2013年1月31日木曜日
山を動かす(4)送金月850億円―ITが示す脱貧困の道
大阪市で働く横田ロセル(29)は昨年11月、スマートフォン(スマホ)を使い、フィリピンの父親に10万円を送った。父はメールで届いた「送金番号」と身分証明書を質屋にある窓口に提示、お金を受け取った。
スマホで手軽に
使ったのはソフトバンクの子会社が運営する国際送金サービス。お金はコンビニから専用の「口座」に入れておき、銀行は必要ない。同じ会社で働くメアリー・ルー・オオニシ(25)もクリスマス前に母親に送金し「とても手軽」と満足顔だ。
スマホなどを使った送金が世界中で増えている。例えば英ボーダフォン子会社の「M―PESA」は1600万人の利用者を抱え、インターネット上を行き交うお金が月850億円にも上る。
世界銀行によれば途上国の労働者による送金は国をまたぐものだけで年間4千億ドル。世界で行われる政府開発援助(ODA)の3倍に匹敵する規模になっている。
途上国では富裕層でないと銀行口座が開きにくい。だがスマホが口座の代わりになることで送金は誰でも可能になる。家族は送られたお金を消費に回し、地元の経済に利益をもたらす。
「携帯の普及がバングラデシュの農村に変革を起こした」。アジア開発銀行(ADB)副局長の山縣丞(58)は満足げだ。ADBは同国のグラミン・テレコムに3760万ドルを出融資、2千万人を超す人々に携帯サービスを提供した。その結果が農家の所得向上だ。
カギになったのは市況情報。農家が仲買人にだまされることが減り、作物の育て方や肥料の在庫状況などもわかるようになった。関連ビジネスの拡大を含め、雇用は13万5千人増えた。
英誌エコノミストは「新興国は現在の先進国より短い期間で豊かな生活を手に入れられる」と予測する。理由の一つはネットの普及による様々な機会の拡大だ。
スタンフォード大などは昨年からネット教育の最新技術を活用して「人工知能入門」などの授業を無料公開し始めた。
発端は2011年秋。同大教授のダフニー・コラー(44)が授業をネットで公開すると172カ国から受講生が35万人集まった。他大学もこれに注目、ネットでの試験やリポートで達成度を測る仕組み「MOOCs」ができた。
途上国では高等教育への進学率が2割。教員も設備も足りないが「MOOCsが広がれば最高の知識を身につけ条件の良い仕事に就ける」と東大准教授の山内祐平(45)はみる。
「奇跡」の原動力
「納期が迫ってきた。頑張ろう」。チャット画面で指示するのは都内のベンチャー、レックスバート・コミュニケーションズ社長の田中秀和(33)。相手はルワンダにいる技術者。田中は取引先から受注したスマホのソフトウエア開発を彼らと一緒に手がけている。
1990年代の内戦で国民の1割以上が虐殺されたルワンダ。今は年率約7%の経済成長を続け「アフリカの奇跡」といわれている。その原動力がネット。国を挙げて専門学校の整備などを進め質の高い雇用を生む。
国連は00年9月、「15年に貧困を半減する」との目標を掲げた。当初は達成困難とみられていたが、最近は達成の公算も大きくなりつつある。ネットとグローバリゼーション。うまくかみ合わせれば途上国のいくつかが先進国クラブの経済協力開発機構(OECD)に迎えられる日も来るかもしれない。
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