銀行預金でも 証券取引でも ATM利用に条件 ペイオフリスクも
同一グループの銀行と証券会社の口座を両方持つことで、簡単に資金移動などができる口座連携サービス。最近はインターネット専業銀行を中心に口座間で資金を自動的に移せたり、預金金利の優遇を受けられたりするサービスが登場している。証券投資にスムーズに資金を回せるので、上手に使えば便利だ。利用上のコツや注意点などをまとめた。
「メガバンクの普通預金よりも金利が高いだけでなく、気になる金融商品にいつでも投資できる点が気に入っている」。東京都内に住む30歳代の女性会社員は、住信SBIネット銀行の「ハイブリッド普通預金」を利用する理由をこう話す。
同預金の金利は年0・120%と大手銀行の普通預金金利(同0・020%)を大幅に上回る。この女性は毎月、大手銀行に振り込まれる給与から生活費を除いた金額をすべてハイブリッド普通預金に移しているという。その際は住信SBIネット銀行の口座ではなく、SBI証券に入金している。資金はハイブリッド普通預金に自動的に移るうえ、手数料もかからないからだ。
同一名義の銀行口座と証券口座を持つ人が受けられる口座連携サービスを提供する金融機関は増えている。最近では大和証券が自社の口座と、2011年4月に設立したネット専業銀行の「大和ネクスト銀行」の口座を連携する「ダイワのツインアカウント」を5月から開始。楽天銀行と楽天証券も「マネーブリッジ」を今年4月に始めた。同様のサービスを取り扱う主な金融機関を表Aにまとめた。
実質的に一体化
口座連携サービスは大きく分けて2つある。一つは口座間の資金を簡単に移せる「スイープサービス」。もう一つは預金金利の優遇だ。どちらも預金を証券投資に活用しやすくする仕組みで、「貯蓄から投資へ、という流れに不可欠なサービス」(大和ネクスト銀行の小出富城社長)といえる。
スイープサービスに厳密な定義はないが、証券口座での取引に伴う現金などの増減に合わせて、銀行口座に自動的に入出金するサービスのことを指すのが一般的だ。パソコンの証券口座の画面から銀行預金の残高を確認できたり、証券取引に充当できる金額である「買い付け余力」に反映されたりする。
例えば銀行口座に資金を振り込むと、当日中には証券取引でも利用できるようになるのが一般的だ。証券口座と銀行口座を実質的に一体運営することで、銀行口座の資金を融通して株式などの金融商品を機動的に購入できる。
スイープサービスの仕組みを図Bにまとめた。スイープサービスが登場する以前にも、インターネット経由で銀行口座から証券口座へ手数料無料で即座に資金を移すサービスはあった。ただ、資金を移せる口座は大手銀行が中心。ネット銀行で利用できるところは限られていた。また、銀行口座や移したい金額などを利用者が指定するといった手続きが必要なものが主流だった。
保証金に充当も
株式の信用取引の保証金に充当できるスイープサービスもある。例えばマネーブリッジでは、国内株式の信用取引で追加保証金の差し入れが必要になった場合などに銀行口座から自動的に振り替えられる。信用取引の担保として差し入れていた保有株式を売却されずにすむ利点がある。
口座連携サービスでは、大手銀行などの普通預金に比べて高い金利を適用するところが大半だ。サービスを利用できるのは、店舗運営などにコストがかからず相対的に預金金利を高くできるネット銀行が中心。証券口座の待機資金を運用するための投資信託であるマネー・リザーブ・ファンド(MRF)よりも銀行口座の金利を高く設定することで、サービスの利用を促す狙いもあるようだ。
サービスを利用する手続きは比較的簡単で、インターネットを通じて申し込むのが一般的だ。銀行と証券の口座を両方すでに持っている場合、各社が定める時刻までに申し込み手続きが終われば、当日中に口座連携サービスを利用できるところもある。
キャンペーンを実施しているところもあり、口座連携サービスを受けられる銀行口座は高い金利が適用されるなどの利点がある。半面、ATMから預金を引き出しにくいなどの短所もあることに注意が必要だ。
住信SBIネット銀行のハイブリッド普通預金の場合、提携ATMから直接引き出せない。引き出すにはSBI証券のキャッシュカードで証券口座経由で引き出すか、いったん同行の別の普通預金口座に振り替えなければならない。キャッシュカードを発行しない大和ネクスト銀行の場合も、大和証券のカードの利用や自分名義の他行の口座への振り込みが必要だ。
様々なサービスが利用できる大手銀行と異なり、口座連携サービスを利用できるネット銀行の口座で、公共料金やクレジットカード料金の引き落としに利用できるところは限られる。ファイナンシャルプランナーの八ツ井慶子さんは「口座連携サービスで利用する資金と生活費はきちんと分けておく必要がある」と助言する。
口座のある金融機関が万が一、経営破綻した場合の違いにも注意が必要だ。証券会社の場合、顧客から預かった資産は証券会社の資産と明確に分別して管理することが義務付けられており、仮に破綻した場合でも顧客の資産は全額保全される。一方、銀行口座を保護する預金保険制度の対象は元本1000万円とその利息までで、それを上回った預金は保護の対象外だ。
口座連携サービスを利用すると、株式などを買うときは銀行口座から証券口座経由で代金を支払うことができ、証券口座で管理していた株式などの売却代金は、相対的に金利の高い預金口座に自動的に移される。このため、特に株式などの売却代金が多額になる場合には、一時的に預金口座残高が膨らんで預金保険制度の保護上限を上回る可能性があることを、理解しておく必要がある。
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