が成人するころに親が定年を迎える家庭も珍しくない。老後資金と教育費をどう両立するか、悩む人も多そうだ。今どきの教育費をどう準備していくべきか、ポイントをまとめた。
「教育費をどれだけかけるかは、各家庭の選択の問題。でも『かかる』お金と『かける』お金は分けて考えよう」。ファイナンシャルプランナー(FP)の菅原直子さんは、最初にこう助言する。女性FPでつくる「子どもにかけるお金を考える会」のメンバーで、教育費に悩む親からの相談をよく受ける。
子供に望む通りの人生を送らせてやりたい、という親心から教育費は膨らみがちだ。ただ、厚生労働省の統計によると、子供を産む女性の年齢のピークは30代。35歳以降の出産が増えている。うっかりすると教育費が老後資金を食いつぶしかねない。
子供に事前に伝達
教育費は一体どれだけかかるのか。グラフAのように公立校と私立校ではかなり違う。留学や進路によってはさらにかかる。菅原さんは「例えば義務教育を私立校で受けさせるのは、やむを得ず『かかる』お金ではなく、選択的に『かける』お金。どこまでお金をかけられるか、早めに考えるべきだ」という。
FPの竹下さくらさんは「親としてできるのはここまでと、子供に話しておこう」と提案する。「大学は国公立、大学院の費用は出せない」などと、親の財布の大きさについて、子供が進路を考える前に伝えておくべきだと話す。
親として出せる範囲の教育費。準備の基本は「取り分けること」(FPの平野泰嗣さん)だ。平野さんは「親の年齢が高ければ若いころより貯蓄はある。まとまった金額を一括して取り分ければ、毎年の負担は減る」という。普通、子供が生まれたら計画的に積み立てるべきだとされるが、これは、まだ貯蓄が少ない若い家庭に向く考え方だ。
公立コースと私立コースの中間を取って子供1人にかかる費用を1500万円と想定する。大学卒業までの22年で単純に割ると、年間70万円弱。一括して300万円を取り分ければ、1年当たりの必要額は55万円に減る。
竹下さんは「親の年齢にかかわらず、高校までの費用は生活費で賄うのが基本」という。教育費として取り分けるお金は、大学など高等教育機関の費用だ。大学入学時に必要なお金の目安はよく300万円といわれる。これは「高校までと同様に生活費で賄うだけでは足りない金額」(竹下さん)だ。
300万円と聞くと「大金をためなくてはならないと焦る親が多いが、実はそれほど苦労せずたまる」と、FPの深田晶恵さんはみる。今は手元資金がなくても「3~5歳に毎月1万円、小学生の間は月2万円、中高の6年間に月1万円ずつためると、タンス預金でも252万円になる」(深田さん)。
タンス預金だと使ってしまうので、金融商品で準備するのが普通だろう。菅原さんは、使う時期が決まっている教育費には元本割れしないものを勧める。主な元本確保型の商品を表Bで比べてみた。
低金利が続くなか、定期預金の弱みは利回りだ。個人向け国債は10年物で直近の利率が0・8%弱だが「単利なのが弱点」(深田さん)。複利効果がないうえ、利息を意識して取っておく必要がある。
利回りにあたる「返戻率(受け取る保険金が払った保険料の何%になるか)」が高めなのは、学資保険と「低解約返戻金型」の生命保険だ。保険料は払込期間が短いほど割り引かれるのが一般的。親が被保険者となる低解約返戻金型は加入時の年齢が高いと保険料が高くなって返戻率が下がるが、子供が被保険者となる学資保険は親の年齢ではあまり変わらない。学資保険で保険料を一括で払うと年齢が高い親でも最大に近い返戻率を享受できる(表C)。ただ、保険会社や付加する特約によっては返戻率が低くなる。
菅原さんは「大学への推薦入学では、高3の途中で入学費用がかかる」と注意を促す。学資保険の18歳満期では、推薦入学の入学金納付に間に合わない恐れがある。学資保険の満期は選べるのが普通で、保険会社によっては17歳満期に設定できる。
保険の最大の注意点は、途中解約で元本割れするリスクが大きいことだ。特に注意したいのは低解約返戻金型。当初何年かは解約返戻金を通常商品より低く抑えて保険料を下げる一方、後半の解約返戻金が大きく増える仕組みで返戻率を上げている。学資保険にも同様の仕組みを取り入れたものがある。早い段階で解約すると、ほぼ確実に大きく元本割れするので、保険会社からもらう毎年の返戻率試算表を熟読しよう。
また、預け先が破綻したときは、数百万円の預金なら全額保護されるが、保険は払った保険料総額より少ない金額しか戻らない恐れがある。
投資信託も手
ここ数年、親の収入が減って教育費の準備資金を取り崩さざるを得ない家庭も目立った。「予期せぬお金が必要になるリスクに備え、保険に回すのは何があっても手を付けなくていい金額にとどめるべきだ」とFPは口をそろえる。保険と預金を組み合わせるなどの分散が大切だ。
大学の費用の準備期間は17年程度ある。時間を生かし、一部を投資信託などで運用するのも一案だ。元本割れリスクはあるが利回りは高くなる可能性もある。ただ目標額に達したら、利益を確定して預金などに移すのを忘れないようにしよう。
教育費は「家を買うのと同じくらいお金がかかる」といわれる。子供を持つ時期が遅くなり、我が子が成人するころに親が定年を迎える家庭も珍しくない。老後資金と教育費をどう両立するか、悩む人も多そうだ。今どきの教育費をどう準備していくべきか、ポイントをまとめた。
「教育費をどれだけかけるかは、各家庭の選択の問題。でも『かかる』お金と『かける』お金は分けて考えよう」。ファイナンシャルプランナー(FP)の菅原直子さんは、最初にこう助言する。女性FPでつくる「子どもにかけるお金を考える会」のメンバーで、教育費に悩む親からの相談をよく受ける。
子供に望む通りの人生を送らせてやりたい、という親心から教育費は膨らみがちだ。ただ、厚生労働省の統計によると、子供を産む女性の年齢のピークは30代。35歳以降の出産が増えている。うっかりすると教育費が老後資金を食いつぶしかねない。
子供に事前に伝達
教育費は一体どれだけかかるのか。グラフAのように公立校と私立校ではかなり違う。留学や進路によってはさらにかかる。菅原さんは「例えば義務教育を私立校で受けさせるのは、やむを得ず『かかる』お金ではなく、選択的に『かける』お金。どこまでお金をかけられるか、早めに考えるべきだ」という。
FPの竹下さくらさんは「親としてできるのはここまでと、子供に話しておこう」と提案する。「大学は国公立、大学院の費用は出せない」などと、親の財布の大きさについて、子供が進路を考える前に伝えておくべきだと話す。
親として出せる範囲の教育費。準備の基本は「取り分けること」(FPの平野泰嗣さん)だ。平野さんは「親の年齢が高ければ若いころより貯蓄はある。まとまった金額を一括して取り分ければ、毎年の負担は減る」という。普通、子供が生まれたら計画的に積み立てるべきだとされるが、これは、まだ貯蓄が少ない若い家庭に向く考え方だ。
公立コースと私立コースの中間を取って子供1人にかかる費用を1500万円と想定する。大学卒業までの22年で単純に割ると、年間70万円弱。一括して300万円を取り分ければ、1年当たりの必要額は55万円に減る。
竹下さんは「親の年齢にかかわらず、高校までの費用は生活費で賄うのが基本」という。教育費として取り分けるお金は、大学など高等教育機関の費用だ。大学入学時に必要なお金の目安はよく300万円といわれる。これは「高校までと同様に生活費で賄うだけでは足りない金額」(竹下さん)だ。
300万円と聞くと「大金をためなくてはならないと焦る親が多いが、実はそれほど苦労せずたまる」と、FPの深田晶恵さんはみる。今は手元資金がなくても「3~5歳に毎月1万円、小学生の間は月2万円、中高の6年間に月1万円ずつためると、タンス預金でも252万円になる」(深田さん)。
タンス預金だと使ってしまうので、金融商品で準備するのが普通だろう。菅原さんは、使う時期が決まっている教育費には元本割れしないものを勧める。主な元本確保型の商品を表Bで比べてみた。
低金利が続くなか、定期預金の弱みは利回りだ。個人向け国債は10年物で直近の利率が0・8%弱だが「単利なのが弱点」(深田さん)。複利効果がないうえ、利息を意識して取っておく必要がある。
利回りにあたる「返戻率(受け取る保険金が払った保険料の何%になるか)」が高めなのは、学資保険と「低解約返戻金型」の生命保険だ。保険料は払込期間が短いほど割り引かれるのが一般的。親が被保険者となる低解約返戻金型は加入時の年齢が高いと保険料が高くなって返戻率が下がるが、子供が被保険者となる学資保険は親の年齢ではあまり変わらない。学資保険で保険料を一括で払うと年齢が高い親でも最大に近い返戻率を享受できる(表C)。ただ、保険会社や付加する特約によっては返戻率が低くなる。
菅原さんは「大学への推薦入学では、高3の途中で入学費用がかかる」と注意を促す。学資保険の18歳満期では、推薦入学の入学金納付に間に合わない恐れがある。学資保険の満期は選べるのが普通で、保険会社によっては17歳満期に設定できる。
保険の最大の注意点は、途中解約で元本割れするリスクが大きいことだ。特に注意したいのは低解約返戻金型。当初何年かは解約返戻金を通常商品より低く抑えて保険料を下げる一方、後半の解約返戻金が大きく増える仕組みで返戻率を上げている。学資保険にも同様の仕組みを取り入れたものがある。早い段階で解約すると、ほぼ確実に大きく元本割れするので、保険会社からもらう毎年の返戻率試算表を熟読しよう。
また、預け先が破綻したときは、数百万円の預金なら全額保護されるが、保険は払った保険料総額より少ない金額しか戻らない恐れがある。
投資信託も手
ここ数年、親の収入が減って教育費の準備資金を取り崩さざるを得ない家庭も目立った。「予期せぬお金が必要になるリスクに備え、保険に回すのは何があっても手を付けなくていい金額にとどめるべきだ」とFPは口をそろえる。保険と預金を組み合わせるなどの分散が大切だ。
大学の費用の準備期間は17年程度ある。時間を生かし、一部を投資信託などで運用するのも一案だ。元本割れリスクはあるが利回りは高くなる可能性もある。ただ目標額に達したら、利益を確定して預金などに移すのを忘れないようにしよう。
2011年7月9日土曜日
語学授業、ネットで手軽に――講師と会話、早朝・深夜も
企業の就業時間繰り上げなどで、空いた時間を語学の勉強に充てようと考えている人もいるだろう。そんな人にお勧めなのがインターネットを使ったオンラインの語学レッスンだ。自宅や職場など好きな場所で、早朝や深夜でも学べるうえ、教室の授業に比べ割安な場合が多い。サービスの内容や特徴をまとめた。
「ハロー、アイ アム エイミー(こんにちは、エイミーです)」
語学ソフト大手ロゼッタストーン・ジャパン(東京都渋谷区)は今年2月、オンラインレッスンのサービスを始めた。語学ソフト「Rosetta Stone Version 4 TOTALe」(5万4800円)は、もともとはパソコン向けの学習ソフトだが、今春から世界中の外国人講師とオンラインでつながり、会話できる機能が加わった。
¥ ¥
利用者は、画像をたくさん使った教材で学習できるほか、3カ月間、追加料金なしで何度でも外国人講師のオンラインレッスンを受講できる。
申し込みは専用画面でレッスンを予約するだけ。開始時間に外国人講師の顔が画面上に登場する。受講者はヘッドセットを付け、自由に会話したり、講師が画面に表示するテキストに基づいてやりとりの練習をしたりできる。追加料金(7000円)を支払えば期間を3カ月延ばせる。
特に会社員の利用が多く、「夜、自宅でくつろぎながら受講している方が多いようです」(PRマネジャーの金沢めぐみさん)。英語、中国語、イタリア語など24言語を学べる。
語学の学習はこれまで、主に教室に通うか、書籍やテレビ・ラジオで独学するかの2通りだったが、最近は語学教室を運営する企業も、ネットの普及に合わせてオンラインレッスンを強化している。教室と同じ教材、同じ講師の質で学べるのが特徴だ。
ベルリッツ・ジャパン(東京都港区)のオンラインレッスン「ベルリッツ・バーチャル・クラスルーム」は教室と同じ教材、同じ教授法のレッスンを提供しており、通学よりも2割ほど安い。1レッスンから申し込めるが、10~20レッスンのパッケージで申し込んだ方が1回の料金は安くなる。途中でやめる場合は、未消化分の受講料から手数料を差し引いて返還する。
教室との唯一の違いは、講師も受講者もお互いの顔が見えないこと。「ジェスチャーに頼らず会話に集中できるので、学習効果は高い」(広報担当)。需要が伸びており、講師の数を増やしているという。
人件費の安いフィリピン出身者を講師とすることで、低価格を掲げるオンライン専門サービスもある。
レアジョブ(東京都渋谷区)は、ネットで通話が無料になる「スカイプ」を使う。講師はフィリピン人。毎日1回25分間、何度受講しても月額5000円と格安だ。講師は「フィリピン大学の在校生、卒業生を中心に採用している」(広報担当の橋本羽衣子さん)。受講者は講師の性別、年齢、大学の専攻を画面上で選べるため「受講者の仕事や関心に近い分野の会話ができる」(同)という。
¥ ¥
QQイングリッシュを手掛けるキュウ急便(東京都杉並区)は、講師とスピードの速い会話を繰り返す学習法「カランメソッド」に基づいたレッスンを提供している。講師は大学の英語学科などを卒業し、研修を受けたフィリピン人。月額2980円で1回25分間、6回分受けられ、自分のペースで学習できる。
矢野経済研究所(東京都中野区)によると、2010年度の語学のeラーニング市場は、前年度比16・7%増の35億円と拡大した。身近になったオンラインレッスンだが、選ぶときに注意したいのが、画面との相性だ。講師の表情が見えにくかったり文字が小さかったりすると学習しにくい。レッスン料のほかに入学金や教材費がかかることもある。通常は数回分の無料体験レッスンを用意している場合が多いので、まず自分の目的に合わせて試してみよう。
「ハロー、アイ アム エイミー(こんにちは、エイミーです)」
語学ソフト大手ロゼッタストーン・ジャパン(東京都渋谷区)は今年2月、オンラインレッスンのサービスを始めた。語学ソフト「Rosetta Stone Version 4 TOTALe」(5万4800円)は、もともとはパソコン向けの学習ソフトだが、今春から世界中の外国人講師とオンラインでつながり、会話できる機能が加わった。
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利用者は、画像をたくさん使った教材で学習できるほか、3カ月間、追加料金なしで何度でも外国人講師のオンラインレッスンを受講できる。
申し込みは専用画面でレッスンを予約するだけ。開始時間に外国人講師の顔が画面上に登場する。受講者はヘッドセットを付け、自由に会話したり、講師が画面に表示するテキストに基づいてやりとりの練習をしたりできる。追加料金(7000円)を支払えば期間を3カ月延ばせる。
特に会社員の利用が多く、「夜、自宅でくつろぎながら受講している方が多いようです」(PRマネジャーの金沢めぐみさん)。英語、中国語、イタリア語など24言語を学べる。
語学の学習はこれまで、主に教室に通うか、書籍やテレビ・ラジオで独学するかの2通りだったが、最近は語学教室を運営する企業も、ネットの普及に合わせてオンラインレッスンを強化している。教室と同じ教材、同じ講師の質で学べるのが特徴だ。
ベルリッツ・ジャパン(東京都港区)のオンラインレッスン「ベルリッツ・バーチャル・クラスルーム」は教室と同じ教材、同じ教授法のレッスンを提供しており、通学よりも2割ほど安い。1レッスンから申し込めるが、10~20レッスンのパッケージで申し込んだ方が1回の料金は安くなる。途中でやめる場合は、未消化分の受講料から手数料を差し引いて返還する。
教室との唯一の違いは、講師も受講者もお互いの顔が見えないこと。「ジェスチャーに頼らず会話に集中できるので、学習効果は高い」(広報担当)。需要が伸びており、講師の数を増やしているという。
人件費の安いフィリピン出身者を講師とすることで、低価格を掲げるオンライン専門サービスもある。
レアジョブ(東京都渋谷区)は、ネットで通話が無料になる「スカイプ」を使う。講師はフィリピン人。毎日1回25分間、何度受講しても月額5000円と格安だ。講師は「フィリピン大学の在校生、卒業生を中心に採用している」(広報担当の橋本羽衣子さん)。受講者は講師の性別、年齢、大学の専攻を画面上で選べるため「受講者の仕事や関心に近い分野の会話ができる」(同)という。
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QQイングリッシュを手掛けるキュウ急便(東京都杉並区)は、講師とスピードの速い会話を繰り返す学習法「カランメソッド」に基づいたレッスンを提供している。講師は大学の英語学科などを卒業し、研修を受けたフィリピン人。月額2980円で1回25分間、6回分受けられ、自分のペースで学習できる。
矢野経済研究所(東京都中野区)によると、2010年度の語学のeラーニング市場は、前年度比16・7%増の35億円と拡大した。身近になったオンラインレッスンだが、選ぶときに注意したいのが、画面との相性だ。講師の表情が見えにくかったり文字が小さかったりすると学習しにくい。レッスン料のほかに入学金や教材費がかかることもある。通常は数回分の無料体験レッスンを用意している場合が多いので、まず自分の目的に合わせて試してみよう。
2011年7月5日火曜日
生協の2010年家計簿調査、支出減らし黒字増、被服費抑え堅実に
日本生活協同組合連合会が実施している家計簿調査の2010年分がまとまった。09年は前年に起こった米国発の金融不況の影響を受け、収入が大幅に減少、年間収支の黒字額も大きく減った。これに対し10年は、収入に大きな変化はないが、支出を減らして黒字が増えた。家計の堅実性が増しているようだ。
2010年全国生計費調査は全国約1400のモニター世帯に毎月、家計簿の内容を提出してもらい集計した。世帯主の平均年齢は50.8歳。平均家族数は3.5人。世帯主の63%は会社員、年金生活者などの無職18%、公務員11%などとなっている。
全モニター世帯の平均月収(ボーナスなどは12等分)は62万4213円で前年比0.6%増。前年よりわずかに増えてはいるが、01年を100とすると92.9の水準だ。給与所得世帯に限れば67万3464円で0.6%減だった。
一方、消費支出は全世帯平均で月40万7737円。前年比3.0%減と収入に比べると減少が鮮明となった。費目別に見ると「家賃地代」が前年比で10%を超える大幅減。「食費」も減少し、ここ10年では最低の金額となった。「被服費」は金額と消費支出に占める割合ともにここ10年で最低。ただ「通信費」だけは毎年のように増え続けている。
主な非消費支出である税金と社会保険料は平均で月11万1294円。前年比0.3%増とほぼ前年並み。
これらの結果、年間の収支は69万1524円の黒字。急激に黒字が減った前年と比べると金額で18万円余り、率にして36.3%の大幅増だった。
11年以降は東日本大震災を受けた景気の低迷があり、また、その復興費用を賄うためや、社会保障制度を維持するための増税も見込まれている。消費の手控えなどで黒字は維持できたとしても、家計が楽になる兆しはなかなか見えない。
2010年全国生計費調査は全国約1400のモニター世帯に毎月、家計簿の内容を提出してもらい集計した。世帯主の平均年齢は50.8歳。平均家族数は3.5人。世帯主の63%は会社員、年金生活者などの無職18%、公務員11%などとなっている。
全モニター世帯の平均月収(ボーナスなどは12等分)は62万4213円で前年比0.6%増。前年よりわずかに増えてはいるが、01年を100とすると92.9の水準だ。給与所得世帯に限れば67万3464円で0.6%減だった。
一方、消費支出は全世帯平均で月40万7737円。前年比3.0%減と収入に比べると減少が鮮明となった。費目別に見ると「家賃地代」が前年比で10%を超える大幅減。「食費」も減少し、ここ10年では最低の金額となった。「被服費」は金額と消費支出に占める割合ともにここ10年で最低。ただ「通信費」だけは毎年のように増え続けている。
主な非消費支出である税金と社会保険料は平均で月11万1294円。前年比0.3%増とほぼ前年並み。
これらの結果、年間の収支は69万1524円の黒字。急激に黒字が減った前年と比べると金額で18万円余り、率にして36.3%の大幅増だった。
11年以降は東日本大震災を受けた景気の低迷があり、また、その復興費用を賄うためや、社会保障制度を維持するための増税も見込まれている。消費の手控えなどで黒字は維持できたとしても、家計が楽になる兆しはなかなか見えない。
おさらい生命保険(上)仕組み編――目的を明確に、誤解も多く
「教育費」などに絞って
妻の保障内容にも注意
保険会社破綻の場合は減額も
日本の世帯の約9割が加入しているとされる生命保険。給与の伸びが期待しにくい中で、毎月決まって出ていく保険料は多くの家庭にとって重い負担だ。加入の目的や前提条件を整理して、基本的な知識を身に付ければ、より賢く生命保険と付き合えるはずだ。
「保険の役割は本人や残された家族の努力で賄えない大きな経済的損失に備えることに尽きる」。こう強調するのは、ファイナンシャルプランナー(FP)の内藤真弓さんだ。
公的保障不足分に
生命保険(死亡保険)とは加入者が保険料を出し合って、万一の死亡や重い障害を負ってしまった時に備える金融商品だ。「預金は三角、保険は四角」とよく例えられる。預金は時間をかけないとまとまった金額がたまらないのに対し、保険は原則、加入した時点で万一の際の保険金支払いが約束される(図A)。
「子どもがまだ小さいのに、将来の教育費が用意できていない」といった家庭が突然、一家の主な稼ぎ手を失えば、経済的損失は極めて大きい。内藤さんは「問題は遺族年金などの公的な保障、残された配偶者の収入や親族の援助などでその損失をカバーできるかどうか。不足すれば保険に頼ればいい」と説く。
FPの藤川太さんも「子育て世帯にとって保険加入の主目的は教育費の確保。ただ、生活費の高い都市部では、教育費に生活費も上乗せして考える必要がある」と語る。
表Cに主な生命保険の種類をまとめた。
定期保険は一定期間内に死亡した場合、決まった額の保険金が受け取れる。収入保障保険は死亡時期が遅くなるほど遺族の受取総額が減る。いずれも「10年」「60歳まで」など期間を定めて加入し、保険料は掛け捨てとなる。
一方、保障が一生涯続き、何歳で亡くなっても保険金が受け取れるのが終身保険。保険料は一生涯払い込む場合と、一定年齢まで払い込む場合があるが、まとまった解約返戻金が出る積み立て式のため、高い。
生命保険文化センターによると、40歳男性が20年間、毎月1万円払い込んだ場合、定期保険なら死亡時に2160万円支払われるのに対し、終身保険は305万円と7倍の開きがある。負担を抑えて、子どもの大学卒業までなど一定期間、大きな保障を得るには掛け捨ての方が優れている。
一般に末子の誕生をピークに、年を重ねるごとに、遺族に対する必要保障額は減っていく。近年、人気を集めている収入保障保険の保険料が安いのは、死亡時期が遅くなるほど遺族が年金形式で受け取る保険金の総額が減るためだ。
「過剰」なら見直し
生命保険には現在の家計を取り巻く環境にはそぐわない誤解も多い。
表Dの「(2)年収の高い人ほど高額の保障が必要?」について、内藤さんは「大企業に勤めている人ほど、過剰保障状態の人は多い。年収が高ければ遺族が受け取る遺族厚生年金の額は増える。勤め先の弔慰金や遺児育英年金なども充実していることが多いので、見直しの余地は大きい」と語る。
専業主婦世帯の数を共働き世帯が逆転して久しい。夫婦2人の収入で家計を支えているような世帯では「(3)妻の保険金額は少なくてもよい?」のケースに当てはまらないか注意が必要だ。
現行の年金制度では、妻の死後、残された子どもと夫が同居していると遺族基礎年金は支給されず、遺族厚生年金も55歳未満の子のいない夫には支給されないからだ。妻の保障内容が十分か確認しよう。
「(4)保険には貯蓄機能がある?」について、藤川さんは「保険による貯蓄が有利だったのは予定利率(保険の積み立て部分の利率に相当)の高かった1990年代半ばまでの話。貯蓄は出し入れが自由で元本割れのない預金で対応すべきだ」と強調する。
もしも、加入先の保険会社が破綻した場合、生保各社が加入する「生命保険契約者保護機構」が契約を継続する契約者保護の仕組みが用意されている。
ただし、積み立て式の商品を中心に、保険金などが減額されたり、契約時の予定利率が引き下げられたりすることがある。会社選びには経営の健全性を示す「ソルベンシーマージン比率」なども参考にするといいだろう。
妻の保障内容にも注意
保険会社破綻の場合は減額も
日本の世帯の約9割が加入しているとされる生命保険。給与の伸びが期待しにくい中で、毎月決まって出ていく保険料は多くの家庭にとって重い負担だ。加入の目的や前提条件を整理して、基本的な知識を身に付ければ、より賢く生命保険と付き合えるはずだ。
「保険の役割は本人や残された家族の努力で賄えない大きな経済的損失に備えることに尽きる」。こう強調するのは、ファイナンシャルプランナー(FP)の内藤真弓さんだ。
公的保障不足分に
生命保険(死亡保険)とは加入者が保険料を出し合って、万一の死亡や重い障害を負ってしまった時に備える金融商品だ。「預金は三角、保険は四角」とよく例えられる。預金は時間をかけないとまとまった金額がたまらないのに対し、保険は原則、加入した時点で万一の際の保険金支払いが約束される(図A)。
「子どもがまだ小さいのに、将来の教育費が用意できていない」といった家庭が突然、一家の主な稼ぎ手を失えば、経済的損失は極めて大きい。内藤さんは「問題は遺族年金などの公的な保障、残された配偶者の収入や親族の援助などでその損失をカバーできるかどうか。不足すれば保険に頼ればいい」と説く。
FPの藤川太さんも「子育て世帯にとって保険加入の主目的は教育費の確保。ただ、生活費の高い都市部では、教育費に生活費も上乗せして考える必要がある」と語る。
表Cに主な生命保険の種類をまとめた。
定期保険は一定期間内に死亡した場合、決まった額の保険金が受け取れる。収入保障保険は死亡時期が遅くなるほど遺族の受取総額が減る。いずれも「10年」「60歳まで」など期間を定めて加入し、保険料は掛け捨てとなる。
一方、保障が一生涯続き、何歳で亡くなっても保険金が受け取れるのが終身保険。保険料は一生涯払い込む場合と、一定年齢まで払い込む場合があるが、まとまった解約返戻金が出る積み立て式のため、高い。
生命保険文化センターによると、40歳男性が20年間、毎月1万円払い込んだ場合、定期保険なら死亡時に2160万円支払われるのに対し、終身保険は305万円と7倍の開きがある。負担を抑えて、子どもの大学卒業までなど一定期間、大きな保障を得るには掛け捨ての方が優れている。
一般に末子の誕生をピークに、年を重ねるごとに、遺族に対する必要保障額は減っていく。近年、人気を集めている収入保障保険の保険料が安いのは、死亡時期が遅くなるほど遺族が年金形式で受け取る保険金の総額が減るためだ。
「過剰」なら見直し
生命保険には現在の家計を取り巻く環境にはそぐわない誤解も多い。
表Dの「(2)年収の高い人ほど高額の保障が必要?」について、内藤さんは「大企業に勤めている人ほど、過剰保障状態の人は多い。年収が高ければ遺族が受け取る遺族厚生年金の額は増える。勤め先の弔慰金や遺児育英年金なども充実していることが多いので、見直しの余地は大きい」と語る。
専業主婦世帯の数を共働き世帯が逆転して久しい。夫婦2人の収入で家計を支えているような世帯では「(3)妻の保険金額は少なくてもよい?」のケースに当てはまらないか注意が必要だ。
現行の年金制度では、妻の死後、残された子どもと夫が同居していると遺族基礎年金は支給されず、遺族厚生年金も55歳未満の子のいない夫には支給されないからだ。妻の保障内容が十分か確認しよう。
「(4)保険には貯蓄機能がある?」について、藤川さんは「保険による貯蓄が有利だったのは予定利率(保険の積み立て部分の利率に相当)の高かった1990年代半ばまでの話。貯蓄は出し入れが自由で元本割れのない預金で対応すべきだ」と強調する。
もしも、加入先の保険会社が破綻した場合、生保各社が加入する「生命保険契約者保護機構」が契約を継続する契約者保護の仕組みが用意されている。
ただし、積み立て式の商品を中心に、保険金などが減額されたり、契約時の予定利率が引き下げられたりすることがある。会社選びには経営の健全性を示す「ソルベンシーマージン比率」なども参考にするといいだろう。
2011年7月3日日曜日
ネット銀の特別金利、じわり低下
ボーナスシーズン恒例となっているインターネット専業銀行の円定期預金のキャンペーンが、今年は静かだ。大手を中心に金利を競ってきたが、今夏は金利水準が一段と低下。この時期の「特別金利」を狙う預金者からは「金利が低くて妙味がない」との声も漏れる。 住信SBIネット銀行が6月17日に始めた定期預金(1年)のキャンペーン金利は年0・3%。1年前のキャンペーンに比べると0・2ポイント下がった。ソニー銀行も同じ0・3%で昨年から0・15ポイント低い水準。5月に営業を開始した大和ネクスト銀行も0・4%だ。 定期預金の金利が低調な一因は、運用手段の一つである国債の利回りが低下しているため。通常の金利が低いので、昨年並みの上乗せ幅では定期金利も下がってしまう。 日経生活モニターに登録する読者を対象にした夏のボーナス調査では、預金先として「ネット銀の定期」と答えた人は33%で昨冬から6ポイント下がった。例年、この時期に1年定期預金を組む預金者は少なくない。満期を迎えたネット銀の定期預金の行き先が注目される。 |
返戻金少ない保険、解約は損?――ローンと合わせて判断を
ファイナンシャルプランナー藤川太氏
ボーナスや給料が減り、住宅ローンの支払いが厳しくなってきました。そこで10年前に加入した低解約返戻金型の終身保険を解約しようとしたところ、中途解約は損になると聞いて迷っています。(千葉県、50歳、男性)
死亡時や高度障害状態になったときのための保障が一生涯確保できる終身保険には、一定年齢に達するまで保険料を払い続ければ、その後は保険料を払い込まなくても保障が続く商品があります。この商品では保険料の払込満了後に解約すれば、払い込んだ金額以上の解約返戻金を受け取れるのが一般的です。そのため貯蓄性の高い商品として加入する人も多いようです。
なかでも「低解約返戻金型」と呼ばれる終身保険は、1990年代末から販売が始まり、ここ数年で急激に加入者が増えました。通常の終身保険に比べ月々の保険料が割安ですが、払込期間中に解約すると、通常の終身保険に比べ解約返戻金が3割ほど少ない設定になっています。質問者が「解約すると損をする」と話しているのはこのためです。
一般的には、低解約返戻金型の終身保険は解約を慎重に考えたほうがいいでしょう。通常であれば払込期間が終われば、払い込んだ保険料の総額以上の解約返戻金が受け取れるためです。ただ、収入が大きく減り、その状況が長引く場合は損失覚悟で解約するのもやむを得ません。
質問者のように住宅ローンがある場合は、むしろ解約した方が有利な場合があります。返戻金では「損」をしますが、受け取った資金をローンの繰り上げ返済に回せば、その分利払いが軽減されるからです。条件にもよりますが、返戻金の減額分よりもローンの利払い軽減効果が大きい場合も多いようです。
ローンがない場合は現在の終身保険を「払い済み」保険に変更する手もあります。払い済み保険は保険料の支払いを停止し、解約返戻金を元手にして保険内容を変えるものです。当初の契約よりも保険金額がかなり小さくなり、特約もなくなります。払い済み保険に変更できない場合もあるので、保険会社によく確認したほうがよいでしょう。
通常は、貯蓄性の高い保険商品の金利に比べると住宅ローン金利のほうが高いので、ローンを払いながら利回りの低い保険に固執するのは得策ではありません。貯蓄と運用、ローンも含めたバランスを考えることが重要です。
ボーナスや給料が減り、住宅ローンの支払いが厳しくなってきました。そこで10年前に加入した低解約返戻金型の終身保険を解約しようとしたところ、中途解約は損になると聞いて迷っています。(千葉県、50歳、男性)
死亡時や高度障害状態になったときのための保障が一生涯確保できる終身保険には、一定年齢に達するまで保険料を払い続ければ、その後は保険料を払い込まなくても保障が続く商品があります。この商品では保険料の払込満了後に解約すれば、払い込んだ金額以上の解約返戻金を受け取れるのが一般的です。そのため貯蓄性の高い商品として加入する人も多いようです。
なかでも「低解約返戻金型」と呼ばれる終身保険は、1990年代末から販売が始まり、ここ数年で急激に加入者が増えました。通常の終身保険に比べ月々の保険料が割安ですが、払込期間中に解約すると、通常の終身保険に比べ解約返戻金が3割ほど少ない設定になっています。質問者が「解約すると損をする」と話しているのはこのためです。
一般的には、低解約返戻金型の終身保険は解約を慎重に考えたほうがいいでしょう。通常であれば払込期間が終われば、払い込んだ保険料の総額以上の解約返戻金が受け取れるためです。ただ、収入が大きく減り、その状況が長引く場合は損失覚悟で解約するのもやむを得ません。
質問者のように住宅ローンがある場合は、むしろ解約した方が有利な場合があります。返戻金では「損」をしますが、受け取った資金をローンの繰り上げ返済に回せば、その分利払いが軽減されるからです。条件にもよりますが、返戻金の減額分よりもローンの利払い軽減効果が大きい場合も多いようです。
ローンがない場合は現在の終身保険を「払い済み」保険に変更する手もあります。払い済み保険は保険料の支払いを停止し、解約返戻金を元手にして保険内容を変えるものです。当初の契約よりも保険金額がかなり小さくなり、特約もなくなります。払い済み保険に変更できない場合もあるので、保険会社によく確認したほうがよいでしょう。
通常は、貯蓄性の高い保険商品の金利に比べると住宅ローン金利のほうが高いので、ローンを払いながら利回りの低い保険に固執するのは得策ではありません。貯蓄と運用、ローンも含めたバランスを考えることが重要です。
11年度税制改正、資産運用・贈与で優遇――税務申告強化へ罰則も
金地金売却、税務署に情報
2011年度の税制改正法案のうち民主、自民、公明の3党が合意した項目が切り出され、6月下旬に国会で成立した。証券優遇税制の延長のほか、年金受給型生命保険金について00~05年分の所得税の納め過ぎ分の特別還付策が盛り込まれるなど、資産運用・贈与での優遇が目立つ。半面、所得の捕捉強化や、確定申告に絡む罰則など気になる改正点もある。個人のマネー生活に関係する税制改正を点検する。
「抜本改革を先送りする一方、与野党が合意できる項目を慌てて詰め込んだ感じだ」――。税制改正を長年ウオッチしてきた税理士の山本守之さんは今回の税制改正を辛口気味に評する。確かにそうした面は拭えないが、個人のマネー生活から見ると見逃せない改正項目も少なくない。直ちに、あるいは12年から適用される改正も多く、知っておくのが賢明だ(表A)。
証券優遇は延長
【資産運用・保険】 上場株式や公募株式投信の売却益、配当金、分配金への課税については、現在10%の軽減税率が適用されている。この証券優遇税制が13年末まで延長される。「早く本来の20%課税に戻すべきだ」との意見はあるものの、株式相場の先行き不透明感は強く、当初案通りの延長が決まった。
デリバティブの店頭取引の課税方法が12年から申告分離課税となるのも注目点だ。
例えば、個人になじみ深い外国為替証拠金取引(FX)には取引所取引と店頭取引の2種類がある。取引所取引は他の所得と合算しない「申告分離課税」(税率は20%)。利益よりも損失が多くて引き切れない損失が残る場合は、確定申告をすれば、損失額を3年間(例えば11年に生じた損失は12~14年)にわたり繰り越すことができ、翌年以降3年間の利益と相殺(損益通算)できる。
ところが店頭取引の場合、他の所得と合算する「総合課税」となり、高所得者は最高で50%(所得税と住民税の合計)の税率が適用されてきた。他の雑所得(外貨預金の為替差損益、公的年金、企業年金など)との間に限り損益通算ができるが、損失は翌年に繰り越せなかった。今回の改正ではこの違いをなくし、店頭取引も申告分離課税になる。当然、「総合課税の対象の雑所得とは損益通算できなくなる」(税理士の野水鶴雄さん)。
資産運用関連では、投資家にプラスとなる改正が目を引くが、気になる改正もある。12年から金地金、金貨を取引業者に売却する場合、その売却額の情報が業者の「支払調書」として税務署に提出される。1回の売却額が200万円以下の場合は提出されないが、多額の売却額がある人は税務署に情報を把握される。金の売却益にはもちろん税金がかかる。金価格高騰の中で課税漏れが起きないようにするため、財務省・国税庁では調書新設に踏み切った。
生命保険でも重要な改正がある。死亡保険金を年金の形で受け取る生命保険について、2000年から05年分の納め過ぎの所得税を12年6月29日までに手続きすれば還付される。
最高裁判所が昨年7月、このタイプの生命保険金について、相続税と所得税の両方を課税するのは「二重課税で違法」との判決を下したことを受けた措置。既に国は徴収し過ぎた原則06年分以後の所得税の還付手続きを実施。今回は特例的に00年分から05年分までを還付する。
土地も特例対象に
【贈与・寄付・住宅】 贈与税では父母、祖父母などから住宅購入資金をもらう際に特別に適用される非課税枠(住宅取得等資金の贈与の特例、今年は1000万円)の対象に、マイホームの新築に先立って取得する土地が加わった。ただし、贈与の年の翌年3月15日までに新築する必要がある点に注意。
寄付金税制も改正された。認定特定非営利活動法人(NPO法人)などへの寄付金について、今年の寄付分から税額控除が可能になった。高齢者による住宅のバリアフリー改修工事も税額控除が受けられるが、12年分は今年分より上限額が5万円低くなる。
【申告・罰則】 申告手続きの改正も目立つ。給与収入が2000万円を超える人や給与・退職金以外の所得が20万円を超える人は確定申告義務があるが、還付の場合は2月16日の申告開始に先立ち1月から申告できるようになる。申告義務のない人は既に1月から還付申告が可能で、これに合わせた。
年金所得者に確定申告不要制度を導入する。公的年金収入が年400万円以下で、年金以外の所得が20万円以下の年金所得者は申告しなくてもよい。ただ医療費控除などを受ける場合は申告が必要だ。
一方、故意に確定申告書を提出せず脱税した人に対する罰則が新設された。FX取引などで多額の利益を得たのに申告せず、故意に税金を免れる人が目立つのに対応したという。
納税者の権利明文化など先送り
表Bに先送りとなった税制改正の主な項目をまとめた。難色を示す向きが意外に多いのが国税通則法の抜本改正。納税者権利憲章の策定や税務調査の事前通知、納税者の更正請求可能期間の延長などが柱だが、これらが実施されると「税務署の現場の仕事は確実に増える」(税理士の岡田俊明さん)。そこで「税務署関係者までが与野党に慎重審議を働き掛けている」(民主党関係者)ともいう。
今回決まった税制改正は、罰則創設や税務調査の強化が盛り込まれている。納税者の権利の明文化が先送りされる半面、罰則の創設などが先行することに批判の声も強い。政府税制調査会専門家委員会委員の三木義一青山学院大教授は「国税通則法改正は何より必要」と語る。今後の国会の行方を見守りたい。
○給与所得控除の上限設定(高額所得者の増税)〓○成年扶養控除(23歳~69歳の親族対象)の縮減〓○特定支出控除の見直し(給与所得者の実額控除拡大)〓○退職所得課税の見直し(短期勤務の役員への課税強化)
○相続税の基礎控除の引き下げと最高税率引き上げ〓○贈与税の税率構造の緩和と相続時精算課税制度の改正(若年世代への資産の早期移転を狙う)
○地球温暖化対策のための税制創設〓○国税通則法の抜本改正
2011年度の税制改正法案のうち民主、自民、公明の3党が合意した項目が切り出され、6月下旬に国会で成立した。証券優遇税制の延長のほか、年金受給型生命保険金について00~05年分の所得税の納め過ぎ分の特別還付策が盛り込まれるなど、資産運用・贈与での優遇が目立つ。半面、所得の捕捉強化や、確定申告に絡む罰則など気になる改正点もある。個人のマネー生活に関係する税制改正を点検する。
「抜本改革を先送りする一方、与野党が合意できる項目を慌てて詰め込んだ感じだ」――。税制改正を長年ウオッチしてきた税理士の山本守之さんは今回の税制改正を辛口気味に評する。確かにそうした面は拭えないが、個人のマネー生活から見ると見逃せない改正項目も少なくない。直ちに、あるいは12年から適用される改正も多く、知っておくのが賢明だ(表A)。
証券優遇は延長
【資産運用・保険】 上場株式や公募株式投信の売却益、配当金、分配金への課税については、現在10%の軽減税率が適用されている。この証券優遇税制が13年末まで延長される。「早く本来の20%課税に戻すべきだ」との意見はあるものの、株式相場の先行き不透明感は強く、当初案通りの延長が決まった。
デリバティブの店頭取引の課税方法が12年から申告分離課税となるのも注目点だ。
例えば、個人になじみ深い外国為替証拠金取引(FX)には取引所取引と店頭取引の2種類がある。取引所取引は他の所得と合算しない「申告分離課税」(税率は20%)。利益よりも損失が多くて引き切れない損失が残る場合は、確定申告をすれば、損失額を3年間(例えば11年に生じた損失は12~14年)にわたり繰り越すことができ、翌年以降3年間の利益と相殺(損益通算)できる。
ところが店頭取引の場合、他の所得と合算する「総合課税」となり、高所得者は最高で50%(所得税と住民税の合計)の税率が適用されてきた。他の雑所得(外貨預金の為替差損益、公的年金、企業年金など)との間に限り損益通算ができるが、損失は翌年に繰り越せなかった。今回の改正ではこの違いをなくし、店頭取引も申告分離課税になる。当然、「総合課税の対象の雑所得とは損益通算できなくなる」(税理士の野水鶴雄さん)。
資産運用関連では、投資家にプラスとなる改正が目を引くが、気になる改正もある。12年から金地金、金貨を取引業者に売却する場合、その売却額の情報が業者の「支払調書」として税務署に提出される。1回の売却額が200万円以下の場合は提出されないが、多額の売却額がある人は税務署に情報を把握される。金の売却益にはもちろん税金がかかる。金価格高騰の中で課税漏れが起きないようにするため、財務省・国税庁では調書新設に踏み切った。
生命保険でも重要な改正がある。死亡保険金を年金の形で受け取る生命保険について、2000年から05年分の納め過ぎの所得税を12年6月29日までに手続きすれば還付される。
最高裁判所が昨年7月、このタイプの生命保険金について、相続税と所得税の両方を課税するのは「二重課税で違法」との判決を下したことを受けた措置。既に国は徴収し過ぎた原則06年分以後の所得税の還付手続きを実施。今回は特例的に00年分から05年分までを還付する。
土地も特例対象に
【贈与・寄付・住宅】 贈与税では父母、祖父母などから住宅購入資金をもらう際に特別に適用される非課税枠(住宅取得等資金の贈与の特例、今年は1000万円)の対象に、マイホームの新築に先立って取得する土地が加わった。ただし、贈与の年の翌年3月15日までに新築する必要がある点に注意。
寄付金税制も改正された。認定特定非営利活動法人(NPO法人)などへの寄付金について、今年の寄付分から税額控除が可能になった。高齢者による住宅のバリアフリー改修工事も税額控除が受けられるが、12年分は今年分より上限額が5万円低くなる。
【申告・罰則】 申告手続きの改正も目立つ。給与収入が2000万円を超える人や給与・退職金以外の所得が20万円を超える人は確定申告義務があるが、還付の場合は2月16日の申告開始に先立ち1月から申告できるようになる。申告義務のない人は既に1月から還付申告が可能で、これに合わせた。
年金所得者に確定申告不要制度を導入する。公的年金収入が年400万円以下で、年金以外の所得が20万円以下の年金所得者は申告しなくてもよい。ただ医療費控除などを受ける場合は申告が必要だ。
一方、故意に確定申告書を提出せず脱税した人に対する罰則が新設された。FX取引などで多額の利益を得たのに申告せず、故意に税金を免れる人が目立つのに対応したという。
納税者の権利明文化など先送り
表Bに先送りとなった税制改正の主な項目をまとめた。難色を示す向きが意外に多いのが国税通則法の抜本改正。納税者権利憲章の策定や税務調査の事前通知、納税者の更正請求可能期間の延長などが柱だが、これらが実施されると「税務署の現場の仕事は確実に増える」(税理士の岡田俊明さん)。そこで「税務署関係者までが与野党に慎重審議を働き掛けている」(民主党関係者)ともいう。
今回決まった税制改正は、罰則創設や税務調査の強化が盛り込まれている。納税者の権利の明文化が先送りされる半面、罰則の創設などが先行することに批判の声も強い。政府税制調査会専門家委員会委員の三木義一青山学院大教授は「国税通則法改正は何より必要」と語る。今後の国会の行方を見守りたい。
○給与所得控除の上限設定(高額所得者の増税)〓○成年扶養控除(23歳~69歳の親族対象)の縮減〓○特定支出控除の見直し(給与所得者の実額控除拡大)〓○退職所得課税の見直し(短期勤務の役員への課税強化)
○相続税の基礎控除の引き下げと最高税率引き上げ〓○贈与税の税率構造の緩和と相続時精算課税制度の改正(若年世代への資産の早期移転を狙う)
○地球温暖化対策のための税制創設〓○国税通則法の抜本改正
2011年7月2日土曜日
自宅の外壁、補修するには――損傷に合わせ方法選ぼう
いよいよ台風のシーズン。地震などでマイホームの外壁にひびが入ったまま放置しておくと、雨漏りがしたり、壁の劣化が進んだりしかねない。大切な自宅を長持ちさせるためにも、外壁の修繕方法や注意点をまとめた。 「まさか、自分の家がこんな状況とは」。東京都大田区に住む真田孝一さん(仮名)は、東日本大震災の翌日、3階建ての自宅の外壁を見て驚いた。あちこちでひび割れや剥落が起きていたからだ。 真田さん宅の外壁は、セメントと砂などを水と練り合わせてつくるモルタルを塗り、さらに塗料で覆う方式。ひびが小さければ応急処置として、自分でコーキング材などを使って埋めることも可能だ。手軽で費用も安いが、補修部分が多いと美観を損なう。コーキング材の寿命も塗料での塗装に比べると短い。 ¥ ¥ 損傷がひどいため、真田さんは自前での修繕をあきらめ、2つの業者に見積もりを依頼した。1社はハウスメーカーで、もう1社は大田区から紹介された地元の工務店だ。2社の提案はまったく違った。 ハウスメーカーは、現在のモルタルをすべてはがしサイディングという板状のパネルを張る方式を提案した。理由の一つは、モルタル壁に比べメンテナンス性や美観が優れている点だ。建物にとって、水分の浸透は禁物。新しいモルタルを一部だけ使うと新旧のモルタルの接着部分などで細かい隙間などが生じやすい。 また、部分的な塗装だと美観も良くない。 一方、工務店は従来と同じモルタル壁による改修・塗装をすすめてきた。最大の理由が費用の安さだ。外壁全体をサイディングに替えると、古いモルタルの解体処分費がかかる。ハウスメーカーの見積書では、解体処分費が工務店の見積もりの10倍以上だった。 モルタルでは塗料やコーキング材などの性能が向上している点も見逃せないという。耐久性や柔軟性、止水性が増し、新旧のモルタルが併存しても従来ほど問題は生じないという。 モルタル壁の補修では、新たな技術も登場している。横浜市にある工務店のスズコーは、米国生まれの「EAGLE8」という製品を今春から使い始めた。特殊セラミックスを使った粉状の原料を水と混ぜてから塗り込む。 同社の岩倉春長社長によると、従来のコンクリートに比べ強度が2~3倍、曲げ強度で4倍以上の性能があり、ひび割れ部分に塗れば、強度が高まるという。単価は1平方メートルあたり数万円と従来の補修材と比べてかなり割高だ。このためスズコーは、住宅の外壁全体に使うのではなく、部分補修としての利用に向いているとしている。 外壁に限らず、住宅のリフォームで消費者の頭を悩ますのが、工法や製品の選択肢が多く、最適な工法や工事の適正価格がわかりにくいことだ。国土交通省の調査によると、リフォームについて消費者からは「見積もりが適切か不明」「費用が当初予定より超過した」といった声が多い。 業界でも外壁修繕について不明朗な事態を改善しようと、全国住宅外壁診断士協会を設立。今年から民間資格の「外壁診断士」と「外壁アドバイザー」の認定を始めた。外壁診断士は、建物の構造に関する講義を受けて試験に合格した場合に付与される。資格保有者数は2つ合わせてまだ60人強で、今後増える見込みだ。また同協会では、適正な外壁工事業者かどうかを見分けるポイントを5つ挙げている(表2)。 ¥ ¥ 工事を依頼するのなら、信頼できる業者を選び、費用もできるだけ安くしたい。ただ工事価格には、材料費や解体処分費などが含まれており、わかりにくい。ファイナンシャルプランナー(FP)の岩永慶子さんは「少なくとも、その工事の大まかな平均単価は知っておくべきだ」と指摘する。 国土交通省の報告書によると、2006年の屋根や外壁などの塗り替え工事の全国平均は216万円、屋根のふき替え工事は147万円となっている。 住宅リフォームは、経年劣化や家族構成の変化などでいずれ必要になる。ただ、子育てや住宅ローンを抱える30~40代などはリフォーム資金を別建てで用意しにくい。岩永さんは、「貯蓄型の死亡保障保険でリフォーム資金を積み立てるなど、複数の使い道に対応する形で準備する方法もある」とアドバイスしている。 |
2011年7月1日金曜日
家計への過度な負担回避を
景気は震災後の落ち込みから立ち直りつつある。この間、企業と家計を比べるとマインド指標、支出統計(設備投資と個人消費)ともに企業の回復が先行している。各種リストラを通じ、財務や収益基盤が強固な企業。一方で、所得の頭打ちが続く家計。両者の隔たりは大きい。家計には、この先も負担増が続く。
第1は身近な物価の上昇。震災以降、飲料水などの特売の頻度が低下し、実質値上げが進んでいる。電気料金の値上げも必至とみられる。
第2は所得税増税。子ども手当見合いで、各種の所得控除が廃止される。復興債の償還財源としての定率増税や、B型肝炎訴訟の和解金を賄う財源としても期待される。
第3は消費税率の引き上げ。税と社会保障の一体改革の議論にあるように、遠からず10%までは上がるだろう。
となれば、家計は自衛的な節約志向を強める。持続不可能な給付と負担のアンバランス、厳しい財政事情を憂慮する当局の思いを、強く共有する。ただ、いささか家計への負担増が性急に映る。消費税率引き上げは粛々と進めるにしても、所得税増税には慎重さが求められる。過去2回の消費税増税時には、所得税減税が先行実施された。
担税能力に注目して復興に必要な財源を決めることに一理はある。もっとも、所得稼得の背後での人的投資や努力を軽視すると、勤労やリスクテイクの意欲を阻害し、経済の活力をそぐ。本来は事後的な平等ではなく、事前的な機会均等を重視すべきだ。同時にセーフティーネットを充実させ、再挑戦可能な社会を志向し、経済を活性化する必要がある。財政の帳尻合わせだけでなく、目指すべき国家像や理念を伴う増税でなければ支持は広がらない。
被災地の復興を進める際には民間資金を活用するPFIを促進し、公的支出を抑える。復興財源には政府保有株の売却も検討し家計負担の軽減を図るべきではなかろうか。
第1は身近な物価の上昇。震災以降、飲料水などの特売の頻度が低下し、実質値上げが進んでいる。電気料金の値上げも必至とみられる。
第2は所得税増税。子ども手当見合いで、各種の所得控除が廃止される。復興債の償還財源としての定率増税や、B型肝炎訴訟の和解金を賄う財源としても期待される。
第3は消費税率の引き上げ。税と社会保障の一体改革の議論にあるように、遠からず10%までは上がるだろう。
となれば、家計は自衛的な節約志向を強める。持続不可能な給付と負担のアンバランス、厳しい財政事情を憂慮する当局の思いを、強く共有する。ただ、いささか家計への負担増が性急に映る。消費税率引き上げは粛々と進めるにしても、所得税増税には慎重さが求められる。過去2回の消費税増税時には、所得税減税が先行実施された。
担税能力に注目して復興に必要な財源を決めることに一理はある。もっとも、所得稼得の背後での人的投資や努力を軽視すると、勤労やリスクテイクの意欲を阻害し、経済の活力をそぐ。本来は事後的な平等ではなく、事前的な機会均等を重視すべきだ。同時にセーフティーネットを充実させ、再挑戦可能な社会を志向し、経済を活性化する必要がある。財政の帳尻合わせだけでなく、目指すべき国家像や理念を伴う増税でなければ支持は広がらない。
被災地の復興を進める際には民間資金を活用するPFIを促進し、公的支出を抑える。復興財源には政府保有株の売却も検討し家計負担の軽減を図るべきではなかろうか。
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