「7月から週休3日なんだって」。国が夏の節電目標を15%と定めた5月中旬、東京都内の大手メーカー本社で派遣社員として働く50代の独身女性は、職場で同僚の正社員から聞いた言葉に耳を疑った。「どうしよう」。今後の生活への不安が襲ってきた。 「今年だけなら」 これまでは週休2日で月20万円弱の手取り。週休3日になれば約4万円減る計算だ。毎月の家賃(7万円)を払い、生活費をやりくりしながら趣味の演劇鑑賞を2~3回、楽しんでいたが、「この夏は劇場に足を運ぶのを控えざるを得ない。バーゲンにも行けないかも」と表情を曇らせる。 週休3日は最大3カ月。来年以降については会社側からの説明はなく、「今年だけなら我慢できるけど」。 以前の派遣先では、2008年のリーマン・ショックをきっかけに、「雇い止め」にあった。「正社員になりたいが、年齢もあって、難しい」とため息をつく。 東京都心部の機械販売会社で働く別の派遣社員の女性(38)の目下の悩みは「長期夏休み」の取得だ。電力使用を減らすため、派遣先は7月と8月に9日間ずつ、本社ビルを一斉消灯。派遣社員を含め全員が“強制休暇”となる。 職場の正社員の中には、楽しげに家族旅行の計画を話したり、旅行会社のホームページを見たりする人がいる。「収入が減り、とてもそんな気分にはなれない」。短期のアルバイトで減収の穴埋めに充てるつもりだ。 東日本大震災と福島第1原子力発電所事故に伴う電力不足は、企業活動に大きな影響を与えた。操業を縮小する例も多く、休暇取得の促進や勤務の形態などが変わる企業も相次ぐ。 最もしわ寄せを受けるのは、派遣社員ら非正規労働者。雇用環境は被災地以外でも厳しく、3県を除く4月の完全失業率は4・7%と、6カ月ぶりに悪化。厚生労働省が調べた3~5月の非正規労働者の雇い止めは約1万4千人に及んでいる。 節電で仕事白紙 個人加入の労働組合「派遣ユニオン」によると、電子部品工場で働く予定だった男性の派遣社員2人の仕事が5月中旬、白紙になった。説明された理由は「節電」。男性側は派遣元と交渉し、1カ月後に、別の仕事が決まった。 「震災で3週間ほど、自宅待機になった」「休業手当は受け取れないのか」。東京の3弁護士会が24日、開設した電話相談には、震災や節電に伴う労働相談が寄せられた。労働問題に詳しい水口洋介弁護士は「節電は社会全体の課題だが、非正規など、弱い立場の労働者に減収などの負担が回りやすい」と分析する。 厚生労働省は震災後、派遣労働者らの仕事がなくなったり賃金が減ったりしないよう事業者に呼び掛けている。また、労働基準法では会社都合の休業の場合、会社が従業員に賃金の6割以上を手当として支払うことを義務付けているが、「節電で勤務日数が減るような場合、必ずしも支払い義務があるわけではない」(同省)。 派遣社員らにとって家計への負担は軽くなく、救済を求める声は多い。 |
2011年6月29日水曜日
渇電首都圏の夏 休み増えても喜べない、収入・雇用、派遣にしわ寄せ。
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