2011年6月5日日曜日

座談会、震災復興と日本株の見通し――株価上昇、夏場以降に。

野村アセットマネジメント執行役員チーフ・インベストメント・オフィサー 南村芳寛氏
メリルリンチ日本証券チーフ株式ストラテジスト 菊地正俊氏
南村氏 GDP、V字回復  菊地氏 米中景気を注視
 日本経済研究センターは1日、野村アセットマネジメントの南村芳寛執行役員チーフ・インベストメント・オフィサーとメリルリンチ日本証券の菊地正俊チーフ株式ストラテジストを招き、「震災復興と日本株の見通し」と題した座談会を開いた。両氏は、株式相場は2012年度の企業業績の回復を織り込み、日経平均株価は来年3月末に1万1000円前後に上昇すると予想。また震災復興には、政府の迅速な政策決定が必要との見方で一致した。司会は中野義一・日本経済新聞社証券部長。(文中敬称略)
 司会 東日本大震災後の日本経済や企業業績の見通しは。
 南村 2011年度の実質国内総生産(GDP)の成長率は0・1%、来年度は3%と予想している。サプライチェーン(供給網)の寸断による供給面での制約は予想以上のペースで小さくなっており、秋口までに正常化に向かう。政府の財政出動が本格化する今年7~9月期には「V字回復」を果たすとみている。金融・公益を除いたベースでの企業の経常利益は、今期は前期比横ばいか小幅な減少だが、来期は10%台後半の増益になる。
 菊地 当社は今年度の実質GDP成長率を0・8%、来年度で3・4%と予想している。マクロ経済予測などから分析すると、今期の経常利益は前期に比べて9・4%減少する。サプライチェーンの回復は想定以上に早いが、これまでは震災前からあった部品在庫が生産を支えていた面があった。その在庫も7~9月期に品切れになる。夏場の節電も生産に影響を与える。
 司会 復興に向けて求められる政策は何か。
 南村 第2次補正予算を1日でも早く成立させてほしい。増税のタイミングはよく考えないといけない。いきなり大幅な増税をすると、経済活動が落ち込み、かえって税収が減ってしまう。企業は今後、部品調達先の分散や海外生産、汎用化などを進めるだろう。危機をバネに業務改革を推進するが、国全体でみれば産業の空洞化を招いてしまう。国内への投資を後押しする政策も必要だ。
 菊地 迅速に政策を決めてもらいたい。補正予算や原子力発電所事故の賠償スキームは今国会で通すべき法案だ。復興を早めるには、東京電力本社の福島への移転、政府機能の被災地域への一部移転、被災地域に投資をした企業への免税など思い切った政策を出したほうがいい。日本が生き残る道はグローバル化しかない。環太平洋経済連携協定(TPP)への加入を進め、中国や韓国など海外の資本を呼び込む。「海外企業による買収を歓迎する」というメッセージを発信するだけでも効果はある。
 司会 政治が混乱している。株式市場への影響はあるか。
 南村 政治混乱はリスク。政策が場当たり的になり、経営者や投資家、消費者の経済活動を営む意欲をそいでしまう。
 菊地 外国人にとって、日本の政治の混乱はいつものこと。混乱が収まれば「サプライズ」と受け止める、といった程度だ。政治より米国や中国の景気、為替相場の動きの方が日本株には重要。日本企業の業績がよくなったり、海外の株価が上がったりすれば、政治とは無関係に外国人は日本株を買う。
 司会 世界経済の見通しは。
 菊地 当社で米国を担当するエコノミストは最近、米経済見通しを下方修正した。原因はガソリン高と住宅。特に住宅市場の落ち込みが経済全体の二番底につながらないか、注意が必要だ。また私が訪問したアジアの投資家は、中国の金融引き締めは年内いっぱい続き、来年の成長率は鈍化すると見ていた。
 南村 米国では6月末に金融の量的緩和第2弾(QE2)が終わる。ただ、足元では幾分景気のピークアウト感が見られ、当面は緩和的な金融政策が採られるだろう。利上げは、早くても失業率の改善などが確認できる来年後半以降だ。
株、年度末1万1000円も
円相場は見方分かれる
 司会 米国の量的緩和第2弾(QE2)終了後の市場は。
 菊地 運用担当者を対象にした当社の調査では、投資家は株式や商品から安全資産とされる国債に資金をシフトさせている。米国の投資信託では、株式より債券で運用する商品が選好されている。QE2終了で先行きへの不安が強まっており、米長期金利は上がりにくいだろう。米長期金利は日経平均との相関が強く、日経平均が伸び悩む展開が2~3カ月続きそうだ。
 南村 QE2終了決定や新興国の金融引き締めで投資資金の余剰感が弱まってきた。ただ、株式や商品への資金の流れを逆転させる力はない。新興国需要が支えになり、商品相場の調整は短期で終わる。
 司会 来年3月末までの日経平均と円相場の見通しは。
 南村 日経平均は当面9000円台後半で推移するが、年度末には1万1000円に向けて上昇するだろう。企業業績の回復や国内の低金利が支援材料。円相場は1ドル=80円を中心とした動きになる。米連邦準備理事会(FRB)が何度か利上げをするまではドル高基調になりにくい。
 菊地 QE2終了や米中景気に対する警戒感が重荷となり、日経平均は7月に8500円まで調整する可能性がある。その後は来年度業績の大幅増益を織り込みにかかり、年度末には1万1000円に上昇するだろう。業績回復に確信を強めた企業が増配する動きに期待している。当社グループでは円相場は年末に1ドル=88円、年度末は90円とみている。日米金利差の拡大で円安・ドル高が進みやすい。
 司会 投資先として有望な業種や銘柄は何か。
 南村 新興国の成長を取り込める外需関連だ。ほかに期待しているのが省エネルギー関連銘柄。原発事故をきっかけに日本はエネルギー利用効率を一層高める必要に迫られており、省エネ住宅や住宅設備機器、電気自動車、炭素繊維、太陽電池を手掛ける銘柄に注目している。高成長が続くアジア株式も魅力的だ。経済の安定感が強い東南アジア諸国連合(ASEAN)、インドなどだ。
 菊地 通信・インターネット関連、総合電機、電子部品、商社の4業種に注目している。通信・インターネットはスマートフォン(高機能携帯電話)の普及が追い風になる。震災をきっかけに日本製の電子部品が世界の自動車などの生産に不可欠だと認識された。その重要性から外国企業の買収の対象になり得る。新興国の成長に伴って商品相場は中長期的に上昇が続くと見ており、商社株や金も保有すべきだろう。

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