個人が掛け金を積み立てて預貯金や投資信託などで運用、成績次第で老後の給付額が変わるのが個人型確定拠出年金制度(個人型401k)。税制優遇が手厚く、老後資金づくりに役立つ仕組みだが、あまり知られておらず、利用はごく少数にとどまっている。仕組みと賢い使い方を探った。
「税金を減らせるのが魅力」と話すのは2007年から個人型401kで老後資金を積み立てている都内の食品会社勤務、浜島和夫さん(仮名、39)。所得税や住民税は、課税所得に税率をかけて計算する。個人型401kの掛け金は全額、所得控除されるのでその分課税所得が減り、税金も少なくなるわけだ。
個人型401kが使えるのは、自営業者と、独自の企業年金をもたない会社員(表A)。掛け金の上限額は自営業者で月6万8000円、会社員で月2万3000円だ。
浜島さんは会社員の上限である月2万3000円(年27万6000円)を積み立てている。所得税・住民税を合わせた上限税率(その人の課税所得のうち最も高い部分に適用される税率)が15%なので、年に4万1000円強税金が減る。今後も税率などが一定なら、削減効果の累計は20年なら83万円弱になる。
個人型401kは銀行、証券、生命保険会社など多くの金融機関(運営管理機関)が扱っていて、選んだ金融機関が提示した商品から自分で選択し、運用する。浜島さんは「リスクのある運用は怖いのでは大半は預貯金」。大きな運用益は望めないが「税金が減るだけ、自分で普通に貯金するより得」と割り切る。
税率が高く掛け金が多いほど税の削減効果も大きくなる(表B)。やはり07年から個人型401kを開始、外国株などの投信で運用している静岡県の開業医、上田信吾さん(仮名、43)は、収入が多く上限税率が50%。自営業者の掛け金の上限である月6万8000円をかけ続けているので「年間40万円以上の税金が減る」。ちなみに加入者全員の掛け金の平均は1万6000円強だ(グラフD)。
運営管理機関ごとに定められた手数料が、拠出期間中、通常は年2000~6000円程度かかる(各運営管理機関と、実施主体である国民年金基金連合会などの合計)。ただ大半は所得控除に伴う節税効果が大きく上回る。SBI証券やスルガ銀行のように、一定の条件で運営管理機関分の手数料がゼロのところもある。ほかに投信の信託報酬などがかかる。
運用期間中は運用益に課税されない。「株や債券の投資信託を使い、運用益を元本に加えていくことによる複利効果で、大きく資産を増やすことも可能」(確定拠出年金教育協会の秦穣治専務理事)だ。ただし、運用に失敗すると元本割れするリスクもある。
60歳まで出せず
受け取りは原則60歳以降、一時金と年金形式の両方を選べる。例えば一時金で受け取る場合は退職所得控除がある。控除額は20年までは年間40万円、その後は70万円なので、30年積み立てれば1500万円(40万円×20年+70万円×10年)まで、元本と運用益を合わせて非課税だ。
年金に詳しいファイナンシャルプランナー(FP)の山崎俊輔さんは、自分も個人型401kの積み立てを続けている。「通常は会社員しか恩恵を受けられない退職所得控除を、自営業者でも使えるのは大きな利点」
個人型401kに加入できる対象者は3000数百万人に達するとみられる。02年の導入後まもなく10年になるが、加入者はまだ12万人強。「節税メリットなどが十分知られていないためで、もったいない話」(山崎さん)
「金融機関にとっては、少しずつしか残高が増えないので手間の割にうまみが少ないビジネス。このため積極的にPRしなかった」(大手金融機関)ことも大きいようだ。
「注意点は、原則60歳まで引き出せないこと」(教育協会の秦さん)。最近は突然のリストラなどで急に資金不足になり、金融機関などに「401kでためたお金をどうしても出させてくれ」と訴える人もいる。しかし、残高50万円以下など非常に限られた場合以外は法律上不可能だ。老後まで使わないでいい余裕資金を充てるべきだし、教育資金や住宅資金には向かない。
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