自治体・NPO 支援活動広がる
少子化や家族形態の変化は専業主婦の子育てにも影響を及ぼした。多忙な夫の助けはなかなか得られず、近所付き合いも希薄になっている中で孤軍奮闘を迫られる。専業主婦だからできて当たり前――。夫や周囲のそんな先入観がさらに追い打ちを掛ける。専業主婦の目線から少子化社会の実情を検証してみる。
「子どもがなぜ泣くのか分からない。あやしても怒鳴っても泣きやまない。何度も子どもに手を上げそうになった」。埼玉県の主婦A子さん(35)は2歳の一人息子が生まれて間もないころの生活をこう振り返る。「出産前はわが子を虐待する親がいるなんて信じられなかった。でも今は分かる。孤立感が深まると精神的に参ってしまうんです」
常勤者より悩む
百貨店に勤めていたが結婚して退社。間もなく妊娠し、東京から埼玉へ引っ越した。両親も友人もいない初めての土地で慣れない育児。残業がちの夫の帰宅は夜10時。外出もせず、母子2人きりで夫の帰りを待った。「子育てがここまで孤独だとは想像もしていなかった」と打ち明ける。
子育ての悩みは専業主婦より働く母親の方が深そうだが、実は逆だ。ベネッセ次世代育成研究所の幼児の生活アンケート(2010年3月調査、回答=乳幼児を持つ3522人)によると、子育てに否定的な感情を持つ母親の比率はほとんどの項目で専業主婦が常勤者を上回る。1995年以降5年ごとに調査を繰り返しているが、この傾向は変わらない。
親との同居が減り、近所付き合いも希薄になった。まして少子化で出生数が減少傾向で、月齢が近い母子と近所の公園などで出会う機会も減っている。主任研究員の高岡純子さんは「ワーキングマザーは時間のやりくりは大変だが、子育てが生活のすべてではなく、精神的なバランスが取れる。専業主婦は子育てが主。孤立しやすくストレスをより強く感じる」と説明する。
支援の手を差し伸べる動きもある。東京都江東区が5月に始めたマイ保育園登録制度もその一つだ。希望の区立保育園に事前登録すると、身体測定や育児相談など定期イベントに参加できるほか、困ったときはいつ園を訪ねてもよく、保育士などが相談に乗る。保育園を専業主婦にも開放し、子育て不安を解消する狙いだ。6月時点の登録は657人に上る。
亀戸第三保育園が12日に開いた身体測定には19組の母子が集まった。生後7カ月の長男を伴って参加した主婦(35)は関西出身で1年前に夫の転勤で引っ越してきた。「離乳食の作り方が分からず相談したら、丁寧に教えてもらえた。身近に頼れる存在ができてとても助かる」と話す。
特定非営利活動法人(NPO法人)ホームスタート・ジャパン(東京都新宿区)はボランティアが自宅に直接出向き、相談に乗ったり話し相手になったりする「家庭訪問型子育て支援」を全国に広めている。専業主婦らの孤独感や孤立の解消を目的に70年代に英国で始まった活動で日本に06年に導入され、趣旨に賛同し、研修を修了した市民団体やNPO法人などが全国24市区町で活動している。
熊本市では市民団体「親育ち支援の会ポトフ」が08年から活動している。1回の訪問は約2時間。それを週1回、6週続ける。公益団体などから資金援助も受けており、利用者の個人負担は無料だ。
主婦B子さん(38)は09年12月から翌年まで訪問支援を受けた。一人息子の6カ月健診を受けたとき、育児ストレスが高いと判断した保健師が利用を勧めた。赤ちゃんと接するのは初めて。泣き出すとただおろおろするばかりで、怖くて風呂にも入れられない状態だったという。
訪問したボランティアは子育て中の3児の母(35)。初回、子育てに手いっぱいで家事に手が回らないと落ち込むB子さんに「1人目はそんなもの。最初から家事も育児も完璧にこなさなくても大丈夫」と声を掛けた。「親身になって話を聞いてくれ、こちらのつらさを受け止めてくれるので救われた」と振り返る。
夫の理解が重要
子育て不安の解消は少子化対策としても欠かせない。不安が高い母親ほど次の子どもの妊娠・出産をためらう傾向があるからだ。国が検討中の「子ども・子育て新システム」でも、ワーク・ライフ・バランス(仕事と家庭の調和)推進や保育園の待機児童解消などとともに、専業主婦世帯向けの子育て支援策が重点課題になっている。
解決の糸口は家庭内にもある。地域で子育て支援事業に取り組むNPO法人新座子育てネットワーク(埼玉県新座市)代表理事の坂本純子さんは「重要なのは夫の理解。『昼間、母子で機嫌良く過ごしているんだろう』くらいにしか思っていない父親が今も多い。ときには妻を育児から解放し、一人で出掛ける機会をつくってあげてほしい」と助言する。
先輩ママから助言 ツイッター活用も
在宅で子育てをする母親の間で、ミニブログ「ツイッター」を孤立感解消に使う動きも広がっている。
10年10月に開設した「子育てママッター」(http://momtter.jp/)もその一つだ。登録して子育てに関する相談を持ちかけると、ほかの登録者からツイッターを通じて回答もくる。今では登録者は3千人を超えている。
立ち上げたのはウェブプロデューサーの内海裕子さん。2歳の息子を持つ母親だ。きっかけは自らの体験。息子は1歳になっても離乳食を食べてくれず、ツイッターで悩みを打ち明けたら、先輩ママから「大丈夫。食べ始める時期は子どもそれぞれ」と返事があり、救われたという。携帯電話からも使えるので授乳しながら片手で短時間で操作できるのも便利だったという。
「在宅で育児をしていてつらいと感じたとき、だれかの共感が大切。第三者からの『大変だよね』の一言で心が楽になる。外出もままならない育児期の不安やストレス解消にツイッターはちょうど手ごろな手段だ」と強調する。
0 件のコメント:
コメントを投稿