2011年6月29日水曜日

渇電首都圏の夏 休み増えても喜べない、収入・雇用、派遣にしわ寄せ。

 「7月から週休3日なんだって」。国が夏の節電目標を15%と定めた5月中旬、東京都内の大手メーカー本社で派遣社員として働く50代の独身女性は、職場で同僚の正社員から聞いた言葉に耳を疑った。「どうしよう」。今後の生活への不安が襲ってきた。
「今年だけなら」
 これまでは週休2日で月20万円弱の手取り。週休3日になれば約4万円減る計算だ。毎月の家賃(7万円)を払い、生活費をやりくりしながら趣味の演劇鑑賞を2~3回、楽しんでいたが、「この夏は劇場に足を運ぶのを控えざるを得ない。バーゲンにも行けないかも」と表情を曇らせる。
 週休3日は最大3カ月。来年以降については会社側からの説明はなく、「今年だけなら我慢できるけど」。
 以前の派遣先では、2008年のリーマン・ショックをきっかけに、「雇い止め」にあった。「正社員になりたいが、年齢もあって、難しい」とため息をつく。
 東京都心部の機械販売会社で働く別の派遣社員の女性(38)の目下の悩みは「長期夏休み」の取得だ。電力使用を減らすため、派遣先は7月と8月に9日間ずつ、本社ビルを一斉消灯。派遣社員を含め全員が“強制休暇”となる。
 職場の正社員の中には、楽しげに家族旅行の計画を話したり、旅行会社のホームページを見たりする人がいる。「収入が減り、とてもそんな気分にはなれない」。短期のアルバイトで減収の穴埋めに充てるつもりだ。
 東日本大震災と福島第1原子力発電所事故に伴う電力不足は、企業活動に大きな影響を与えた。操業を縮小する例も多く、休暇取得の促進や勤務の形態などが変わる企業も相次ぐ。
 最もしわ寄せを受けるのは、派遣社員ら非正規労働者。雇用環境は被災地以外でも厳しく、3県を除く4月の完全失業率は4・7%と、6カ月ぶりに悪化。厚生労働省が調べた3~5月の非正規労働者の雇い止めは約1万4千人に及んでいる。
節電で仕事白紙
 個人加入の労働組合「派遣ユニオン」によると、電子部品工場で働く予定だった男性の派遣社員2人の仕事が5月中旬、白紙になった。説明された理由は「節電」。男性側は派遣元と交渉し、1カ月後に、別の仕事が決まった。
 「震災で3週間ほど、自宅待機になった」「休業手当は受け取れないのか」。東京の3弁護士会が24日、開設した電話相談には、震災や節電に伴う労働相談が寄せられた。労働問題に詳しい水口洋介弁護士は「節電は社会全体の課題だが、非正規など、弱い立場の労働者に減収などの負担が回りやすい」と分析する。
 厚生労働省は震災後、派遣労働者らの仕事がなくなったり賃金が減ったりしないよう事業者に呼び掛けている。また、労働基準法では会社都合の休業の場合、会社が従業員に賃金の6割以上を手当として支払うことを義務付けているが、「節電で勤務日数が減るような場合、必ずしも支払い義務があるわけではない」(同省)。
 派遣社員らにとって家計への負担は軽くなく、救済を求める声は多い。

2011年6月28日火曜日

ネットでの会社説明会――わかりやすさ工夫、投資の判断材料に

 「建機用、車載用などの高効率なモーターに、引き合いが殺到している」。日本電産の創業者、永守重信社長の力強い声が響く。
 とはいってもこれはインターネットの配信。同社が4月に実施した2011年3月期決算のアナリスト向け説明会の様子だ。同社のホームページの「株主・投資家情報」のコーナーで7月初旬まで聞ける。
 画面では永守社長の声に合わせて決算説明会用の資料が次々に表示され、部門別の売り上げや利益の推移が、棒グラフなどで一目でわかる。
 後半では出席したアナリストからの質問に永守社長が「いつまでも旧来の事業ばかり見ていると、うちの将来像を見間違えますよ」と答えていた。こうしたやりとりは、同社に投資を考えている個人投資家にも参考になるはずだ。
 ボーナスで株式投資を考えている人も多いだろう。決算書などを読んで分析するのは結構骨が折れるが、こうした会社説明会では、会社側が資料なども工夫して説明しているので、非常にわかりやすいことが多い。
 最近、同社のように決算説明会や株主総会の様子を、動画、もしくは音声でネットで配信する会社がかなり増えてきた。全体の数は明らかでないが、それぞれの業種の主要企業の多くは、配信を始めている。ソフトバンクのように過去数年分の説明会も見られる会社では、業績動向をさかのぼって検証もできる。
 投資だけでなく、就職などを考える際に会社の姿を知るにも有効だ。各企業の「投資家情報」などのコーナーで、そうした配信がないか調べてみよう。
 中でも迫力があり引き込まれるのは、冒頭の永守社長のような創業社長。一方で資料を幹部がだらだらと読み上げる中で「世界景気の回復の遅れで……」「震災の影響が大きく……」など外部環境の悪さばかりを強調し、見ているのが疲れてくる企業もある。

クレジットカード――「国際ブランド」国越え利用

「ビザ」など 加盟店多く防犯に力
「JCB」など 旅行や娯楽で特典充実
 日常生活でよく使うクレジットカード。券面をみると、カラフルなロゴマークがついていることが多い。このロゴはカードの「国際ブランド」といわれるもので、必ずしもカード発行会社のマークではない。国際ブランドの役割を知って、クレジットカードを賢く使いこなそう。
 国際ブランドとは何だろう。その最大の役割はクレジットカードを幅広く利用できるようにすることだ。
 街のレストランやインターネットショッピングなどでカードが利用できるようになるためには、お金をやりとりして決済できるシステムをつくり、店がその決済システムに加盟していることが必要になる。
世界的ルール整備
 国際ブランドは決済システムを運営し、カード利用の世界的なルールを作り、不正利用の防止措置などを講じている。現在、日本で主な国際ブランドとして認知されているのは「ビザ」「マスターカード」「アメリカン・エキスプレス(アメックス)」「JCB」「ダイナースクラブ」の5種類だ(表A)。
 カードを実際に発行する会社は国際ブランドと契約し、自社カードの利用者を募る。異なる発行会社のカードに「ビザ」「JCB」といったロゴマークが付いているのはそのためだ。国際ブランドから加盟店の開拓を任せられている発行会社も多い。
 アメックスやJCBのように、国際ブランドと発行会社の両方の側面を持つ企業もある。
 国際ブランドが国内で普及する以前は、発行会社がそれぞれ独自の「国内ブランド」を展開し、加盟店を開拓していた。この場合、加盟店での支払いに利用できるのは開拓した発行会社のカードに限られていた(図B)。
 国際ブランドが普及すると、同じブランドの加盟店なら、原則としてどの発行会社のカードでも決済できるようになった(図C)。
 加盟店は海外にも多く、国内で発行したカードは海外でも利用できる。国際ブランドが世界的に決済システムを管理しているからだ。そもそも「国際ブランド」と呼ばれるのはこのためだ。
 自分にとってどの国際ブランドが利用しやすいか、どんな点に注意して選べばいいのだろう。
 国際ブランドにはそれぞれ特徴がある。ビザやマスターカードは幅広い国・地域の加盟店で利用でき、発行枚数も非常に多い。
 カードに詳しい消費生活評論家の岩田昭男さんは「両ブランドともに、加盟店の開拓やネットワークの整備、防犯対策などに力を入れている」と話す。ビザが6月からブランドのゴールドカードなどの会員に、旅行関連の特典サービスを充実させるなど、会員向けサービスにも注力している。
 アメックス、JCB、ダイナースクラブは伝統的に旅行や娯楽分野での特典が充実しているとされる。
 例えば唯一の日本発祥の国際ブランドであるJCBは「トラベル&エンターテインメントカード」をうたい、世界60カ所に日本語対応の海外サービス窓口「JCBプラザ」を設置。会員向けに現地の観光情報を提供したり、レストランなど加盟店の予約を代行したりしている。JCBブランドのカードで決済すると割引などの優待が受けられるサービスもある。
 アメックスの会員になれば、国内外のホテルやレストランなどで割引などの優待が受けられる。ダイナースクラブも国内の加盟店での食事代の割引や現金還元といった優待が受けられるほか、提携先のカフェやラウンジで飲み物などを無料で提供してもらえるサービスもある。
複数持つなら分散
 日本クレジット協会によると、2010年3月末時点の国内のカード発行枚数は3億2233万枚。20歳以上の国民1人当たり3・1枚を持っている計算だ(グラフD)。
 複数枚のカードを持つ場合の注意点は何だろう。一般的に、国際ブランドは分散させた方がよいとされる。ブランドによって加盟店が異なるため、複数のブランドのカードを持っていれば、支払いに使える可能性が広がるためだ。
 新たに加入する際は、すでに利用しているカードと国際ブランドが重複しないように選ぶのが賢明なようだ。

地方出身者に奨学金、慶大が年60万円、優秀な人材確保。

 慶応大学は2012年度以降に入学する地方出身の学生を対象に新しい奨学金制度を始める。東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県以外の高校出身者に支給する。成績は優秀だが経済的理由から進学が難しい人の受け入れを目指す。地域による進学格差を是正し、国立大学などへの人材流出を防ぐ狙いもありそうだ。
 奨学金の名称は「学問のすゝめ奨学金」。同大の創立者、福沢諭吉の著作にちなんだ。予定者数は12年度は107人。金額は年60万円(医学部は90万円、薬学部薬学科は80万円)で返済は不要。
 慶大はこれまでも返済不要の奨学金を導入しているが、学生の出身地を限定した奨学金は初めて。1都3県以外を6つの地域ブロックに分け定員を割り振り、地域の偏りがないようにする。
 対象は一般入試を経て入学した学生で、受験前の10月に申請を受け付ける。家計支持者の年間給与が800万円未満などが条件。給付期間は原則として入学後の1年間だが、学業成績などにより、継続して受給することも可能にする。
 慶大は今春入試の合格者のうち、6割以上が1都3県の出身者で「増加傾向」(広報室)という。地方出身者を支援する奨学金では、早稲田大学も「めざせ!都の西北奨学金」を設けている。

2011年6月27日月曜日

国民生活白書“不在”の弊害

 白書の刊行ラッシュの季節がやってきた。子ども・若者白書、高齢社会白書、土地白書、防災白書などが今月になって相次いで発表されている。1年間の政治、経済、外交、社会の実像を描き、政府の施策などを国民に示すことを目的とする白書。その中で、2008年版を最後に休刊しているのが内閣府の国民生活白書だ。
 国民生活白書は、その名の通り国民の生活に焦点を当てて日本の経済社会を分析する。経済財政白書が金融・財政のマクロの視点を担うのに対して国民生活白書は生活者、消費者というミクロの行動、意識からアプローチする。少子社会(92年)、安全・安心(96年)、若年フリーター(03年)などを取り上げ、その時代を切り取って解説することに定評がある。
 東日本大震災で、日本社会の風景が大きく変わった。今年の国民生活白書があれば、どんなニッポンを見せてくれるだろうか。
 ライフスタイルが変わり、家族や地域との絆が強まった。寄付やボランティア活動についての分析があっていいだろう。4月の家計調査では寄付金が前年同月比で約9倍も増える一方、世帯主のこづかいや国内旅行の支出が削られている。被災地の商品を積極的に購入するといった「応援消費」の影響か、流通業界では東日本の販売実績が堅調な半面、被災地よりも遠い西日本が低調という「消費の東高西低」現象がある。
 復興構想でも議論に上がっている増税について「国民の意識調査をして議論の土台を提示すべきだ」(日本総研の山田久主席研究員)という声もある。
 国民生活白書の担当大臣として4度も序文を書き記した竹中平蔵慶大教授は「(白書がないことで)国民生活の正確な実像や意識が分からないために政策議論も情緒的になり、誤った方向に進みやすくなっている」と手厳しい。
 「国民の生活が第一。」と銘打って政権交代を果たした民主党。その政権が国民生活を知ることに消極的なのはどういうことか。民の竈(かまど)の煙こそ、節目を迎えている日本社会を知る手段のはずだ。

2011年6月26日日曜日

年金の届出、一部省略可能に

 老齢年金など公的年金の受給者の日本年金機構への届出が7月から一部省略可能になる。受給者が住所を変更した場合や死亡した時に、本人または遺族が「住所変更届」や「死亡届」を提出する必要があったが、7月からは原則不要になる。
 届出の一部が省略可能になるのは、日本年金機構が住民基本台帳ネットワークから住所変更や死亡の情報の提供を随時受けることになるためだ。例えば、日本年金機構から6月に送付された年金振込通知書の住民票コードの収録状況が「収録済」となっており、今後の住所変更届の要否が「不要」となっている人は、7月以降、市区町村役場に変更届を出した住所情報が機構に自動通知される。
 ただ、届出の省略は、住所変更届と死亡届だけなので、受給者が死亡した場合の遺族による「未支給年金や遺族年金の請求は今後も必要」(社会保険労務士の大園要さん)。氏名変更届も、振り込みができなくなる可能性があるため届出が必要となる。受給者でない現役世代も引き続き届出が必要な点にも注意が必要だ。

年金繰り上げ受給の仕組みは?――1ヵ月ごとに0.5%減額

ファイナンシャルプランナー 和泉昭子氏
 会社の定年退職を2年後に控え、老後の生活に不安を感じています。65歳になる前に年金を受け取れると聞いたのですが、詳しく教えてください。(神奈川県、58歳、男性)
 年金といえば65歳から受け取るもの、と思われがちですが、自分のライフスタイルに合わせて受給開始時期を最大で前後5年ずらすことができます。
 会社員の場合、国民年金である「老齢基礎年金」と、会社勤めで加入した「老齢厚生年金」の2種類の年金があります。年金は生年月日によって、60歳から65歳になるまでに支払われる「定額部分」や「報酬比例部分」という特別支給があったり、個々で大きく異なったりします。年金事務所で受給内容と開始時期を確認したうえで、変更を申請するのをお勧めします。
 質問者は1953年4月2日以降生まれの男性なので、老齢基礎年金は65歳、老齢厚生年金は報酬比例部分の受給が61歳から始まります。受給を繰り上げたいのであれば両方を同時期にし、片方のみ早めることはできません。
 年金はいずれも1カ月繰り上げるごとに0・5%減額されます。質問者が受給を60歳に繰り上げた場合、老齢基礎年金は5年早まるので30%減、老齢厚生年金は1年なので6%減になります。一度変更すると減額は生涯続き、取り消せないので注意が必要です。
 老齢基礎年金や老齢厚生年金の受給を早めると、後に病気やケガで重い障害が残っても障害基礎年金は受け取れません。受給資格期間を満たした夫が年金をもらう前に死亡した時に妻が受け取る寡婦年金(60歳から65歳に達するまで支給)の受給資格も失います。一般的にこれらの年金の方が手厚いので、損をする可能性もあります。65歳前に遺族厚生年金の受給権が発生したときは、老齢基礎年金か遺族厚生年金かどちらかを選ぶことになります。
 一方、受給を繰り下げた場合、1カ月ごとに0・7%増額されます。受け取りを70歳に遅らせると、年金額は42%増えます。
 繰り下げの時期は、老齢基礎年金と老齢厚生年金でそれぞれ設定できます。また一定の貯蓄がある夫婦の場合、一般的に女性は平均寿命が長いので、妻の分だけ受給を繰り下げるなど柔軟に対応するのも一つの手です。

夏のボーナス、家計の防衛色再び強まる、使い道、貯蓄が最も多く。

支給額 「昨年並み」5割弱
 2011年夏のボーナスについて日経生活モニターに登録する読者を対象に調査したところ、支給額が「昨年並み」との回答が5割弱、「減りそう」が4割だった。使い道は貯蓄が最も多く、節約志向も鮮明になった。昨冬の調査ではボーナス水準が底入れする兆しがみられたが、東日本大震災や政局混迷などで経済の先行き不透明感が広がり、再び家計の防衛色が強まっている。(調査の詳細を電子版「マネー」に)
 神奈川県の男性会社員(50)は、毎年出かけていた秋の旅行をやめるつもりだ。CS放送で契約していた番組を減らし、本は買わずに図書館で借りることにした。ボーナスが減り「無駄なものを買わないようにした」ためだ。
「増える」は13%
 モニター調査で今年夏のボーナス支給見込み額を聞いたところ、「減る」が40%で「増える」は13%だった。「昨年の夏並み」とする人は47%。ボーナスが「減りそう」との回答は09年夏をピークに縮小してきたが、今回は2年ぶりに増加した(グラフA)。08年秋のリーマン・ショックで落ち込んだ上場企業の業績は11年3月期、ピークだった08年3月期の7割まで回復したが、ボーナス水準の戻りは鈍い。今夏のボーナスは「昨年並みかそれ以上に厳しい水準が続く」との予想が多い。
 厳しい水準にとどまりそうなボーナスをどう使うのか。使い道について支給額の何割を配分するかを答えてもらい、回答人数を考慮して加重平均したところ、最も多かったのは「貯蓄」で41%だった(グラフB)。2番目は「生活費の補填など」で22%。昨冬の調査と比べて「貯蓄」「生活費の補填」は横ばいだった。「旅行・レジャー費用」が12%と2ポイント増える一方、「住宅ローン返済」や「耐久消費財などの買い物」はそれぞれ1ポイント下がった。
 使い道ごとに1年前に比べて振り向ける金額を増やすか減らすかを聞いたところ、「増やす」と回答した割合から「減らす」を引いた値(増やす傾向)が最も大きかったのは「貯蓄」だった(グラフC)。貯蓄は増加傾向が強まる一方、昨冬の調査でトップだった「生活費の補填など」は増やす傾向が弱まった。
 貯蓄の理由として多く挙がったのが将来に対する不安だ。大阪府の男性会社員(33)は「定年まで30年あるが、日本の成長に期待が持てないので、貯金して少しでも不安を減らしたい」という。「子どもの教育費などを考え、ボーナスはすべて貯金する」(奈良県の主婦、30)といった声も目立つ。
 貯蓄による家計防衛と合わせて一段と強まっているのが節約志向だ。節約に対する姿勢は「これまで通り続ける」と「これからする」を合わせて86%(昨冬は84%)。一方、節約を「やめる」「休む」は計7%にとどまった。「節約モード」が常態化していることがうかがえる。
 東京都の男性会社員(35)は、ボーナスが減ったのを機に自転車通勤を始めた。「わずかだが交通費を浮かした分は貯金に回している」。収入面の不安から副業も始めた。神奈川県の主婦(32)は子どもの教育費を抑えるため、公立の幼稚園に通える場所への引っ越しを考え始めた。
 もっとも「削りしろ」があるうちはまだ余裕がある。宮崎県の男性公務員(57)は大学生の子供3人を抱え「すでに無駄な出費はない。減らせるのは自分の小遣いくらい」とこぼす。
 ボーナスが貯蓄に多く向けられることについて、ファイナンシャルプランナー(FP)の豊田真弓さんは「将来の不安は分かるが『できるだけ貯金』では生活が楽しくなくなる」と心配する。教育費や老後の資金などは「きちんと計画を立てれば、消費の余裕が生まれることもある」という。
投資に慎重姿勢
 ボーナスなどの収入が減る状況では、保有資産の運用などで減収分を補う考え方もある。ただ、ボーナスで投資を考えている人も、大震災をきっかけにした株式相場の低迷などで、この夏は慎重になっているようだ。
 ボーナスの使い道として投資を「増やす」か「減らす」かを聞いたところ、「減らす」人の割合が多かった。投資への姿勢も「利回りより元本の安全性を重視する」が57%と昨年冬の調査に比べ小幅ながら上昇。FPの神戸孝氏は「ボーナスが投資でなく貯蓄に向かうのは、投資による利益を出せていないことも一因」と分析する。
 北海道の主婦(51)は資産の2割程度を原子力発電に関連した企業の株に投資していたが、3月の株価下落局面で売却し「多額の損失を出した」。回収した資金は主に金投資に振り向けるという。円高が続き「ドル建て預金が3割目減りしている」(滋賀県の女性会社員、42)との声もある。
 来年夏のボーナスの水準の予想を聞いたところ、今年に比べ増えると思っている人はわずか12%だった。ボーナスが今後も増えないとの見方は広がりつつある。
 大震災で滞っていた投資信託への個人マネー流入が5月には急拡大するなど、一部では投資意欲回復の兆しもみられる。ただ、全体としては国内の低金利や株価低迷など投資環境の厳しさは変わっていない。収入や投資収益が伸ばしにくいなか、いかに教育費や老後の資金を確保していくのか。ボーナス資金を貯蓄に回す姿勢が強まっているのは、こうした不安感が背景にあるようだ。

2011年6月22日水曜日

昔は…制服、兄や姉のお下がり――今は…PTAがリサイクル

 かつて、制服や体操着など兄や姉が着なくなった服を繕い、弟や妹が「お下がり」として着る家庭は当たり前のようにあった。ただ、お古を与えられた下の子は「何で僕だけ、私だけ……」と不満を募らせ、けんかの種にもなったものだ。
 近年は学校の親同士で服を譲り合う動きが広がる。少子化で一人っ子が増えたが、すぐ体が大きくなる子どもの服を買うのは親にとって物入り。社会では「リサイクル」の考えが受け入れられ、古着は格好悪いものでなく、子どもにもそれほど抵抗がないそうだ。
 群馬県の館林市立多々良中学校のPTAは2010年秋から、制服のリサイクル事業を始めた。公民館を通じて制服を集め、必要な家庭に無料で提供する。これまで40着を回収して十数着を配った。「数万円の制服を買わなくて済むので家計が助かると喜ばれている」(早川則行PTA会長)という。横浜市立すすき野中学校のPTAは回収ボックスを職員室の前に置く。保護者が授業参観で来校した際に入れていく姿が目立つという。

ハンバーガーチェーン――「週1回以上」利用11%

1回の支出額「400~600円」48%
 マクドナルドの日本1号店が東京・銀座に開業して7月で40年。ハンバーガーチェーンは日本の食生活にすっかり定着した。日経産業地域研究所が調べた直近1年間の利用頻度では「週1回以上」のヘビーユーザーが11・8%で、「月2~3回」も14・4%だった。1人当たりの1回の支出額は「400円以上600円未満」(48・7%)が最も多かった。
 調査はマクロミルに依頼し、5月27~30日にインターネットで実施。全国の20~60代の男女1000人(学生を除く)から回答を得た。
 誰と利用することが最も多いか聞いたところ、首位は「家族」で53・9%。2位の「自分一人で」(26・9%)に2倍の差をつけている。ただ男女別でみると、「家族」を選んだのは女性が60・7%だったのに対し、男性は46・7%。「一人で」は女性が19・6%、男性が34・8%。男性は一人で食事したり、喫茶店代わりに利用したりするケースも多いようだ。
 直近1年間に最も多く利用したチェーンは、マクドナルドが81・7%で圧倒的に多い。2位はモスバーガーで14・3%。この両チェーンで96%を占める。
 両チェーンとも利用のスタイルは同じだ。家族で行き、1人当たり「400円以上600円未満」を支出する人が最も多い。しかし、利用する理由は違う。マクドナルドを選んだ人は「低価格(クーポン利用を含む)」(63・2%)、「駅前など店舗の立地」(37・8%)が多い。一方、モスバーガーを選んだ理由は「味の良さ」(77・6%)、「厳選した食材」(42・4%)が大きな要因だ。
 世代別に10代から現在の年代になるまで、どのチェーンに最も多く行ったか聞いてみたところ、すべての世代のすべての年代でマクドナルドが首位だった。しかも現在の40~60代は年齢が上がるにつれ「マクドナルドに最も多く行った」と回答した人の割合が上がる。
 マクドナルドの進出・拡大とともに育った40代の場合、10代の頃は36%だったが、40代では71・5%にまで上昇した。若いころは、他のチェーンを利用する機会があったものの、年齢が上がり家族を持つようになると低価格で便利な場所にあるマクドナルドの利用が増えるようだ。

2011年6月21日火曜日

「平均」貯蓄額1244万円、「普通」を探るなら中央値や最頻値?

 平均貯蓄額は1244万円――。総務省が5月に発表した2010年の家計調査(2人以上世帯のうち勤労者世帯)の数字だ。前年比3.4%増とやや増えた。
 「これより全然少ない」と落ち込んだ人も多いのではないだろうか。家計を考えるうえでこうした様々な「平均値」は参考になるが「平均値」が「普通」とは異なるかもしれないことをまず知っておきたい。
 グラフに「平均値」とは別に「中央値」の数字がある。これは金額の低い世帯から高い世帯へ順に並べていくと、ちょうど中央にあたる世帯の値。743万円と、平均の6割にすぎない。
 つまり、平均1244万円というのは、例えば3000万円以上など一部のお金持ちに引き上げられた数字。「普通はどれくらい?」という考えで読むなら中央値の方がむしろ参考になるわけだ。
 「中央値にもはるかに届かない」とさらに落ち込んだ人もいるかもしれない。しかし貯蓄は年齢が高い方が多くなる。グラフにはないが、60歳以上の貯蓄が2173万円で全体を引き上げている。
 平均値と中央値が一致するのは、データが均等に散らばっている場合などだ。2つの数値が異なるとき中央値の方がわかりやすい例は多い。例えば年収も一部の高額所得者によって平均値はつり上げられるので、中央値の方が参考になる。
 このほか、最も分布が多い値が「最頻値」。貯蓄のグラフでは、最頻値は100万円未満の約14%。自分の貯蓄の少なさを嘆いた人にとって救いかもしれないが、安心するよりも貯蓄を増やすことを考えよう。

「平均」貯蓄額1244万円、「普通」を探るなら中央値や最頻値?

 平均貯蓄額は1244万円――。総務省が5月に発表した2010年の家計調査(2人以上世帯のうち勤労者世帯)の数字だ。前年比3.4%増とやや増えた。
 「これより全然少ない」と落ち込んだ人も多いのではないだろうか。家計を考えるうえでこうした様々な「平均値」は参考になるが「平均値」が「普通」とは異なるかもしれないことをまず知っておきたい。
 グラフに「平均値」とは別に「中央値」の数字がある。これは金額の低い世帯から高い世帯へ順に並べていくと、ちょうど中央にあたる世帯の値。743万円と、平均の6割にすぎない。
 つまり、平均1244万円というのは、例えば3000万円以上など一部のお金持ちに引き上げられた数字。「普通はどれくらい?」という考えで読むなら中央値の方がむしろ参考になるわけだ。
 「中央値にもはるかに届かない」とさらに落ち込んだ人もいるかもしれない。しかし貯蓄は年齢が高い方が多くなる。グラフにはないが、60歳以上の貯蓄が2173万円で全体を引き上げている。
 平均値と中央値が一致するのは、データが均等に散らばっている場合などだ。2つの数値が異なるとき中央値の方がわかりやすい例は多い。例えば年収も一部の高額所得者によって平均値はつり上げられるので、中央値の方が参考になる。
 このほか、最も分布が多い値が「最頻値」。貯蓄のグラフでは、最頻値は100万円未満の約14%。自分の貯蓄の少なさを嘆いた人にとって救いかもしれないが、安心するよりも貯蓄を増やすことを考えよう。

ゼロから知る預貯金(下)定期預金――ためる習慣身につける

低金利でも安全・引き出しにくく
用途別や「積み立て」活用
 預貯金のうち、普通預金が普段のお財布だとすれば、定期預金は「将来の資産の種となるお金」だ。金利こそ低いが、しばらく使わないお金を預けておいたり、少しずつコツコツためる習慣をつけたりするのに便利な存在だ。
 「えっ、こんなに低いの?」――。東京都に住む会社員(44)は、口座を開いているインターネット専業銀行のサイトを見てがっかりした。ボーナス時期にいつも定期預金の金利が高くなるキャンペーンがあり、楽しみにしていた。ところが今年夏のキャンペーン金利は年0・3%。「数年前は年0・8%くらいだったのに」と振り返る。それでも大手銀行の定期預金に比べれば5~10倍の金利だ。
国債利回りが影響
 「この低金利下ではボーナス時期のキャンペーンでも、一般的な定期預金の金利を上げるのは難しい」。銀行関係者はため息交じりに話す。銀行が集めた定期預金の運用先は、国債などが多くなりつつある。現在の国債利回りは3年物で0・2%台、10年物でも1・1%台と低い。銀行が運用できる利回りが低ければ、定期預金の金利も低くなる。
 こうした状況で定期預金の金利を高くするには、通帳発行や支店運営などの費用の節約が必須で、一般にネット銀行のほうが金利は高め。店舗を持つ銀行でも、インターネット上の支店やネットバンキング専用の定期預金は金利が少し高い場合もある。
 金利は低くても、定期預金は将来に向けて資産をつくる第一歩だ。ファイナンシャルプランナーの吹田朝子さんは「安全で引き出しにくい定期預金は、お金をためる習慣を付けるのに最適」と言う。
 定期預金は基本的に引き出さないことが前提で、普通は預ける期間が長いほど金利が高い。満期を待たずに解約すると、金利がかなり低くなるのが一般的だ。
 途中で解約する際の金利計算は、金融機関や定期預金の種類によって違う。普通預金と同じ金利になるのはまだいい。元の定期預金の金利を、解約までの期間に応じて決めた割合で割り引く場合、金融機関によっては普通預金の金利を下回ることもある。
預け方ひと工夫
 一定の「据え置き期間」が終われば、金利が低くならずに引き出せるものもある。ゆうちょ銀行の定額貯金は半年を過ぎれば払い戻しは自由だ。
 まとまったお金を一度に預けるほかに、少額ずつコツコツためたい人には積み立て定期がある(表A)。吹田さんは「新社会人など貯蓄を始める人には、自動振り替えで天引き感覚でためられる積み立て定期が向いている」と話す。
 一度にまとまったお金を預ける定期預金は「近い将来使う予定があり、減ったら困るお金を預けるのに適している」(吹田さん)。ただし全額をまとめて解約するのが原則。預け方には注意しよう。
 目的別にお金を管理しやすいサービスもある。住信SBIネット銀行では、1つ口座を開くと5つまで「目的別口座」を作れる。定期預金も作ることができ、教育費や住宅購入資金など用途別に名前を付けて預入期間を選べる。ほかの銀行でも定期預金は何本も作れる。普通は名前は変えられないが、定期預金を目的別に作るのもよさそうだ。
 どうしても必要なら満期前に一部だけ解約できる場合もある。ソニー銀行は1万円以上1万円単位、積み立て定期なら毎回の預入金額を1単位として解約可能。解約分の金利は低くなるが、残高が一定以上残れば、元の金利で定期預金を継続できる。
 定期預金の金利には「単利」と「複利」がある。違いをおさらいしよう。
 単利は預け入れたお金に対して利息を計算し、利息は毎回、切り離して受け取る。一方、複利は預けたお金に対して計算した利息を元金に加えることで利息にも利息がつく。利息は満期にまとめて受け取る。単利と違って途中でお金を受け取ることはできないが、効率よくお金を増やせる。例えば100万円を年1%で20年預ける場合、単利では満期までの受取利息が計20万円だが、複利では満期に受け取る利息が約22万円になる(グラフB)。
「お助け役」要注意
 ときには定期預金はお金をためる以外の役割も果たす。手元の通帳の表紙に「総合口座」と書いていないだろうか。総合口座は普通預金と定期預金などをまとめて管理する。
 例えば普通預金から自動引き落としで支払う公共料金が残高不足で支払えないとき、総合口座では定期預金が「お助け役」となる。定期預金の残高を担保にして銀行が不足額を貸し付け、普通預金が残高ゼロでも支払いできるのだ。ただ残高不足を穴埋めした金額は借金なので、担保にした定期預金より高い金利を払うことが多い。普通預金の残高不足にはやはり注意が必要だ。

2011年6月19日日曜日

がんの情報サイト充実

 6月1日に発表になった2010年の厚生労働省人口動態統計月報年計(概数)。死因の第1位は引き続きがんで、29・5%だった。自分や家族ががんになったとき、何より欲しいのは正しい情報。最近はインターネットのサイトでの情報が充実してきている。
 治療費を調べたい場合に便利なのが特定非営利活動法人(NPO法人)東京地域チーム医療推進協議会が運営する「がん治療費.com」。部位別や抗がん剤別、緩和ケア別などの費用がわかる。
 一定額以上の治療費を国が還付する高額療養費制度の仕組みと、それを使った場合の最終的な自己負担額の計算方法の説明もわかりやすい。
 治療そのものの情報を知りたいときは中外製薬が運営するサイト「がん情報ガイド」が役に立つ。「新しい治療法を提案された場合」「再発・転移と診断された場合」など様々なテーマごとに、専門医の見方がわかる。
 大鵬薬品工業などが手掛ける「SurvivorSHIP.jp」では「食事の工夫」「脱毛ケア」などがんと向き合って生きるための情報が充実している。

相続税の申告期限、延長対象は?、被災者・「指定地域」なら全員

 昨年7月に亡くなった父が、千葉市に賃貸用のワンルームマンションを持っていました。東日本大震災の後、相続税の申告期限が延長されると聞きましたが、私も対象になりますか。(神奈川県、50歳、男性)
 東日本大震災の被災者は、相続税の申告・納付期限が延長されています。原則として財産の保有者が亡くなってから10カ月以内に、相続税の申告・納税を終えなくてはなりません。しかし震災以降、相続税の手続きどころではない状況が続きました。そこで、震災の前日(2011年3月10日)より10カ月前にあたる昨年5月11日以降に亡くなった人については、相続税の手続きの期限が12年1月11日まで延びています。
 実は、この期限延長の対象になる人は意外にたくさんいます。相続した人が被災して手続きができない場合だけでなく、「財務相が指定する地域(指定地域)」にある土地などを継ぐ人がいる場合、その相続人が被災地に住んでいるかどうかに関係なく全員の申告・納税期限が延長されます。
 「指定地域」とは、青森・岩手・宮城・福島・茨城・栃木・千葉の各県と、新潟県の十日町市と中魚沼郡津南町、長野県下水内郡栄村です。ご質問のように、相続する人が被災地に住んでおらず、千葉市の賃貸マンションを相続する場合も、申告期限は来年1月11日になります。
 相続税がかかる土地などの評価額は、大震災の前に亡くなった場合であっても、震災後の価格を基準に計算していいことになっています。地域によっては震災後、財産としての評価がかなり下がってしまったと思われるケースがありますが、相続税は下がった後の金額を元に計算できます。今年夏に公表される路線価では、おそらく震災の影響を踏まえて、課税対象となる土地などの評価額を引き下げるための対策が講じられることになるでしょう。
 昨年亡くなって、震災前に申告手続きを終えてしまった場合でも、相続した物件を売らずに今年3月11日の時点で持っていれば、期限延長を利用できます。
 指定地域の土地などを相続し、期限延長を利用したい人は、念のため事前に税務署に確認の連絡をしておくと安心です。

海外旅行保険、特徴つかみ、自分に合った選択を――店頭販売、補償・サービス充実

ネット 近場で短期間は割安
 夏の節電対策で、企業の長期休暇が増えるといわれる今年、海外旅行を計画する人もいるだろう。海外での病気や事故など不測の事態に備えて入っておきたいのが海外旅行保険。旅行会社の店頭で申し込む以外に、インターネット専用商品やクレジットカードの付帯サービスなどもある。それぞれの特徴を理解すれば、上手に海外旅行保険を利用できそうだ。
 「これまでは出国直前に成田空港で旅行保険に入っていたが、ネットで申し込んだら、保険料が安く済んだ」と話すのは、今春、香港に旅行したA美さん(32)。
日数や渡航先確認
 これまで旅行会社の店頭で販売されるのが多かった海外旅行保険が、最近はインターネット経由でも手軽に契約できるようになった。大手損保各社が店頭販売している商品と同じものや、保険内容を簡素化したものを提供しているケースが多い。店頭販売に比べた価格の安さが売り物だ。
 ネット専用商品は2002年に損害保険ジャパンが「off!(オフ)」を発売したのを手始めに、06年に三井住友海上火災保険が「ネットde保険@(あっと)とらべる」で追随した。エイチ・アイ・エスの関連会社のエイチ・エス損害保険も今年7月以降の旅行を対象に「スマートネッと」を発売している。
 「@とらべる」などは店頭商品に比べ「約40%OFF」をうたっている。対面販売する店頭商品に比べ、販売コストを抑えられるからだ。A美さんも香港4日間の旅で、ネット専用の海外旅行保険に入ったら1680円だった。これまで利用していた店頭商品に比べ半分以下で済んだという。
 店頭販売の商品のほとんどが旅行日数に応じて料金を設定しているのに対し、ネット専用商品は渡航先によっても保険料が変わる例が多い。エイチ・エス損保が7月出発分から販売している「スマートネッと」は世界を3地域に分けて料金を設定した。最も割安なのがアジア・オセアニア・グアム地域。次いで北米・ハワイ地域が安く、ヨーロッパ・中南米・アフリカ地域は高い。アジア地域に比べ、北米を1日当たり約100円、欧州地域は約200円程度高く設定してある。
 日本人の旅行頻度や地域による保険金支払い発生額の違いなどを考慮した結果が料金差となっている。ネット商品が狙うのがアジアなどに出掛ける海外旅行の中心層。日程が短く近い地域に行く旅行客に割安な料金を設定し、販売件数の拡大を目指している。
 ネット商品は短期間の旅行で利点が多く、お得感も高いが、アフリカなどに長期間出かける場合は、店頭商品の方が安い例もあるという。
サイトで料金比較
 料金の比較はインターネットの価格比較サイトを利用する手もある。その一つ、アドバンスクリエイトが運営する「保険市場」では幅広い保険商品の比較が可能だ。海外旅行保険も対象で、旅行日数と行き先を入力すれば、料金の安い順に保険商品が表示される。
 損保ジャパンはネット商品でフリープランを出している。治療費用を基本補償とし、死亡保険や、持って行った物が壊れた場合などの携行品損害などは特約として自分で選べる仕組み。例えば、「独身なので死亡保障はいらないが、現地での事故が心配なので、保険は治療費用だけでよかった」というA美さんの場合、治療費用1000万円の保険だけに入れば、香港4日間で保険料は1280円で済んだ計算だ。治療費用を2000万円に引き上げても1290円とほぼ変わらない。
 海外旅行保険のネット販売は、インターネットの普及を背景に拡大しつつあるが、関係者によればネット販売の比率はまだ10%弱。90%以上の人は代理店を通じて保険に加入しているという。「補償内容やサービスの質などを考えれば、旅行会社で入る商品を割高とは感じない」と話すのは都内在住のB夫さん(47)。海外に行く時は必ず代理店で海外保険に入るという。
 店頭商品のセールスポイントは補償とサービスが充実していること。ネット専用商品ではケガや病気などで死亡した際の障害死亡の保険金額は最大で3000万円。「何かあった時に残された家族のことを考えれば5000万円以上の死亡保障がある保険に入っておきたい」とB夫さんは話す。
 治療費用についても、B夫さんが入るのは費用の上限がない無制限プラン。海外で集中治療室に入るような事故に遭えば、1日当たりの治療費が100万円かかることもある。JTBのグループ会社、ジェイアイ傷害火災保険では、海外旅行保険で37・5%が無制限プランに加入しているという。
 東京海上日動火災保険が手掛けている商品は、「世界100都市に300カ所以上の提携病院を持ち、契約者が保険証券を見せるだけで現金を払わずに治療が受けられる」という。ジェイアイも「女医の有無や、予約の可否まで掲載したガイドブックを出している」と話す。保険料や補償金額だけでなく、サービス内容も含めて自分の旅行に合った保険を選びたい。(石原恭子)
クレジットカード 保険の条件に注意
 海外旅行の際に、旅行保険に加入している人は3~5割程度とみられる。「クレジットカードに保険がついているので必要ない」と考える人も目立つ。実際、C子さん(40)もハワイ旅行の際、子供が熱を出して医者にかかったが、請求された約400ドルは帰国後、カード会社から支払われた。「カード会社のサービスセンターに電話したら、日本語が話せる医師を紹介してくれたので助かった」という。
 カード会社の発行する一般カードなら年会費1500~2000円程度、ゴールドカードでも1万円程度で旅行保険が付いているケースが多く、保険加入の出費を抑えられる。ただ、けがなどの治療費は100万~300万円程度が一般的で、事故で大けがをすれば治療費や搬送費が1000万円を超すこともあるので注意が必要だ。
 さらに、カードのなかには旅行代金や航空券など旅行に関する費用を決済した場合だけに保険が利用できるものもある。カード各社は「旅行に行く前に、自分が持っているカードの保険内容と、利用条件を確認してほしい」と呼びかけている。

2011年6月18日土曜日

百貨店セール、何割引きなら魅力?――「4~5割引き」が45%

 百貨店では季節の変わり目ごとにセールを実施しているが、定価よりいくら安いとお得に感じるかを聞いたところ、「4~5割」と回答した人が最多で、45%に上った。価格破壊が進んでセールの魅力が乏しくなったのか、「お得と感じない(買わない)」という人も少数ながらいた。
 セールで買う品物の中心は服。「自分」(約4割)のものを買う人が多く、「子ども」や「配偶者」向けが続いた。服以外では「カバンや財布」「靴」などが多かった。
 「10万円のコートが3万円で入手でき、今も愛用している」(新潟県の主婦、33)、「ブランドの服がお手ごろ価格で買えた」(愛知県の主婦、29)とセールでの成功談が目立った。一方で「地元スーパーの方が安かった」(東京都の男性会社員、37)、「買ったが着る機会がなく、流行が終わった」(茨城県の女性会社員、38)と反省の声も。
 セールに臨む心構えとしては、「なるべく前もって狙いを定めておき、初日に行く。売り切れていたら、縁がなかったとあきらめる」(大阪府の主婦、62)。「安いと思って衝動買いしない」(愛媛県のパート・アルバイト女性、47)ことなどが肝心なようだ。

2011年6月14日火曜日

個人賠償責任保険――必ず入っておきたい、高額支払いへの備え

 火災保険や自動車保険といった損害保険は、仕組みがやや複雑なせいか生命保険ほど新聞や雑誌で取り上げられる機会が多くない。
 ところが地震保険の関心が高まっているせいか、春以降は損害保険についてコメントを求められることが格段に増えている。
 ある雑誌の特集で、保険の必要度・重要度を経済的ダメージ順に並べてみたところ、上位は自動車保険(対人・対物賠償)、火災保険、地震保険、個人賠償責任保険などすべて損保商品で占める結果となった。このうち「個人賠償責任保険」は、あまり耳にしたことがないかもしれないが、実は誰もが必ず入っておきたい保険なのである。
 日常生活の中で偶然の事故により、他人にケガをさせたり、他人が保有しているモノを壊したりするなど、法律上の損害賠償責任を負った場合に、被害者に対して支払うべき損害賠償金等に備えることができる保険だ。
 具体的には、ショッピング中に高価な商品を壊してしまったときの代金、自分の子どもがけんかをして近所の子どもにケガをさせてしまったときや、飼い犬が他人にかみついたときの治療費などが補償される。
 高額賠償金になりやすいのは自転車事故だ。日本コープ共済生活協同組合連合会によると、同団体の個人賠償責任保険の高額賠償事故の上位9件までが自転車事故によるものだという。上位9件の賠償金額は、約3千万~7千万円とかなり高額。貯蓄から支払いますと言える金額ではないので、保険で備えておきたいリスクである。
 事故が起こる確率が低いため、賠償金額1億円でも保険料は年間1000~2000円程度と安い。ただし、保険料が安すぎて現在、単独で販売している保険会社はなく、他の損保商品に付帯する形での加入となる。火災保険や自動車保険の証券をチェックして、付いていなかったら付加しよう。共済で扱っているところもあるし、クレジットカードに月200円で付帯できるカード会社もある。
 ひとつの契約で同居の家族は全員カバーされるので、それぞれが契約する必要はない。「家族で1つの契約」と覚えておきたい。

ゼロから知る預貯金(上)普通預金――日常の「財布」手数料に注意

1回引き出し=50万円の利息1年分 優遇生かし目減り防ごう
 給与振込や公共料金の引き落とし、毎月の積み立てに余裕資金の運用など、銀行などの預貯金は毎日の生活と切り離せない。夏のボーナスでまとまったお金が振り込まれる人も多いだろう。日常的に使うからこそ、預貯金の基礎をおさらいして家計に役立てたい。
 普通預金、定期預金、貯蓄預金――。預貯金には様々な種類がある。共通するのは原則的に「元本割れしない」「金利が付く」ことだ。
「守り」の運用向き
 仮に預け先の金融機関が経営破綻しても、元本1000万円とその利息までは保護される。家計管理の面では「いざ、という時に備えた『守り』の資金の運用に向く」(ファイナンシャルプランナーの三輪鉄郎氏)とされている。
 「普通預金」はATMや金融機関の窓口でいつでもお金を引き出せて、給与振込のほか公共料金、クレジットカードの引き落としなどに使う。「定期預金」は1年間、5年間など一定期間引き出さない前提の預金をいう。
 預貯金は基本的に引き出しにくいほど金利が高くなる。例えばいま大手銀行の普通預金の利率は年0・02%程度で、5年定期(300万円未満)は年0・06%程度。定期預金のほうが金利は高い。
 普通預金と定期預金の中間の性格をもつ「貯蓄預金」というものもある。いつでも引き出せて、お金の残高が多いほど金利が高くなる仕組みが多い(最近は普通預金と同じ水準が目立つ)。ただ給与振込や公共料金の引き落としなどには使えない。
 預金ができる金融機関は大手銀、地方銀行、信用金庫、信用組合、インターネット専業銀行など幅広い。ゆうちょ銀行やJAバンクは預金のことを「貯金」と呼ぶが、実質的には預金と変わりはない。
 金融機関は預貯金で集めた資金を企業や個人への貸し出しや、国債など金融商品の購入などに振り向け、利益を得ている。個人が預けたお金に金利がつくのはそのためだ。
 日常で使う機会が多いのは普通預金だ。小遣いの引き出し、他の口座への振り込みなど家計の「財布」になる。
 普通預金を使う際には手数料に気を付けたい。金利が低く、使う頻度が多いため、油断するとためるどころか目減りしてしまう。コンビニエンスストアのATMで現金を引き出すと100円程度の手数料がかかることが多い。大手銀行の最近の金利なら50万円を1年間預けたときの利息に匹敵する。ATMを使ってほかの銀行口座に振り込むと、630円かかる場合もある。
違い知って利用を
 預貯金の引き出しや振り込みにかかる手数料は、利用する金融機関、ATMの種類、時間帯などで違う。よく使うサービスで有利な金融機関を使い、出費を抑えたい。
 例えばりそな銀行の「インターネット通帳」口座は、ネットを使えばほかの銀行向けの振込手数料が100円(グループ内なら無料)と安い。インターネット専業銀行も大手銀より他行宛ての振込手数料を抑えている。ゆうちょ銀行は同行の口座同士ならATMの振込手数料が無料だ。
 大手銀に口座を持つ場合は会員向けの優遇サービスを活用する方法もある。資産残高や給与振込などの条件を満たせば、ATMの時間外手数料が無料になったり振込手数料を割り引いたりする。みずほ銀行では他行宛ての振込手数料(210~630円)が月に3回まで無料になる。
ネットで「家計簿」
 普通預金の出入金記録は、そのまま「家計簿」としての意味を持つ。預金者向けのサービスをうまく使えば手軽に家計の収支も管理できる。
 インターネット専業のソニー銀行は他行を含めた銀行口座の残高やクレジットカードの取引明細を一覧できるサービスを提供している。口座情報や暗証番号などを登録しておけば、自動的に情報を集めて表示する仕組みだ。
 複数の銀行を使い分ける際には、口座を放置しないように気を付けたい。金融機関によって条件は異なるが、一定期間取引がないと「休眠口座」とみなされ管理手数料を請求される場合がある。
 三輪さんは資産運用の第一歩として「半年間、収入なしで生活できる金額を普通預金で用意したい」という。すぐに現金が必要な「万一」のときに頼りになるためだ。目標額がたまったら、他の金融商品にお金を振り向けよう。

2011年6月12日日曜日

社会保険料、季節的要因を考慮

 会社員の毎月の給料から天引きされる社会保険(健康保険と厚生年金)の保険料の計算方法が、より給与実態に近づく形に変わる。算定のもとの給料額(標準報酬月額)が増えても、それが業務上の季節的要因であれば保険料を増額しなくてもよい。2011年9月の保険料から適用となる。
 健康保険と厚生年金の保険料額は、原則4、5、6月の3カ月間に支払った給料の平均をもとにした標準報酬月額に保険料率を掛けて算出し、その年の9月から翌年8月までの1年間適用する。ただ、4~6月に残業が集中し、給料が一時的に増える会社もある。この場合、7月以降に給料が減っても相対的に高い保険料を1年間払い続けることになり、「特に若手社員の不満が強かった」(社会保険労務士の大園要さん)という。
 今回の改正では、6月までの1年間の給料の月平均と、4~6月の平均を比較。季節的要因で3カ月平均が年間平均を一定基準以上、上回る場合は「1年間の平均額を使って保険料を算出しても構わない」(厚生労働省)とした。

ボーナスの安全な運用先は――中長期なら個人向け国債

ファイナンシャルプランナー 目黒政明氏
 もうすぐ夏のボーナスが支給される予定ですが、できるだけ元本を減らさないように運用したいと考えています。安全性が高くて、利回りも高めの金融商品を教えてください。(埼玉県、35歳、男性)
 近い時期に使う可能性のある資金なら、円建てMMF(マネー・マネージメント・ファンド)での運用が適しています。投資信託の一種なので元本保証はありませんが、信用度が高く満期の短い公社債などに投資しており、安全性は高いとされています。利回りは年0・1%程度(税引き前)で、買い付けてから30日過ぎれば1万円当たり10円の信託財産留保額(解約手数料)を払わずに自由に換金できます。
 確実に1年間は預けておける資金なら、ネット銀行の定期預金が魅力的です。普通銀行よりも預金金利が高いうえ、ボーナスの支給時期に合わせてキャンペーンを実施し、通常よりも高めの金利を適用することが多くなっています。現時点では、1年物の定期預金では税引き前で0・3%程度のところもあるようです。
 2年程度運用できる資金であれば、個人向け国債の変動金利10年物がお薦めです。個人向け国債は、利子と元本の支払いを国が保証する安全性の高い商品です。銀行や証券会社など幅広い金融機関で1万円から購入できます。
 6月30日まで募集中の7月発行債の場合、満期まで金利が変わらなければ、中途換金した場合でも手取りで年0・3~0・5%と、銀行の定期預金に同じ期間預けたときを上回る利回りが期待できます(表)。
 変動金利10年物は適用利率が低く、あまり人気がありませんでした。しかし6月募集分から適用利率を決める方式が「長期金利に連動する基準金利×0・66」に変わり、低金利下でも比較的高い利率が適用されるようになりました。
 通常の債券と異なり、中途換金しても元本割れしない利点もあります。ただ、中途換金するときは、直前1年間に受け取った税引き後の利子相当額が「中途換金調整額」として差し引かれます。原則として発行後1年は中途換金できないので、短期の運用には向きません。また、変動金利10年物は年4回しか発行していません。6月募集の次に購入できるのは、9月募集(10月発行債)となります。
【表】変動金利10年物の個人向け国債の利回り   
保有期間   手取り利回り(%)
2年   0.308
3年   0.411
4年   0.462
5年   0.493
6年   0.513
7年   0.528
8年   0.539
9年   0.548
10年   0.616
適用利率が年0.77%(税引き後0.616%)で、満期まで変わらない場合を想定。「手取り利回り」は利子に対する20%課税と中途換金調整額を考慮した値   

コンピューターに投資判断委ねる、「ロボット投信」の実力は?

震災後の好成績で注目  規模縮小で早期償還も 定着するにはなお時間
 日本株の低迷が続くなか、銘柄選別や売買時期など投資判断の大半をコンピューターに委ねる「ロボット運用型」の投資信託が注目を集めている。東日本大震災で株価が急落した際も、プロの運用者顔負けの好成績を残す投信が出てきたからだ。もっとも、すべてのロボット投信が高い運用成果を上げているわけではない。ロボット投信のしくみや実力を点検した。
 震災と福島第1原子力発電所の事故が重なり、日経平均株価が8%強下落した3月。市場平均を上回る投資収益を狙うアクティブ型の日本株投信の基準価格(投信の時価)も、全393本の平均で7%弱下落した(格付投資情報センター調べ)。難しい運用環境で市場関係者の話題となったのが、約2%上昇と唯一のプラスを確保した一本の投信だった。
急落時に買い出動
 その名は「日本株ロボット運用投信(通称カブロボ)」。投資判断を下すコンピュータープログラムを1体のロボットと見立てて、株価動向や企業業績など分析手法の異なる6体のロボットが、割り振られた運用額の範囲内でそれぞれ株を売買する。原発事故の影響で株式相場が急落した3月14日の週に買いを膨らませ、相場が持ち直した翌週に株を売って利益を確保した。
 「株価が急落した時は、運用者が割安と思っても投資家への説明が難しいといった理由で買い向かうのをためらうことがある」。カブロボを運用するT&Dアセットマネジメント投信営業部の松倉和也氏はこう指摘する。「ロボット運用はこうした定性的な判断が一切入らない」という。
 30年近く前にロボット投信を始めた国際投信投資顧問も、その可能性に改めて着目している。6月20日に設定する投信「リバーサル・ジャパン・オープン」は、ニュースに過剰反応して売られすぎたと判断した銘柄を買い増すなど「逆張り」の投資が特徴だ。銘柄ごとに財務の健全性や米国株との連動性など45項目ものポイントをチェックし、機械的に売買を判断する。
 カブロボは、東京証券取引所第1部上場で時価総額や売買代金などが大きい約500銘柄、リバーサル・ジャパンもほぼ同じ条件で上位約100銘柄が投資対象だ。原発事故の賠償問題を抱える東京電力株のように、特殊要因で適正な株価水準を探るのが難しい場合は、人間の判断で対象から外すこともある。
 だが、前提条件を設定したら実際の運用はロボットに一任する。一般的なアクティブ投信のように運用者が企業訪問による分析や過去の経験などを投資判断に加味することはない。それぞれの投資モデルの有効性のみが問われる。
残高10分の1に
 表にあるように、コンピューターに投資判断を任せる投資信託は、IT(情報技術)バブル期の1998~2000年にかけて複数の運用会社が「クオンツ投信」と銘打って投入している。クオンツとは統計学を駆使して株価や企業の業績、財務などの各種指標を数量分析すること。その結果を基に投資先を選ぶ手法はカブロボと似ている。
 ただ、ロボット投信がこれまで個人投資家に受け入れられてきたとは言い難い。投信評価会社のモーニングスターによると、表にある主なロボット投信6本の合計残高は11年4月時点で147億円にすぎず、ここ10年ほどで10分の1以下に減っている(グラフ)。
 人気低迷は「ここ数年の運用成績が振るわなかった」(SMBC日興証券の桜井歩アセットマネジメント・マーケティング部長)ことが最大の要因。1年以上の期間でみると大半の投信は基準価格が2ケタ超の下落となっている。
 下落率は、多くの投信が成績比較の指標としている東証株価指数(TOPIX)に比べると総じて小さかったが、それで投資家が納得するわけではない。三菱UFJ投信クオンツ運用部の福本亘部長は「TOPIXにある程度連動させたうえで超過収益の上乗せを狙う商品設計なので、相場の下落が続くとどうしても影響を受ける」と話す。
 運用規模の小さい投信の保有者は早期償還を迫られるリスクもある。ニッセイアセットマネジメントは、無期限としていた「クオンツグロース」という投信の運用期間を、今年8月までに改めた。販売が伸び悩み、残高が5億円程度まで縮小。ある程度の資産規模が必要なクオンツ運用を続けられなくなったからだ。
 ロボット投信が個人の投資先として広がるかどうかは、運用成績次第ということになりそうだ。カブロボでは「これまで数万円単位の購入が多かったが、最近は成績好調を受けて百万円単位で買う人も出てきた」(販売会社のマネックス証券)というが、過去の相場上昇局面でTOPIXに大きく後れを取ったこともある。安定的に好成績を収めて資金を呼び込めるか、これから真価が問われる。
ヘッジファンド型も
 今後は、TOPIXといった市場平均を表す指標を上回っているかどうかではなく、下げ相場でもプラスの運用成績確保を目指す「ヘッジファンド型のクオンツ運用投信が普及する」(朝日ライフアセットマネジメントの佐久間真チーフファンドマネジャー)との見方もある。
 相場が上昇しても下落してもプラスの収益を追求するヘッジファンドは、割安な株の買いと割高な株の空売りを組み合わせる投資手法を多く使う。三菱UFJ投信では買いと空売りの判別をロボットに託す投信を手掛けており、4月末までの直近1年間はTOPIXが約14%下落したのに対し、運用成績は1%強のプラスを確保した。
 運用が上手なのは人間か、ロボットか。将棋やチェスの世界のように両者の実力差は小さくなりつつある。ロボット投信の運用能力が高まり、相場が低迷しても一定の収益を上げられる信頼度の高い商品が増えていくのか。見極めるにはもう少し時間がかかりそうだ。

2011年6月7日火曜日

「ねんきんネット」上手に活用――加入情報、いつでも確認OK

加入情報毎月更新 いつでも確認OK
 「おまえの学生時代の国民年金の保険料は払ってあるよ」とAさん(58)は亡母に聞いていた。それなのに年金記録からその期間が抜け落ちていた。そこで年金事務所へ年金記録の回復を申し出た。しかし「記録が見つからないので、回復はできない」という回答。
 納得できないときは、政府の年金記録確認第三者委員会に申し立てて、調査してもらえる。しかし、ここでもあいまいな記憶ばかりで記録訂正につながる関連資料、周辺状況が乏しいと回復は難しい。
 自分の年金をいつも、きちんと確認し、自分の記録の「漏れ」や「誤り」をその都度解消していれば、このような問題は起きなかったはずだ。
 その反省に立ち、2009年4月から、誕生月に年金の現役加入者に、自分の年金記録が確認できる「ねんきん定期便」が送られるようになった。
 さらに今年2月末より、日本年金機構は「ねんきんネット」というサービスを始めた。この最大の特徴は、インターネットを通じて国民の側から、いつでも毎月更新された年金制度の加入記録、未加入期間や未納期間などの年金情報を一覧で確認できることだ。
 このサービスを利用するには日本年金機構に申し込んでID・パスワードの発行を受ける必要がある。これまではネット上から申し込んで、IDなどが郵送されてくるのに2週間程度かかっていたが、「ねんきんネット」スタート後は5日程度となった。
 また、11年度に送られてくる「ねんきん定期便」に記入してある各自の17けたのアクセスキーを利用してネットから申し込めば、ID・パスワードは即時発行される。ただし、アクセスキーの有効期限は3カ月で、期限が切れると郵送になる。
 「ねんきんネット」で、いつも新しい年金記録を自分で確認し、年金給付で不利益を被らないようにしたい。

国債投資のイロハ――「個人向け」魅力は低リスク

変動10年、金利設定を変更 郵便局・銀行などで購入可能
「新窓販」中途換金に注意 市場価格で元本割れも
 東日本大震災後に株式や為替市場が大きく変動したのを受け、リスクの低い金融商品への関心が高まっている。安全資産の代表格として、国債に注目する人も多い。よく耳にするが、国債とはどのような商品なのか。国債投資の基本をおさらいしよう。
 国債は国が発行する利子付きの債券を指す。国は予算編成で歳入不足になった分、国債を発行して資金を借り入れる。投資家にとって国債を買うことは国に資金を貸すことを意味する。
投資初心者向き
 国債を購入すれば国から利子が支払われ、満期まで保有すれば投資資金(元本)は全て戻る。金融商品としては定期預金と似ている。国が財政破綻しない限り元本は回収できるので「安全資産で運用したい投資初心者向き」とファイナンシャルプランナー(FP)の馬養雅子さんは指摘する。
 個人が簡単に投資できる国債は2種類ある。「個人向け国債」と「新窓販国債」だ。個人向け国債は購入者を個人投資家に限定した商品で、最低1万円から購入できる。発行時に定めた利率が満期まで変わらない固定金利の3年物と5年物のほか、発行後に利率が変わる変動金利の10年物の3種類から選べる(表A)。
 変動10年物は市場で決まる長期金利に応じて、半年ごとに利率を見直す。長期金利が上がれば受け取る利子が増え、下がれば利子も減る。ただし、金利が下がっても最低で年0・05%の利率は保証される。
 換金性が高いのも個人向け国債の特徴だ。発行後1年(固定5年物は2年)たてば中途解約できる。換金時に違約金として直前2回分(固定5年物は4回分)の利子相当額の8割が差し引かれるが、元本は保証される。財務省のホームページには、中途換金時の受取金額を算出できるサイトがあるので参考にしよう。
 個人向け国債の利率を他の金融商品と比べるとどうなるだろう。例えば2011年7月発行分の固定5年物の利率は年0・41%(税引き前)。大手銀行の5年定期の利率(年0・06%程度)より高く、ネット銀行の定期預金(年0・2~0・3%程度)よりやや高い水準。一方、大企業が発行する個人向け社債ではリスクが高い分、利回りが年1%を超えるものもある。
 個人向け国債の利率は、市場金利の低下に伴って08年ごろから低水準が続いている。利率低下で国債離れが進み、発行額も減少。発行額はピーク時の05年度には7兆2000億円を超えていたが、10年度は7分の1の1兆278億円にとどまった。06~08年度は利率が年1%超と現在の2倍以上の商品も多く、魅力を感じる投資家が多かった。
 財務省は個人の国債離れを防ごうと、変動10年物について7月発行分から金利の決定方法を変更。従来は長期金利に連動して決まる基準金利から0・8%を差し引いていたが、基準金利に0・66を掛け合わせる方式に変える。基準金利が低い場合は新方式の方が利率が高くなる。「金利が低いという意見を参考に商品性を改善した」(財務省理財局国債業務課)という。
 新方式ではどれだけ利率が上がるのか。2日に適用利率を発表した7月発行分の10年物は、新方式で年0・77%(税引き前、初回利率)。従来方式では年0・37%で、設定変更に伴い0・4ポイント金利が高まった。「低金利時代に、金利1%台に期待を持てるような数少ない商品」とFPの前川貢さんは指摘する。
売買手数料なし
 個人が買える国債にはもう1種類ある。07年から販売が始まった新窓販国債だ。固定金利で2年物、5年物、10年物がある(表A)。最低5万円から購入できる。個人向け国債と異なり中途換金時に国が買い取る制度がないが、代わりに利率が高めなのが特徴だ。
 新窓販国債を満期前に換金したい場合は債券市場で売却する。ただし、価格は市場の実勢で決まるため、元本を割り込むこともあるので注意が必要だ。
 個人向け国債、新窓販国債ともに郵便局や銀行、証券会社などの金融機関の窓口で購入できる。ネットで買える金融機関もある。購入に当たっては国債用に新たに口座を開く必要があるが売買手数料はかからない。発行日前の一定期間に募集を受けるので財務省のホームページなどで日程を確認しよう。

2011年6月6日月曜日

老後資金、長持ちさせるには――使い道で区切り分散投資、物価上昇率上回る目標で。

取り崩し 金額より「率」を
 定年退職した後、それまでためたお金をどう運用するか。リタイア生活の資産運用は、現役時代と目標やリスクの取り方が違ってくる。大切なのは増やすことよりも、なるべく減らさず長持ちさせること。老後資金を運用しつつ細く長く使うコツを探った。
 「定年退職後の資産運用は、増やすことが目標だった現役時代と違って“減らさずに取り崩す”ことが目標」――。フィデリティ退職・投資教育研究所所長の野尻哲史さんはこう話す。年金生活では不足分を補うために貯蓄を取り崩す人が多い。60歳男性が平均余命まで生きると、貯蓄を取り崩しつつ暮らす期間は約23年になる。
拙速な運用避けて
 老後資金の主体は貯蓄と退職金だ。総務省「家計調査」によると、2010年の50代(2人以上の勤労者世帯)の貯蓄残高は平均約1600万円。定年時の平均的な退職金は、09年調査で約2180万円(中央労働委員会「賃金事情等総合調査」)だった。大卒社員では平均約2550万円。合計4000万円前後になるのが一般的なようだ。
 ファイナンシャルプランナー(FP)の深野康彦さんは「退職金はすぐに運用しなければならないと考える人が多い」と指摘。「数カ月は定期預金にして、ゆっくり使い道を考えよう」と助言する。
 老後資金は運用するお金としないお金を分けることが最初の一歩だ。深野さんは「元気で活動的な60代に使うお金は全体の45%くらい。すぐ使うので運用しないこと」と忠告する。70代に30%、80代以降に25%を振り分け、これが運用資金になる。
 FPの神戸孝さんは「普段の生活資金と、子どもの結婚資金援助など何かに使う“ゆとり資金”、相続も見据えた“残す資金”に3分割しよう」と提案する。生活資金は半年~1年分を目安に、引き出しやすさを最優先して普通預金など。ゆとり資金は使う際に減っていては困るので債券や定期預金など安全資産にする。病気など万一の時には使うが、何もなければ子どもに残す資金は長期運用に回す。
 こう考えると、リタイア後でも運用期間は10年以上を見込める。では目標利回りの目安はどう考えるか。神戸さんは「リタイア後、最大のリスクは物価上昇」とみる。手持ち資産の運用利回りは物価上昇率を上回ることが目標だ。
 「今はデフレで実感がないが、物価上昇に備えた運用利回りは資産全体に対して年3%程度が目標」(神戸さん)。深野さんも年2~3%を目安にする。運用するお金は総資産の半分ほどだ。運用しないお金を元本割れしない定期預金か個人向け国債にする場合、運用分は年5%程度の利回りを目指すことになる。
 グラフAは深野さんと神戸さんが提案する資産配分だ。深野さんは日本株と国内債券の利回りの低さを新興国株や金で補う。「運用資金は一度に全額投下せず、せめて1年くらいかけて徐々に資産配分を完成させる。資産だけでなく時間の分散も大切」と話す。神戸さんは先進国債券が多めで、世界の不動産投資信託(REIT)、金など商品も組み入れる。1年に一度は資産配分を見直すことも必要だ。
機動性で急落警戒
 一方、FPの前川貢さんは「振り返ると3~4年に一度くらいは市場が急落している」と指摘。リスク商品の価格が急落したときに機動的に資産を守れるよう、売却・換金しやすさを重視して、資産を重点的に預ける「本丸」の運用商品を決める。「例えば、ある程度利回りが高いけれど株式よりもリスクが低い先進国の国債などに投資する投信を“本丸”とし、状況に応じて一部を新興国株や商品など値動きが激しい資産に短期間投資し、利回りを上げるのも一案」(図B)という。
 野尻さんは退職後の人生を区切り、前半と後半で運用スタイルを変えることを提案する。ポイントは前半の「定率取り崩し法」。取り崩す金額でなく、資産残高に対して取り崩す割合を決める。
 なぜ金額でなく「率」か。取り崩す金額を固定すると、運用環境が悪く資産が目減りしたときに、残高に対して大きな割合を取り崩すことになり、その後の運用で損失を取り戻すのが難しくなるからだ。例えば毎年、資産の4%を取り崩すと決める場合、平均して利回り3%で資産を運用できれば、資産の実質的な目減りは平均1%ですむ。
 4000万円を運用せずに毎年4%取り崩した場合と、3%の利回りで運用しつつ4%取り崩した場合を比べるとどうなるか。運用しない場合、取り崩す金額は最初160万円だが、15年後には約90万円に減り、資産残高も15年後には約2200万円になってしまう。運用しつつ取り崩すと、取り崩し額は当初約165万円で、15年後には約141万円、資産は約3400万円残る計算だ(図C)。
 野尻さんは資産の取り崩しが前提のリタイア後の運用では、毎月分配型投信が便利だという。毎月安定して分配金が出れば、売却する手間がいらないためだ。ただ「低格付け債券や新興国債券など値動きが激しい投信だけでは、取り崩しながらの長期運用に向かない」(野尻さん)。
 体力や判断力が衰えるかもしれない後半は全額を元本割れがない安全資産にする。ここからは定額取り崩しでもいい。図Cをみると75歳から毎月12万円ずつ取り崩しても98歳まで持つ。

2011年6月5日日曜日

満期設定の投信増える

 新規設定の投資信託で、あらかじめ投信の運用が終了する日(満期償還日)を決めているものが増えている。5月に新規設定した追加型株式投信23本のうち、19本は償還日が決まっている。いつでも購入できる追加型投信は、これまで無期限のものが一般的だった。
 償還日を決めていることについて、運用会社は「設定時のコンセプトが時間がたつにつれて変わってくる」(大和証券投資信託委託)と説明する。市場の関心が高い分野に集中投資するテーマ型の投信などは、数年後には時代遅れになっている可能性があるためだ。
 無期限の投信を繰り上げ償還するには顧客の同意を得るなど手続きが煩雑だ。人気がなくなって残高が小さくなった投信でも運用を続けていることが多く、運用効率が悪化しがちという。償還日を決めておけば、こうした問題は避けられる。
 償還日の決まっている投信でも、投資テーマや人気が継続していれば、運用会社の判断で償還日を先送りすることもある。ただ、原則的には償還日に自動的に現金化されるので注意が必要だ。

定年後の住宅ローン返済は?――生活考慮し3手法から選択

ファイナンシャルプランナー 畠中雅子氏
 定年間近の会社員です。7年前に購入した自宅マンションのローンが約1500万円残っています。現在、預貯金は1千万円。退職金は2千万円を見込んでいます。ローンの全額繰り上げ返済を考えていますが、老後の蓄えに不安が残ります。どのような対処方法があるか教えてください。(東京都の50代男性)
 購入時期が遅かったり、住み替えをしたりした場合、退職年齢を過ぎても住宅ローンの返済が続くことは少なくありません。相談者の場合、選択肢は大きく分けて3つあります。
 (1)退職金で一括繰り上げ返済 将来の金利負担がなくなる利点がありますが、手持ちの預貯金は大きく減ります。相談者の場合は、退職金の大半を充てることになり、手元に残るのは1500万円。生活スタイルにもよりますが、夫婦2人で平均余命まで生きるとすると、十分とはいえないかもしれません。
 (2)従来通り、月々の返済を続ける 退職金をまるまる手元に残すことができる半面、再就職などで一定の収入を確保できないと年金の満額受給開始まで家計の赤字が続く可能性があります。そうなると、向こう4~5年間、蓄えをずるずると取り崩す生活が続くおそれがあります。(1)との折衷案として、一部繰り上げ返済で、月々の返済額を減らす手もあります。また、完済前に相談者が亡くなった場合、団体信用生命保険に加入していればローンの残額が清算されます。
 (3)金融型リバースモーゲージに借り換える リバースモーゲージとは、高齢者が自宅を担保に老後の生活資金などを借り入れ、死後に担保になった土地や住宅を売却して一括返済する仕組みです。自宅に住み続けながら、生きている間は、利息のみの支払いで元本返済は不要です。
 一部の金融機関では、借入額と同額以上の預金をすることで、利息を支払わなくて済む仕組みを導入しています。リバースモーゲージを使って借換資金を捻出したうえで、同額の預金をすれば、手持ちの資金を減らすことなく、利息負担からも解放されます。もちろん、預金額が借入額を下回れば、利息の支払いが発生します。老後資金のめどが立った時点で一括返済しないと、妻や子どもに住宅を残せない可能性がある点にも注意が必要です。

座談会、震災復興と日本株の見通し――株価上昇、夏場以降に。

野村アセットマネジメント執行役員チーフ・インベストメント・オフィサー 南村芳寛氏
メリルリンチ日本証券チーフ株式ストラテジスト 菊地正俊氏
南村氏 GDP、V字回復  菊地氏 米中景気を注視
 日本経済研究センターは1日、野村アセットマネジメントの南村芳寛執行役員チーフ・インベストメント・オフィサーとメリルリンチ日本証券の菊地正俊チーフ株式ストラテジストを招き、「震災復興と日本株の見通し」と題した座談会を開いた。両氏は、株式相場は2012年度の企業業績の回復を織り込み、日経平均株価は来年3月末に1万1000円前後に上昇すると予想。また震災復興には、政府の迅速な政策決定が必要との見方で一致した。司会は中野義一・日本経済新聞社証券部長。(文中敬称略)
 司会 東日本大震災後の日本経済や企業業績の見通しは。
 南村 2011年度の実質国内総生産(GDP)の成長率は0・1%、来年度は3%と予想している。サプライチェーン(供給網)の寸断による供給面での制約は予想以上のペースで小さくなっており、秋口までに正常化に向かう。政府の財政出動が本格化する今年7~9月期には「V字回復」を果たすとみている。金融・公益を除いたベースでの企業の経常利益は、今期は前期比横ばいか小幅な減少だが、来期は10%台後半の増益になる。
 菊地 当社は今年度の実質GDP成長率を0・8%、来年度で3・4%と予想している。マクロ経済予測などから分析すると、今期の経常利益は前期に比べて9・4%減少する。サプライチェーンの回復は想定以上に早いが、これまでは震災前からあった部品在庫が生産を支えていた面があった。その在庫も7~9月期に品切れになる。夏場の節電も生産に影響を与える。
 司会 復興に向けて求められる政策は何か。
 南村 第2次補正予算を1日でも早く成立させてほしい。増税のタイミングはよく考えないといけない。いきなり大幅な増税をすると、経済活動が落ち込み、かえって税収が減ってしまう。企業は今後、部品調達先の分散や海外生産、汎用化などを進めるだろう。危機をバネに業務改革を推進するが、国全体でみれば産業の空洞化を招いてしまう。国内への投資を後押しする政策も必要だ。
 菊地 迅速に政策を決めてもらいたい。補正予算や原子力発電所事故の賠償スキームは今国会で通すべき法案だ。復興を早めるには、東京電力本社の福島への移転、政府機能の被災地域への一部移転、被災地域に投資をした企業への免税など思い切った政策を出したほうがいい。日本が生き残る道はグローバル化しかない。環太平洋経済連携協定(TPP)への加入を進め、中国や韓国など海外の資本を呼び込む。「海外企業による買収を歓迎する」というメッセージを発信するだけでも効果はある。
 司会 政治が混乱している。株式市場への影響はあるか。
 南村 政治混乱はリスク。政策が場当たり的になり、経営者や投資家、消費者の経済活動を営む意欲をそいでしまう。
 菊地 外国人にとって、日本の政治の混乱はいつものこと。混乱が収まれば「サプライズ」と受け止める、といった程度だ。政治より米国や中国の景気、為替相場の動きの方が日本株には重要。日本企業の業績がよくなったり、海外の株価が上がったりすれば、政治とは無関係に外国人は日本株を買う。
 司会 世界経済の見通しは。
 菊地 当社で米国を担当するエコノミストは最近、米経済見通しを下方修正した。原因はガソリン高と住宅。特に住宅市場の落ち込みが経済全体の二番底につながらないか、注意が必要だ。また私が訪問したアジアの投資家は、中国の金融引き締めは年内いっぱい続き、来年の成長率は鈍化すると見ていた。
 南村 米国では6月末に金融の量的緩和第2弾(QE2)が終わる。ただ、足元では幾分景気のピークアウト感が見られ、当面は緩和的な金融政策が採られるだろう。利上げは、早くても失業率の改善などが確認できる来年後半以降だ。
株、年度末1万1000円も
円相場は見方分かれる
 司会 米国の量的緩和第2弾(QE2)終了後の市場は。
 菊地 運用担当者を対象にした当社の調査では、投資家は株式や商品から安全資産とされる国債に資金をシフトさせている。米国の投資信託では、株式より債券で運用する商品が選好されている。QE2終了で先行きへの不安が強まっており、米長期金利は上がりにくいだろう。米長期金利は日経平均との相関が強く、日経平均が伸び悩む展開が2~3カ月続きそうだ。
 南村 QE2終了決定や新興国の金融引き締めで投資資金の余剰感が弱まってきた。ただ、株式や商品への資金の流れを逆転させる力はない。新興国需要が支えになり、商品相場の調整は短期で終わる。
 司会 来年3月末までの日経平均と円相場の見通しは。
 南村 日経平均は当面9000円台後半で推移するが、年度末には1万1000円に向けて上昇するだろう。企業業績の回復や国内の低金利が支援材料。円相場は1ドル=80円を中心とした動きになる。米連邦準備理事会(FRB)が何度か利上げをするまではドル高基調になりにくい。
 菊地 QE2終了や米中景気に対する警戒感が重荷となり、日経平均は7月に8500円まで調整する可能性がある。その後は来年度業績の大幅増益を織り込みにかかり、年度末には1万1000円に上昇するだろう。業績回復に確信を強めた企業が増配する動きに期待している。当社グループでは円相場は年末に1ドル=88円、年度末は90円とみている。日米金利差の拡大で円安・ドル高が進みやすい。
 司会 投資先として有望な業種や銘柄は何か。
 南村 新興国の成長を取り込める外需関連だ。ほかに期待しているのが省エネルギー関連銘柄。原発事故をきっかけに日本はエネルギー利用効率を一層高める必要に迫られており、省エネ住宅や住宅設備機器、電気自動車、炭素繊維、太陽電池を手掛ける銘柄に注目している。高成長が続くアジア株式も魅力的だ。経済の安定感が強い東南アジア諸国連合(ASEAN)、インドなどだ。
 菊地 通信・インターネット関連、総合電機、電子部品、商社の4業種に注目している。通信・インターネットはスマートフォン(高機能携帯電話)の普及が追い風になる。震災をきっかけに日本製の電子部品が世界の自動車などの生産に不可欠だと認識された。その重要性から外国企業の買収の対象になり得る。新興国の成長に伴って商品相場は中長期的に上昇が続くと見ており、商社株や金も保有すべきだろう。

2011年6月4日土曜日

電子マネーで支払った最高額は?

「5000円以上1万円未満」が14%
 コンビニエンスストアや飲食店など、支払いに電子マネーが使える場所が増えてきた。これまでに電子マネーで1回に支払った最高額(交通費を除く)を聞いたところ「5000円以上1万円未満」が14%で最も多かった。次いで「1000円未満」と「1000円以上3000円未満」がともに12%を占めた。
 交通費以外で電子マネーをよく使う場所を複数回答で尋ねたところ「コンビニやスーパー・駅売店」が86%で圧倒的に多かった。2位以下は自動販売機(19%)、書店や雑貨店(16%)、コーヒーショップやレストラン(14%)となった。
 電子マネーを使う理由としては「ポイントがたまる分、現金よりお得」(広島県の男性会社員、38)との声が多かった。電子マネー選びではポイントのためやすさが重視されている。「小銭のやり取りがないので便利」(福岡県の主婦、45)との意見も目立った。
 一方で「チャージをするときが面倒」(愛知県の男性会社員、34)との不満もある。「買い物や食事などで電子マネーを使わない」という人は全体の46%。「お金を使った実感がないので浪費気味になる」(埼玉県の主婦、38)のが心配なのかもしれない。

ネット家計簿、使いやすく――口座取引情報を自動収集

 夏のボーナスはあまり期待できそうにないという人もいるだろう。収入が増えない中、家計の見直しをするうえで現状の把握は大切。そこで利用してみたいのがインターネットを使った家計簿サービスだ。挫折せずに続けられるような工夫が相次いでおり、利用者も増えている。使い方や注意点を調べてみた。
 「家計簿の継続のコツはダイエットと同じ」と、あるファイナンシャルプランナー(FP)は話す。どちらも数値を記録し、そこから改善点を探る必要があるが、面倒になるとやはり続かなくなってしまう。
 家計簿というとノートに書き込む方法が思い浮かぶが、手作業で集計や比較をしなければならず、手間がかかる。こうした作業を楽にこなしてくれるのがパソコンを使ったデジタル家計簿で、計算ソフトのエクセルや家計簿専用ソフトを使っている人も多い。さらに最近は、インターネットにつなぐことで入力の手間などを一段と簡単にしたタイプの「ネット家計簿」が人気となっている。
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 ネット家計簿サービスは基本的に無料で使える場合が多く、利用者がうなぎのぼりに増加している。主なネット家計簿のサービスを表で比較してみた。
 NTTメディアサプライが提供する「ココマネ」は2009年の開始以来、20~40代の女性を中心に登録会員20万人を超える巨大サイトに成長している。
 こだわりは入力のしやすさ。自分の利用スタイルに合わせて、項目や画面の変更が可能だ。表で紹介した4つのサービスの中ではカスタマイズに優れている。携帯電話サイトやスマートフォン(高機能携帯電話)「iPhone」にも対応しており、買い物直後や移動中などでも入力できる。現金での買い物が多い人や、家計簿をつけるためにパソコンを起動するのが面倒という人に向くだろう。
 ココマネのもう一つの特徴は、家計簿をつけて家計を改善していく楽しさを感じられる仕組みを導入している点だ。その核となるのが会員同士が交流できる「コミュニティ」。同じ目標を持つ仲間を探したり、匿名でおカネについての相談ができたりする。自分の家計簿の中身を公開することもできる。FPの花輪陽子さんは「仲間をつくり目標を共有することで続けやすくなるので、家計管理にも応用してほしい」という。
 もう一歩進んだサービスとして導入が増えているのが、銀行口座などの一元管理だ。今春からサービスを開始したNTTコミュニケーションズの「OCN家計簿」とソニー銀行の「人生通帳 家計簿」は、この機能を盛り込んでいる。
 口座一元管理サービスとは、銀行やクレジットカード会社などの口座情報や暗証番号を登録しておくと、ネット上で残高や取引明細を自動的に集めて取り込む機能だ。OCN家計簿と人生通帳家計簿では、登録したネットサイトの口座情報を集約し、家計簿の形で表示する。ネットバンキングやクレジットカード利用が多い人の場合、口座ごとに暗証番号などを入力しなくて済むのでとても便利だ。
 「家計簿では記入漏れとなりやすいATM手数料など細かい支出項目まで集計できます」(NTTコミュニケーションズOCNサービス部・黒田和宏さん)。自動的に情報を集めるので、正確な支出管理をしやすい。OCN家計簿はIDを取得すれば誰でも利用が可能。人生通帳はソニー銀行の口座保有者向けのサービスだ。
 02年から口座一元管理サービスを提供してきたマネールックでは、昨年ウェブブラウザ版を導入、資産管理だけでなく家計簿機能も充実させている。家計簿は金額、メモ、項目を入力するだけの簡単なものだが、項目ごとの予算比較やグラフ化などができる。資産管理をメーンにし、家計簿もシンプルに使いたいという人におすすめだ。
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 家計簿がネットにつながると、どこからでも入力できたり、口座を一元管理したり、他人との比較ができたりするといった利点がある。各社とも利用者の反応や要望を聞きながら、サービスの機能改善を進めていく方針だ。予算オーバーの警告やカードの支払期日のお知らせメールなど、忠告や助言機能を追加することも想定されている。
 ただ、個人情報の流出などネットサービスの安全性に不安を感じる人もいるだろう。ネット家計簿サービスは顧客満足度向上の一環として手掛けているところが多く、会社側の都合で終了してしまうリスクもある。信頼できるサービス元かどうかを確認したうえで、上手に活用してほしい。