2011年6月12日日曜日

コンピューターに投資判断委ねる、「ロボット投信」の実力は?

震災後の好成績で注目  規模縮小で早期償還も 定着するにはなお時間
 日本株の低迷が続くなか、銘柄選別や売買時期など投資判断の大半をコンピューターに委ねる「ロボット運用型」の投資信託が注目を集めている。東日本大震災で株価が急落した際も、プロの運用者顔負けの好成績を残す投信が出てきたからだ。もっとも、すべてのロボット投信が高い運用成果を上げているわけではない。ロボット投信のしくみや実力を点検した。
 震災と福島第1原子力発電所の事故が重なり、日経平均株価が8%強下落した3月。市場平均を上回る投資収益を狙うアクティブ型の日本株投信の基準価格(投信の時価)も、全393本の平均で7%弱下落した(格付投資情報センター調べ)。難しい運用環境で市場関係者の話題となったのが、約2%上昇と唯一のプラスを確保した一本の投信だった。
急落時に買い出動
 その名は「日本株ロボット運用投信(通称カブロボ)」。投資判断を下すコンピュータープログラムを1体のロボットと見立てて、株価動向や企業業績など分析手法の異なる6体のロボットが、割り振られた運用額の範囲内でそれぞれ株を売買する。原発事故の影響で株式相場が急落した3月14日の週に買いを膨らませ、相場が持ち直した翌週に株を売って利益を確保した。
 「株価が急落した時は、運用者が割安と思っても投資家への説明が難しいといった理由で買い向かうのをためらうことがある」。カブロボを運用するT&Dアセットマネジメント投信営業部の松倉和也氏はこう指摘する。「ロボット運用はこうした定性的な判断が一切入らない」という。
 30年近く前にロボット投信を始めた国際投信投資顧問も、その可能性に改めて着目している。6月20日に設定する投信「リバーサル・ジャパン・オープン」は、ニュースに過剰反応して売られすぎたと判断した銘柄を買い増すなど「逆張り」の投資が特徴だ。銘柄ごとに財務の健全性や米国株との連動性など45項目ものポイントをチェックし、機械的に売買を判断する。
 カブロボは、東京証券取引所第1部上場で時価総額や売買代金などが大きい約500銘柄、リバーサル・ジャパンもほぼ同じ条件で上位約100銘柄が投資対象だ。原発事故の賠償問題を抱える東京電力株のように、特殊要因で適正な株価水準を探るのが難しい場合は、人間の判断で対象から外すこともある。
 だが、前提条件を設定したら実際の運用はロボットに一任する。一般的なアクティブ投信のように運用者が企業訪問による分析や過去の経験などを投資判断に加味することはない。それぞれの投資モデルの有効性のみが問われる。
残高10分の1に
 表にあるように、コンピューターに投資判断を任せる投資信託は、IT(情報技術)バブル期の1998~2000年にかけて複数の運用会社が「クオンツ投信」と銘打って投入している。クオンツとは統計学を駆使して株価や企業の業績、財務などの各種指標を数量分析すること。その結果を基に投資先を選ぶ手法はカブロボと似ている。
 ただ、ロボット投信がこれまで個人投資家に受け入れられてきたとは言い難い。投信評価会社のモーニングスターによると、表にある主なロボット投信6本の合計残高は11年4月時点で147億円にすぎず、ここ10年ほどで10分の1以下に減っている(グラフ)。
 人気低迷は「ここ数年の運用成績が振るわなかった」(SMBC日興証券の桜井歩アセットマネジメント・マーケティング部長)ことが最大の要因。1年以上の期間でみると大半の投信は基準価格が2ケタ超の下落となっている。
 下落率は、多くの投信が成績比較の指標としている東証株価指数(TOPIX)に比べると総じて小さかったが、それで投資家が納得するわけではない。三菱UFJ投信クオンツ運用部の福本亘部長は「TOPIXにある程度連動させたうえで超過収益の上乗せを狙う商品設計なので、相場の下落が続くとどうしても影響を受ける」と話す。
 運用規模の小さい投信の保有者は早期償還を迫られるリスクもある。ニッセイアセットマネジメントは、無期限としていた「クオンツグロース」という投信の運用期間を、今年8月までに改めた。販売が伸び悩み、残高が5億円程度まで縮小。ある程度の資産規模が必要なクオンツ運用を続けられなくなったからだ。
 ロボット投信が個人の投資先として広がるかどうかは、運用成績次第ということになりそうだ。カブロボでは「これまで数万円単位の購入が多かったが、最近は成績好調を受けて百万円単位で買う人も出てきた」(販売会社のマネックス証券)というが、過去の相場上昇局面でTOPIXに大きく後れを取ったこともある。安定的に好成績を収めて資金を呼び込めるか、これから真価が問われる。
ヘッジファンド型も
 今後は、TOPIXといった市場平均を表す指標を上回っているかどうかではなく、下げ相場でもプラスの運用成績確保を目指す「ヘッジファンド型のクオンツ運用投信が普及する」(朝日ライフアセットマネジメントの佐久間真チーフファンドマネジャー)との見方もある。
 相場が上昇しても下落してもプラスの収益を追求するヘッジファンドは、割安な株の買いと割高な株の空売りを組み合わせる投資手法を多く使う。三菱UFJ投信では買いと空売りの判別をロボットに託す投信を手掛けており、4月末までの直近1年間はTOPIXが約14%下落したのに対し、運用成績は1%強のプラスを確保した。
 運用が上手なのは人間か、ロボットか。将棋やチェスの世界のように両者の実力差は小さくなりつつある。ロボット投信の運用能力が高まり、相場が低迷しても一定の収益を上げられる信頼度の高い商品が増えていくのか。見極めるにはもう少し時間がかかりそうだ。

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