学校に行っても所属する教室で授業を受けず、相談室や保健室で過ごす「別室登校」の子供たちへの支援を各地の教育委員会が本格化させている。専用教室を設けて学習支援員を配置したり、対応法をまとめた冊子を配布したり。不登校の児童生徒数が高止まりを続ける中、学校離れを防ぎクラスに復帰する足がかりとして、別室でのケアを重視する動きが広がっている。
4日午前、山形県天童市の市立第四中学校で、理科の男性教員が顕微鏡を使った植物細胞の観察方法を教えていた。生徒は2年の女子(13)1人。「倍率を上げてみよう。何が見える?」「緑色の粒がいっぱい」。2人しかいない教室で、丁寧な指導が続いた。
同校は「マルチルーム」と呼ぶ別室登校の生徒専用の教室を設け、教員免許を持つ「別室登校学習支援員」を配置。時間割を作り他の教員と手分けして授業をするほか、担任も交えて生徒の様子を話し合う連絡会を毎日行う。現在は8人が在籍し、本来のクラスへの復帰を目指す。
人と接するのが苦手で不登校になり、2年生になって同ルームに通い始めた女子生徒は「勉強で分からないところを先生に一つ一つ聞けるのがよい。クラスに戻った時に皆に追いつけるようにしたい」。
星淳一校長は「以前は担任教師らが授業の空き時間に別室を訪れる程度で、自習が中心だった。きちんと指導する態勢があることで生徒の勉強への意欲も高まっている」と話す。
7割の生徒に効果
こうした支援策は2年前、県教委が始めた。県内中学校のほぼ5分の1の20校に支援員を配置し、教員やスクールカウンセラーらと連携して学習指導を行う。2009年の調査では別室登校をしていた生徒422人のうち306人が半年後にクラスに戻るなどの成果が確認できたという。
不登校などの実態に詳しい京都教育大の本間友巳教授(臨床心理学)によると、別室登校が広がり始めたのは1990年代末ごろ。文部科学省が不登校対策でスクールカウンセラーの増員、校内相談室の整備などを促した結果、「従来は不登校になっていた子が別室で過ごすケースが増えた」。
それでも人手不足の学校現場できめ細かい指導は難しく、自習させるだけなど対応は進まなかった。文科省も別室登校は「定義が難しい」として全国的な実態調査を行っていない。
しかし小中学校の不登校者数は毎年10万人を超え、各地の教委は対策に本腰を入れざるを得ない状況に。その中で不登校になりそうな子の受け皿になり、クラス復帰を目指す子が学校生活に慣れる場にもなる別室に改めて注目が集まった。
教委がガイド配布
新潟市教委は昨年、別室登校をする子供への対応方法をまとめたガイドブックを作って小中学校に配布。教員からの「別室登校の子の支援態勢をどう構築すればいいか分からない」「教職員で対応方法を打ち合わせる時間が取れない」といった声に応えた。
1人になりたい子が安心できるよう、別室内に間仕切りをしたスペースを用意することや、プリント類や学級便りを別室登校の子にも届けてクラスの一員という意識を持たせるなど、配慮すべき点を紹介。別室登校になりそうな時からクラスに復帰し始めた時までを6段階に分け、具体的な対応方法も示した。
別室登校の実態を把握し、効果的な対策を見つけようとする試みも始まった。京都府教委は昨年、京都市立を除く府内の全公立小中343校を調査。小学校の26%、中学校の78%に別室登校の子がいることが判明した。中学生では別室で教員が個別に学習指導にあたる場合の方が自習のみの場合よりも元のクラスに復帰しやすい傾向も分かった。
調査の中心になった府総合教育センターの山本岳教育相談部長は「別室登校を解消できたケースでは教職員が子供と信頼関係を築けていることが多い。別室で過ごす子供をそのままにせず、きちんと向き合う大切さを実感した」と話す。今年度は別室登校する子供やその保護者にもアンケートし、有効策を探るという。
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