2011年7月19日火曜日

将来の給与・年金が不安…、現役世代、守りの貯蓄

 給与削減や年金給付の減額、増税への不安から、現役世代が貯蓄を積み上げている。家計の貯蓄率はほぼ一貫して低下しているが、貯蓄を取り崩して消費に回す高齢者を除けば約30年ぶりの高水準にある。所得が減るなかでも現役世代が貯蓄に励むのは、将来に備えた「自己防衛」。先行き不安を解消しないと個人消費は本格回復しそうにない。(大塚節雄)
 可処分所得のどの程度を貯蓄に振り向けたかを示すのが貯蓄率。日本の貯蓄率は石油ショック前後の1970年代半ばをピークに低下傾向にある。90年代初めには15%程度だったが、2009年には5%となった。
 最近になって貯蓄率が急速に落ち込んでいるのは、高齢化の影響とみられる。内閣府の分析によると、60~69歳の高齢者世帯では年金など可処分所得の1・2~1・9倍を消費に使う。こうした高齢者世帯の割合が増えたことで全体の貯蓄率が下がった格好だ。
 高齢化の影響を除くと貯蓄率の動きはどうなるか。BNPパリバ証券は貯蓄率の変動要因を所得や物価、高齢化(65歳以上の人口割合)に分けたうえで、高齢化の要因を除いた現役世代の貯蓄率を試算した。
 それによると、現役世代の貯蓄率は90年代以降は20%前後で、2000年代半ばからは緩やかな上昇基調にある。直近09年の全体の貯蓄率は5%だが、高齢化で18ポイント程度押し下げられており、これを除けば貯蓄率は23・4%と、78年以来の高水準となった。
 年齢層ごとに貯蓄率の動きが確認できる家計調査の10年のデータでも、世帯主が40歳代の家計(勤労者世帯)の貯蓄率は5年前と比べて3・7ポイント上昇。一方で高齢者が多い無職世帯では4・4ポイント低下している。
 もっとも、家計が貯蓄を積み上げる動機は変わっている。金融広報中央委員会の10年のアンケート調査で、金融資産を持つ理由について「老後の生活資金」と答えた家計は全体の6割以上。回答割合は10年前から8ポイント近く上昇した。その一方で「住宅取得」や「子供の教育」などが目的の貯蓄は落ち込んでいる。
 将来不安から貯蓄に走る家計。最近10年間に40歳代の所得は約6%減ったが、貯蓄率は上昇傾向にあり、その分だけ消費に回す金額は目減りしている。問題が深刻なのは若年層ほど、自己防衛が強いことだ。将来受け取る年金額には全体の45%が不安を抱えているが、世帯主が20~40歳代に限るとその割合は60%近くに跳ね上がる。
 BNPパリバの河野龍太郎チーフエコノミストは、現役世代の貯蓄率の上昇傾向が年金に対する不信感が強まった時期と重なると分析。「社会保障制度の持続性や将来の増税に対する不安が消費を抑えている」と強調する。「目先の失業や給与カットへの不安が大きい」(バークレイズ・キャピタル証券の森田京平チーフエコノミスト)という指摘も多い。

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