2013年1月31日木曜日

山を動かす(1)石油が無くても



ゲーム1000年枯渇を克服
 「月面着陸級の大胆なアイデアを求む」。エネルギー問題などを解決するため、世界中の知恵を募るインターネット会議が最近発足した。名前は「Solve for X」。主催者は石油会社でも国連でもない。米グーグルだ。
「何でも解決」
 二酸化炭素の排出量を差し引きゼロでなくマイナスにするバイオ燃料、原料となるエネルギー作物の安定的生産法……。
 集まってくるアイデアを整理し、助言するのは米マサチューセッツ工科大教授のニコラス・ネグロポンテ(69)ら学者や起業家。だが最高経営責任者(CEO)のラリー・ペイジ(39)は「主役はあくまで人々。ネットという共通のインフラを使えば解決できないものはない」と話す。
 ネットには無限の可能性が広がる。英誌エコノミストの試算ではデジタル情報の蓄積量は世界の経済成長の4倍、コンピューターの演算能力は9倍の速さで増している。
 ただ、今生きている我々はこれらの情報や新技術が今後何を生むか、どう使われるかを予測し切れない。明かりをともすために生まれた電気はパソコンを生んだ。グーグルが狙うのは今後起きる様々な革新の舞台を同社に引き寄せることだ。
 壮大な構想を描くのは「巨人」だけではない。千年続くゲーム――。提唱するのは米ゲームデザイナーのジェーン・マクゴニガル(35)だ。
 単なるゲームではない。ゴールはエネルギー問題の解決。ネットで世界中から参加者を募り、節電のアイデアを投稿したり企画した節電の催しへの参加を呼びかけたりして内容が評価されればポイントがつく。プレー期間は一生だ。
 プレーをするのは1年に1日。だが、このゲームを人類が続ければ「石油も千年間、枯渇せずにすむかも」と言う。
 「人類が有史以来克服できない問題。それを解決するのはゲームしかない」。マクゴニガルがそう考えるようになったのは2009年。オンラインゲーム「ヘイロー3」で敵の異星人を通算100億人倒す記録が生まれた。
達成感を共有
 あくまでゲームの話だが、マクゴニガルは「ゴールを目指して数百万人が取り組んだことに意義がある」と思った。達成感や高揚感を共有できるのがゲームなのだ。
 千年ゲームにはひな型がある。「石油のない世界」。07年に米ゲームデザイナー、ケン・エクランドが開発したこのオンラインゲームは石油がなくなった状況を想定して解決策を募る。参加者は石油が枯渇した後の生活シナリオをたて、動画などを投稿する。
 07年4月から32日間の期間中、12カ国から約2千人が参加した。ゲームを経験すると、参加者は日常生活でも節電を心掛けるようになっていったという。
 「人間は本来、遊び好きな動物。ゲームは社会問題との有効な接点になる」と話すのは野村総合研究所の主席コンサルタント、桑津浩太郎(48)。ゲームを問題解決に使う取り組みは最近、「ゲーミフィケーション」と呼ばれ、効用を研究する動きが増えてきた。今この瞬間もネットを使った新たな実験は始まっているかもしれない。

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