差損出れば金利収入帳消し 「新興国」短期で乱高下も
日本国内に住んでいても、外国の通貨で預金したり、外貨建ての債券を買ったりすることができる。円高が進み、国内の低金利が続くなか、外貨で資産を持つことに興味を持つ人が増えている。だが、外貨投資には注意すべき点も多い。外貨を持つ前に、その仕組みや知識をおさらいしておこう。
米ドル、ユーロ、豪ドル、英ポンド、中国人民元、南アフリカランド――。世界には国や地域ごとに通貨があり、その種類は百数十種類といわれる。それぞれの通貨は「流通する国や地域、ほかの通貨との交換のしやすさ(流動性)、金利などの違いがある」(国際通貨研究所の森川央・上席研究員)。
外貨で資産を持つ場合、まず注意しなければならないのは、円と外貨を交換する取引の比率を指す「為替レート」が、常に変動している点だ。
通貨間需給で決定
手数料や金利を考えず、単純な図式で考えてみよう。1ドル=100円のときに、100万円をドルで預金したとする。手元には1万ドルの預金ができた。仮に1ドル=150円の円安になると、1万ドルの預金は150万円の価値になる。逆に1ドル=50円まで円高が進むと、1万ドルは50万円の価値にしかならない。
外貨を持つことはこうした「為替リスク」を抱えることを意味する。為替相場が有利に働いて利益が出る(「為替差益」という)こともあれば不利に働いて損する(「為替差損」という)こともある。
それでは、為替レートはどう決まるのだろう。大原則として、相場は2つの通貨間での需給で決まる。通貨を欲しがる人が多くなれば、その国の通貨の価値は上がる(高くなる)。
通貨の需給を決める要因は様々だが基本的に経済力の強い国の通貨は高くなる。経済力とは簡単に言えば「工業製品や資源など、他の国が欲しがるモノを持っていること」(国際通貨研の森川氏)。強い国の通貨はモノを買うために必要なので需要が高まる。
通貨ごとの金利の違いも為替レートに影響する。同じ期間なら金利の高い通貨で保有するほうが金利収入が多くなる。投資家は金利が低い通貨を高い通貨に換えようとするため、金利が高い通貨は上昇しやすい。
ただし金利収入を稼げるのはあくまでその通貨ベースの話。円換算で考えた場合は「金利よりも為替変動のほうが影響が大きい」(三菱東京UFJ銀行の宿輪純一シニアエコノミスト)ため、金利収入を為替差損が吹き飛ばしてしまうこともある。
「保険」の役割
通貨によって、為替相場の動き方にも違いがある。
米ドルやユーロ、円など先進国の通貨同士は取引が活発で、いつでも世界のどこかで取引されている。日本国内でも先進国の通貨なら多くの金融機関などで購入できる。
一方でブラジルレアルや南アフリカランドなど新興国の通貨は、先進国通貨に比べて取引量が少なく、日本で購入できる窓口も多くない。新興国は通貨の取引に対して「規則や課税などで取引量を抑制することがある」(宿輪氏)のが一因だ。このため一般的に、取引が活発な先進国通貨同士に比べ、取引が少ない新興国の通貨は短期間に大きく変動しやすいとされる。
外貨建ての資産は為替のリスクが大きい。ただファイナンシャルプランナーの深野康彦氏は「家計の支出増に備える『保険』の役割もある」と話す。日本で暮らす上で食料や原燃料など多くを輸入に頼らなければならないためだ。
例えば10ドルで購入できる小麦があったとする。1ドル=80円なら800円で購入できる。ところが1ドル=120円の円安になれば単純計算で1200円に値上がりする。
そこで1ドル=80円のときに5ドルを購入しておく。すると1ドル=120円になった場合でも、5ドルの価値が400円から600円になるので、家計全体では円安による値上げ分の一部をカバーできる。逆に円高になった場合は輸入品の価格が下がるので家計にはプラスに働きやすい。保有する量が適切ならドルの価値低下は「値上げリスクに対する『保険料』と納得できるのでは」と深野氏は話す。
将来の為替レートはプロでも予想が難しい。まずは為替相場の変動によるリスクを理解したうえで、自分が外貨で資産を持つ必要があるかを考えたい。
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